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[No.15870] Re: 回想の太宰治 投稿者:   投稿日:2010/10/05(Tue) 10:25
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太宰は原稿が売れてくると、しだいに税務署から目をつけられるようになる。
昭和23年2月に、前年の所得は21万円と決定したという通知と
それにかかる所得税額11万7千円、納付期限3月25日という通知書が舞い込む。

妻は生活費が必要なときだけ夫に言って、夫からもらっているから
全体の収入がいくらあるかは知らない。
太宰自身も自分の収入を把握していないようだ。

彼は税金のことを放置したまま長編を書くため熱海に行ってしまった。
納付期限がすぎてしまったが、まだ何も返事していない。
とにかく武蔵野税務署に行ってみたほうがいいと妻は勧めた。
太宰は税務署からの通知書を前にして泣いた。
そのころの太宰は心身ともによほど弱っていたのだろう。
正月にも、I先生のお宅に年始に伺って、それもしぶっているのを毎年のことだからと
押し出すようにしたのだが、帰ってから茶の間で泣いた。
みんなが寄ってたかって自分をいじめる、といって泣いた。
その泣き方は彼自身が形容している通り、メソメソという泣き方で
坊ちゃんが外で腕白共にいじめられて泣いて訴えているのと同じで、正月にはなんとかなだめて力づけて元気を回復したように見えた。
だが税金のことなると、ふだんいくら入って、どのように消費されているのか
妻は知らないのだから、妻も途方にくれるばかりだった。

結局、美知子は太宰に代わって武蔵野税務署に行き
それでもたりずに、子供を背負って美知子は千代田区の国税局にも行くことになる。
6月2日に、国税局の係が太宰宅にやってきて
太宰の行きつけの店「千草」に案内した。
どんな話し合いがあったかは美知子は知らない。
そして14日に太宰は死んでしまったから、国税局も驚いたかもしれない。

妻としては
この税金のことが死の原因のひとつになっていたとは思わない。
税金のことは美知子に一任したと考えていたと思うから。

文壇関係者が集まれば太宰の死が話題になっていた頃
太宰についての直接の話の種を提供できる人は、みな得意でそれをしゃべり一座の中心となっていたらしい。

真相は誰にもわからない。おそらく本人に聞いてもわからないだろう。
 ノーベル賞作家だって自殺した。


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