悠々世代 
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[No.88] 旧友を訪ねて オランダへの旅 3 投稿者:   投稿日:2007/05/09(Wed) 10:59
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旧友を訪ねて オランダへの旅 3
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(3)人それぞれの人生を

今日はコルファー(Korver)が案内役で「Openluchtmueum(野外民族博物館)」へ連れて行ってくれ予定になっている。

コルファーは昨年62歳、既にリタイアーして65歳までの年金支払は済ませ、年金が受給される65歳までの生活費は貯金で賄うという。さすが経理担当のマネージャーだ。早めのリタイアは奥さんがガンで家庭を慮ったのだろう。

部屋を見せてくれと頼んだら喜んで見せてくれた。古い家を買って自分の好みに改造した自慢の家に違いない。机の上にはマラソン競技会で入賞したメダル、賞状が飾ってあった。書斎には堅い本が多く、LP・CDはクラシックのピアノ曲が目立った。家は住む人の全人格が出る、と聞いたことがあるがコルファーの人となりが判ったような気がした。

野外博物館は広い森の中に、何百年前の古い農家、チーズ工場、風車が点在していた。遠足の子供たちがこういう祖先の暮らしを見て愛国心が芽生えていくのだろう。

家で夕食後、シモンがそのむかし美人秘書だったシチアの家に連れて行ってくれることにになっている。
シモンの奥さんマチェはクワイアー(聖歌)の練習日でシモンが街へ送って行きながらシチアの家に行った。

夕暮れの薄明かりの中に現れたシチアを見て人違いではないかと驚いた。だが顔を見つめている中に徐々に昔のシチアの貌になっていった。お互い同じ歳月が過ぎた。老けたのはお互い様だ。

シモンは先に帰ってシチアと2人だけになった。シチアがキッチンでコーヒーを用意しに行っている間部屋の中を見渡していたら、テーブルの上に手紙と見覚えのある写真が置いてあった。何年前だったろうか、この家のその階段の、そうここでセルフタイマーで写した写真だ。

彼女がコーヒーカップをテーブルに置くと、プラスチックのファイルに入った手紙を取り出した。まぎれもない私からのものである! 日付は“April 14, 1982”となって漢字の署名まで記してある。25年前の今(正確には2日前)だ。まぶたが急に熱くなりシチアの顔が涙で滲んで見えなくなった。

シチアが静かに音楽を流した。「この曲はわたしが子供だった頃父がよく独りで聴いていたわ」オペラのアリア集だった。なんという曲だったか。

彼女の噛んで含めるような英語は変わっていなかった。夜遅く送ってくれた車中で、耳の聞こえなくなった90歳の母がいて時々面倒を見ているのでここから離れられない…37年間にはいろんなことがあったにちがいない。

強いコーヒーを何杯も飲んだ、今日はねむれそうにない。

 


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