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Re: 成瀬孫仁日記(七)昭和十七年九月~昭和十七年十二月

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あんみつ姫

通常 Re: 成瀬孫仁日記(七)昭和十七年九月~昭和十七年十二月

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2009/3/21 15:19
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
昭和十七(康徳九)年九月 

二十四日(木)
 創立第二十二回の開校記念日である。
 厳粛なる式典の後に意気揚々とした学院魂を感じ、一層先輩の義烈を恥からしめんことを誓う。
 金の都合がついたので夕方、教材のプリントを製本すべくロシア人の製本屋に行く。

二十五日(金)快晴
 先づ天候を心配していたが快晴で安心。起床五時半、薄暗く且うすら寒い。南寮で飯が出来てないので集合がおくれる。今日は記念祭、運動会である。

 食堂係拝命。
 不準備の中に一途奮闘する。一日中眼の廻る様な忙しさの内に過ごす。価格が安いのに驚いて呉れるのは当たり前だが、御婦人から味噌汁がおいしいと言われたのには意外だった。吾々は未だ味の解る年ではないのか。
 運動会の方も共栄圏踊りを見たのみ。
 最後に校旗に敬礼。幾多隆替ありとも厳然として奉持せられた校旗。感激の一瞬である。

 夜、八時から南寮後庭でストーム・コンパあり。
 コンパ後、伊藤鎭、室園(23期)と三人で街に出る。キタイスカヤのロシア料理店二軒廻り帰る。電車の中で眠る。今夜は点呼なし。南寮の者は北寮に、北寮の者は南寮にそれぞれ宿ることもよろしい。

 雨は夕方頃からシトシトと降り始め、夜半になると俄然どしゃ降りとなる。
 寮の小母さんにパン五個と外に少し買って帰ったのに居ない。
 昼、食堂の仕事が終わった時、小さな人形を一つ拾う。誰か落として行ったのだろう。心の中の苦しみ、悩みは、この人形を見ていると空に散って行く様な気がする。
 かわいい人形、私のマスコット。

二十六日(土)
 朝から雨、その上寒い。南寮で寮祭あり。進行係拝命。忙しきこと昨日と同じ。
劇の結果は全く予想外であった。南北寮合一は完全に破れ、寮祭は北寮の大いなる犠牲の上に行われた。全く自分の様に悩んだり、又迷ったりしている者が寮の委員長をしてはいけないんだ。その上柔道部の一人の最上級生でいる事も恐ろしい事だ。いくら考えても恥
ずかしい自分だけが自覚される。
 川口(22期)が数日前から下痢で悩む。室園(23期)が休む。
 寮祭が終了したのは午前三時。

芸能祭演出成績結果
 団体演劇賞
一等 布施太子の入山      二年甲組
二等 ブィストゥリイル     ロシア研究会
二等 邂逅           北寮演劇団
三等 人面桃花         満系学生
三等 一心斉冥夢        流水劇団
三等 第一の世界        三年乙組

  個人演劇賞
一等 今川清志(二年)     布施太子の入山(太子)           
一等 平文雄(三年)      ブィストゥリイル(田舎地主) 
二等 花恵郷(三年)      人面桃花(母)     
二等 中本鯉三(三年)     第一の世界(山中慎一、学者)     
二等 黒上光男(二年)     布施太子の入山(王妃兼波羅門丁)
三等 岩井創造(一年)     人生劇場(吉良常)

二十七日(日)晴時々雨
 昨夜皆が帰ったのが三時、併し起きなければならない。八時起床。副学監室で暫時仕事をしていると昼になる。昨夜の怒気未だおさまらず。じいっと見て人形に思いを寄す。
 午後、外出する。「兼田」で紙ばさみを二個買う(寮の備品)。一円五十銭。
 寮母さんに頼まれて先輩の澤崎(清太郎、4期)さんの所へ着物を持って行く。

 孤独。人間の逃避的な敗北者の道を私は歩んでいるのだろうか。併し、決して敗北はしない。苦しい人生、社会、それは学生以外の世界の戦いの中にある。
 就寝十一時二十分前。

二十八日(月)
 午前中授業さぼる。午後教練がある。休むとうるさいので出て行くと教官が不在で無し。柔道の練習のみして帰る。どうした事かマネージャーの伊藤(鎮)がいない。

二十九日(火)
 野外演習があり、場所北寮近傍。途中で雨になり屋内で講話あり。
 雹が降って来る。その大きなものは直径一センチメートルもあった。全く生まれて初めてあった経験。

一年生が帰って来て病人の為に別にしていた晩飯を皆食ってしまって、病人の食べるものがないと云う事件が起こった。私は炊事に走って、飯を炊けと云った。炊事は配給だから米がないと云う。川村先生の所に走って、来て頂き一時間おくれに病人の食事が出来た。おかずにいいものを付けさして病人に謝った。
 この事は寮の規律の乱れが原因だ。責任者を追求せよ。それは寮委員だ。

 寮委員の三名川辺、青木、成瀬三名の夕食は青木が買って来た餅と寮の小母さんが作って呉れた「ぜんざい」。おいしい。

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あんみつ姫

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