[No.53]
君がいてよかった(犬がくれた40の物語)
投稿者:男爵
投稿日:2013/03/06(Wed) 19:39
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「君がいてよかった(犬がくれた40の物語)」
(財)日本動物愛護協会が
「君がいてよかった」エッセイ大募集の応募作品の中辛
40編を選出し、収録した本。
簡単に紹介します。
○おじいさんわんこ
5歳の時、母方の祖父母に預けられた。両親は自宅も兼ねた小さな医院の開業の
準備で忙しかったから。祖母はお手玉を作ったり、たくあんの海苔巻きを食べさせ
たりと、かわいがってくれたが、早く母親が迎えに来てくれる日を心待ちにしていた。
ある夜に裏口が開いていたのか、土間に陽気な顔の犬がしっぽをふっていた。
犬にさわったこともないのでそばに近寄れず、手元にあった煮干しの缶から
ひとつかみ投げてやると、犬は土間の小魚を食べ嬉しそうに見えた。
祖母は、500メートル先の踏切を越えた牛乳屋さんの飼い犬だが、この家の中に
入ったのは初めてだ。お前と遊びたかったのだろうと言った。年をとっているから
「おじいさんわんこ」と名づけた。
おじいさんわんこは次の夜もやってきた。また煮干しを投げてやったら、そこに
祖父が帰ってきて、土間の煮干しを見ると怖い顔をして大声で犬を追い払った。
祖父が怒ったのは、缶の煮干しは、飼っている20羽ほどの鶏に与える貴重な餌だった
からだ。
もう来ないと思ったおじいさんわんこは、翌日の昼に、祖母と近くの山に焚きつけ
用の小枝を拾いに行くところに現れた。犬がついてきたので嬉しくなって
犬の背中を撫で、頭を撫でた。犬は穏やかな表情でじっとしていた。
翌朝、母が迎えに来た。祖母は時々手紙をくれた。おじいさんわんこは何度か
きたがそのうち来なくなった。そして、秋の終わりの手紙で、おじいさんわんこが
踏切で電車にはねられて死んだと書いてきた。
もう50年近くもたつのに、一緒に過ごした時間はごくわずかなのに、おじいさん
わんこを思い出す。
5歳の幼女の思い出でした。
いい老犬とのふれあいは、この女性に大きな喜びを与えてくれた。
車にはねられるケースは、犬より猫が圧倒的に多いといいます。
猫は急に走ったりと不規則な運動をして、まわりをあまり見ていないようです。
このおじいさんわんこが踏切で列車にはねられたのは、やはり年をとったからでしょうか。