Re: 成瀬孫仁日記(五)昭和十六年十二月
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成瀬孫仁日記(五)昭和十六年十二月 (あんみつ姫, 2008/11/5 21:36)
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Re: 成瀬孫仁日記(五)昭和十六年十二月 (あんみつ姫, 2008/11/5 21:45)
- Re: 成瀬孫仁日記(五)昭和十六年十二月 (あんみつ姫, 2008/11/5 21:51)
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Re: 成瀬孫仁日記(五)昭和十六年十二月 (あんみつ姫, 2008/11/5 21:45)
あんみつ姫
居住地: メロウ倶楽部
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十二月二十一日(日) 晴 暖
午後、ハルビン書房に原好一氏を訪ねる。先日話を通じていた件について翻訳しますと言うと直ぐ一冊の金ピカの本を持って来られたのには驚いた。ロシア語を日本語に書き替えると思うな。西伯利亜の歴史、地理、民族、生物等の勉強しなきゃとても出来ないよ。
まあ最初は一日二頁か三頁だなと言われた。
晩飯、天丼。
十二月二十三日(火) 晴 寒
今朝の寒さは又格別。地段街でうらめしい位足が痛くなり「登気和」へ飛び込んだ。
キタイスカヤの「秋林」へ始めて入る。南崗のよりも重厚な感じ。
高橋の爺(5)の糞ったれ、あのばばも生意気だ、二人共耄碌しかけているから駄目だ。馬鹿野郎。靴の破れ目から寒気が入りうらめしい。被害者は俺一人ではないぞ。
十二月二十四日(水) 晴 寒
最近特に寒し、今日など零下二十八度に達する由。
皇軍ウェーク島完全占領。ランダウン大猛爆、敵機数十機血まつりにあげる。戦果のかげに尊い犠牲あり。ウェーク島で駆逐艦四隻沈没。
佛蘭西のベタン首席辞職す。
十二月二十五日(木) 晴 寒
寒い事ったら本当にどうしようかと思う。全く泣き出したい気持になる。朝遂に零下三十五度を超える。
香港島遂に陥落。開戦以来十八日目である。英国降伏申出午後五時五十分、戦闘中止七時三十分。
十二月二十七日(土) 晴 寒
川辺が吾が家(?)に来る。彼と一緒に居ると先ず第一に砂糖。甘いものさえあれば御機嫌である。吾が家(?)には米内先生が砂糖を充分準備して置いて呉れたので夜十二時五十分頃まで話し込んで帰った。
十二月二十八日(日) 晴 寒
昨夜夜更かしのため朝寝しているし川辺が来て扉をたたく。御飯を炊くといって台所から何かかんか持って帰って行った。帰りに昼食を食べに来いと。昼食は川辺宅(?)で会食。結構うまい。物好きだね。
ルスキーの電気の集金人が来て思わず金を払ってしまった。大丈夫だったのかね。
十二月三十一日(水) 晴 暖
昭和十六年最後の日、個人的にも国家的にも多事多難であった。
静かに考えると世の中の進歩の速さに比べ、自己ののろきに涙落つ。
日誌もー年間完全に誌した事は生まれて始めて。一つの収穫か。
南方の戦場で皇軍の戦勝の進軍は続く。
あと三十秒で昭和十七年の元旦を迎える。
(5)
十二月二十三日。えらく高橋さん御夫婦のことを糞味噌に書いているが、靴の破れ目から寒気が入るとか被害者は俺一人ではないとかさっぱり何のことか覚えていない。改めてわが身の至らなさを恥じて陳謝いたします。
(成瀬孫仁日記(六)につづく)
午後、ハルビン書房に原好一氏を訪ねる。先日話を通じていた件について翻訳しますと言うと直ぐ一冊の金ピカの本を持って来られたのには驚いた。ロシア語を日本語に書き替えると思うな。西伯利亜の歴史、地理、民族、生物等の勉強しなきゃとても出来ないよ。
まあ最初は一日二頁か三頁だなと言われた。
晩飯、天丼。
十二月二十三日(火) 晴 寒
今朝の寒さは又格別。地段街でうらめしい位足が痛くなり「登気和」へ飛び込んだ。
キタイスカヤの「秋林」へ始めて入る。南崗のよりも重厚な感じ。
高橋の爺(5)の糞ったれ、あのばばも生意気だ、二人共耄碌しかけているから駄目だ。馬鹿野郎。靴の破れ目から寒気が入りうらめしい。被害者は俺一人ではないぞ。
十二月二十四日(水) 晴 寒
最近特に寒し、今日など零下二十八度に達する由。
皇軍ウェーク島完全占領。ランダウン大猛爆、敵機数十機血まつりにあげる。戦果のかげに尊い犠牲あり。ウェーク島で駆逐艦四隻沈没。
佛蘭西のベタン首席辞職す。
十二月二十五日(木) 晴 寒
寒い事ったら本当にどうしようかと思う。全く泣き出したい気持になる。朝遂に零下三十五度を超える。
香港島遂に陥落。開戦以来十八日目である。英国降伏申出午後五時五十分、戦闘中止七時三十分。
十二月二十七日(土) 晴 寒
川辺が吾が家(?)に来る。彼と一緒に居ると先ず第一に砂糖。甘いものさえあれば御機嫌である。吾が家(?)には米内先生が砂糖を充分準備して置いて呉れたので夜十二時五十分頃まで話し込んで帰った。
十二月二十八日(日) 晴 寒
昨夜夜更かしのため朝寝しているし川辺が来て扉をたたく。御飯を炊くといって台所から何かかんか持って帰って行った。帰りに昼食を食べに来いと。昼食は川辺宅(?)で会食。結構うまい。物好きだね。
ルスキーの電気の集金人が来て思わず金を払ってしまった。大丈夫だったのかね。
十二月三十一日(水) 晴 暖
昭和十六年最後の日、個人的にも国家的にも多事多難であった。
静かに考えると世の中の進歩の速さに比べ、自己ののろきに涙落つ。
日誌もー年間完全に誌した事は生まれて始めて。一つの収穫か。
南方の戦場で皇軍の戦勝の進軍は続く。
あと三十秒で昭和十七年の元旦を迎える。
(5)
十二月二十三日。えらく高橋さん御夫婦のことを糞味噌に書いているが、靴の破れ目から寒気が入るとか被害者は俺一人ではないとかさっぱり何のことか覚えていない。改めてわが身の至らなさを恥じて陳謝いたします。
(成瀬孫仁日記(六)につづく)
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あんみつ姫