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広島の被爆者の声(2) (2枚目のCD の1から10まで)

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kousei

通常 広島の被爆者の声(2) (2枚目のCD の1から10まで)

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 0:03
kousei  管理人   投稿数: 4
 
その1 音声を聞く

 私たちの隊で、兵隊と将校で編成を組んで担架やなんかもって御幸橋の袂(たもと)へ着きましてね、そこを拠点として方々へ散らばって、ま、重傷者はね、運び出したわけなんですけどね。

 とにかく、どっから手つけていいか分からないぐらいのもう人達がもう「助けてぇ「助けてぇ」っていうんですよね。で、熱いもんだからね「水をくれぇ」「水をくれぇ」って、もう泣き叫んでいるわけなんですよ。周りはもう火の海で、なかなか中へ、熱くて入らないんですよね。

 で、またまだその奥のほうへ入っていきましたら、女の人達がたくさん倒れてるわけですよね。で、「兵隊さん、助けてくれぇ、助けてくれぇ」って、「熱いよう」ってなことを言って、で、「水くれ」「水くれ」っていうんですけどね。

 着物や何かはもうほとんどもう着てない状態ですよね。からだ全体がもう焼けていますからね。あのぅ、一緒に行ったやっぱり兵隊にこう「持て」って持たせるんですよ。持たせると、もう皮膚のこの焼けた皮がみんなべったり手にくっついちゃうわけですよね。


その2 音声を聞く

 もう、死んだ人の、ころげとる、ころげとる。その人はもう、いっぱいここここ這いよっでんな。

 ところが、どうも「助けてくれ」「助けてくれ」いいよるばってん、こっちむけのことがあるやし、そりゃ一人や2人どうこうされちゃそりゃいくらなんでもどっちつかんですわ。

 そのあいだを、こうせき切ってですね、もうその間にそのぅ、水槽があったでしょう、それに飛び込んどるんですね。もう、それ、かーって手曲げて、頭上げ、黒こげで、かーっ浮いとるです。それがもう水槽あらゆる水槽にですね。それこそ、もう、5人、7人、10人ちゅういうにですね。飛び込んじゃ、もう黒こげになって死んどる。それこそ、形相なもんですなぁ。その姿にゃもう、虚空を掴んでるね、もう、とにかくもう話にならん。

 川下、川上、ほんとそれこそ、あんた、その、川の淵に寝とる人、それがもう「助けて」「助けて」っていうばって、赤剥けになった芋虫みたいに、ころげちょるわですわ。それも助けようない。とにかく1人や2人どうこうしようがないんじゃから。いっぱいじゃから。


その3 音声を聞く

 みんな向こうのほうからくるんですね、こっちへ。私ゃ、逆に街の中に入ってたんです。

 そしたらね、元気な私を見てね「水ちょうだい」「水ちょうだい」いうて、みんな私のところへくるんですよ。そうかと思ったらまた私のところへね、「すみません、私の住所はここ、こうこうこういうところなんで連絡してくれませんか」。私は、みんな私のところへよってくるんです。

 私はねぇ、なぜ聞いてやらなかったかのと思うんですよ。私ゃ鬼じゃないかと、あの時にね、叶わぬまでもだれか1人でも、2人でも、あるいは3人でも。あんなにたくさん寄って来たんだから、住所を聞いてあげればよかった、水の一杯ぐらいあげてあげられないことはなかったんです。

 私ゃその時にねぇ、これが戦争なのか、これが地獄なのか、後からいろいろな映画が見せられます、一ヶ月か二ヶ月たった後の。あんなものがね、原爆じゃありません。


その4 音声を聞く

 その家に近づくその道路に一歩入った時にね、偶然にもね、妹に会えたわけですね。それで、その妹たってね。その妹の影がないわけですね。妹の顔はね。顔はなくてね。あのモンペのね、いつも着ているその服の模様でね、妹じゃないかと思ったわけですね。

 そして私が「あんたはちよこじゃないかって」声かけたら、「お姉ちゃん」って飛びついてきたわけですね。「なんだ、ちよこか」って何べんも聞きましたらね、「ちよこじゃ」って。それであの「お母さんは」ていったら「お母さんは知らん」っていうんですね。

 で「今までどうしてたか」というたら、先生がね「川へ逃げろ、川へ逃げろ」っていったって。で、それで川へ行っていたっていうんですよ。今まで川におったんだけど。川の水が満潮になったんですね。川が増えてそのおるところがなくなって。それでみんながね、こっちへ歩いているから、みんなの後ろついて歩いていたなんていうんですね。

 それが、もう、私を見るまではね、まだ目はまともに開いてたんですけどね、私を見た瞬間からね、もう目も見えないように腫れあがってね、口も腫れあがって、とにかく私にすがりついて「眠たい、眠たい」いうんですね。それで、寝たら死ぬるからね。「寝たらいけん、寝たらいけん」いうて。そしたら、どうしても「眠たい」っていうんですよ。それでーーー。


その5 音声を聞く

 アスファルトのあの道路をですね、長靴を履いて走っていく走って行くとパタパタバタバタと、そう音がするんですね。もう、人っ子ひとりおらんようなところで。ほで、まあ、電線があるとそれを飛び越える、電柱が横たわっとるとそれを飛び越える。

 音が聞こえるわけ。音が聞こえるとですね。途中倒れて死んでおった人間がですね、むっくり起き上がるわけ。起き上がって手を差し伸べるんですよ。差し伸べてそのまままた「バターン」と倒れる。こっちもつかまっちゃいかんと思ってそれを避ける。

 そうするとまた足音がパタパタ。もうこっちの走る足音が聞える。そこで倒れている人間はまたむっくり起きてですね、そのむっくり起きる時は顔色がやっぱり黒くなっている。それがむっくり起きてですねーーー。


その6 音声を聞く

 行ってみりゃあ、こりゃまた大層なこと来とるんですけ。それがまた見られたもんじゃにゃあげな。大怪我をしたり。まあひどいのになったら、なんですけなこの、皮が剥けてね、ぶらんとこう下っとるんですよ。皮が剥けてぶらんとこう下っとるんじゃから中のものが見えよる。それで、ぶくぶくしよる。

 やれやれこんなの。あれでも生きられんのか。生きとるやろな。もうそうなったら、可哀想なとか同情とかいうようなもんはまあ、沸かんですよ。そういうのばっかり見とるんじゃから。全部がそうなっとるんじゃから。

 ただもうその、もう火が猛烈に燃えてきて、熱うて熱うておれんのですよ。川のほとりから、もう川ん中へもっていって、本当、バタバタ、バタバタとこう飛び込むんですよ。あの火に追われてかなわんもんじゃけ。それで一人もその泳いで渡るとかなんとかいうもんはおりゃあせんのですよ。

 そうしよったら「ありゃ、どうしたんかのぅ」と思うたら、こみ上げてくるんですな。あのあげるいっでしょう。嘔吐ですよね。こみあげてきてね。せえからかなわんのです。あげだした。見りゃあのそこらにおる人がほんどみんなあれですよ。ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあいうて、こうあげてね。


  
その7 音声を聞く

 熱くて熱くてですね。もうどうにもならんのですね。もうとにかくその広場でじっとしておれんのですよ、熱くて。

 電柱があるでしょう。だからこのどうしてもこら川ん中に入らなんだらね。これだけの人は、これどうもこうもならんって言うんで私たちは電柱をころがして川ん中に飛ばしこんでね、それにつかまってもう流れに任せてこうね、行くよりほかにしょうがないと私考えたんだけどね。その電柱まで燃え出してね、火が。

 ところがもうその頃になりますとね、上(かみ)の方からどんどん人が流れてきますしね、死んだ人がね。それから、あの橋が今度燃えよるんですよね。橋が。燃え切れて「ザァーッ」とすごい音を立てて、この落ちるんですよね。燃え切れて。かなり長い橋でしたけれどもね。それがもう帯のようにね、虹のようにこの火がですよ、炎ですよね、弧を描いた。それが燃え切れて「ザァッー」と落ちるんです。


その8 音声を聞く

 まったくすごい勢いで「ガーッ」という音でねぇ、もう、炎の竜巻みたいですね、竜巻じゃない、もっと大瀑布っていうんですか、大きなナイヤガラの滝を炎にしたようなやつが逆さまに天に向かって登っていくわけですね。「ガーッ」と渦巻きながらね、炎がね。

 で、広島市がもう今、断末魔の最後の中にあるなと思いながら、私見ましたがね。そのうちに、なんか雷鳴に似たような音がしてくるですよ。そしたらね、その雷鳴がね、ちょうどあの空襲で爆音とそれから爆撃音ですか、爆弾が飛んで「バーッン」とこう炸裂するような音みたいに聞こえてくるですよ。

 ということは皆もう気が立っているから。川原、その川原にいっぱいご婦人方や我々とか男も女も若いもんも子供もみんないるんですけどね。もうみんな「空襲だぁ!」っていうんですよ。

 みんなもう精神錯乱状態になっているんでしょうね。吐き気がするんですね。それからね、便意を催すんですよ。もう恥もなにもないんです、ああなったら。みんなあの、着物着ていない人もいるん、多いんですからね。もう下半身だってもうそのままっていうのが一杯いるんですからね。


その9 音声を聞く

 それから後、うちの前はとにかくもうハダカ。なんていいますか、もうハダカですね。女の人はとにかくもう下が全部あの焼き爛れて、それでお構いなしに真っ裸の状態で、それで髪の毛も全部、あのう焼き爛れてしまったような、まあ男か女か分からないような人が、もう何百人とドンドンドンドン、あのう、移動していくと。

 子供も真っ裸のまま。あるいは、あのう、若い娘さんが真っ裸で半狂乱の状態で、ま、これは言葉では表現できない、どんな方法を使っても表現できない惨状な姿で、とにかくドンドンドンドン移動していくーーー。


その10 音声を聞く

 傷ついた、もう人が、ぞろりぞろりとその逃げて来る。この人達がね、一言も口利かない。それで行く先がね、目的も何にもなく、ただ前の人が歩いていくもんだからついていくという、そういうその動き方ですよ。ぞろりぞろりとね。

 人間というのはね、ある大きなショックを与えるとね、羊飼いの羊みたいになっちゃう。でもう自分のね、意思というものがなくて、ただ群集心理にね、で、くっついて行動を共にするだけしか残らない。その行く先が助かるところであるかどうかということをちっともその考えないで、ただ、ぞろぞろと行きましたね。

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