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広島の被爆者の声(2) (2枚目のCD)

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投稿ツリー


前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2006/7/14 0:01
kousei  管理人   投稿数: 2
  
このCDは9枚組の2枚目で、広島の被爆者の声(2)が記録されています。これには36の音声記録が収められていて、それらのテキスト化されたものがアップされています。便宜上10記録毎に分割されてアップされています。各記録の音声は「音声を聞く」をクリックすれば聞けるようになっています。もしテキストに脱落や誤りを発見された場合は、「感想の部屋」からお知らせいただくと幸甚です。


なお、テキスト化された記録を読むには、

1)CD1枚分の全てを一望するには、「フラット表示」で読むことをお奨めします。見ている画面の左上の「フラット表示」をクリックすると「スレッド表示」から「フラット表示」に変わります。

2)記録のスレッド(コメントツリー)は時間的に降順になっています(下から上です)。これを昇順(上から下)にして読みたい場合は、「ヒロシマ ナガサキ 私たちは忘れない」のメインメニューの下部の「ソート順」で「降順」を「昇順」に変更して送信を押してください。
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 0:03
kousei  管理人   投稿数: 2
 
その1 音声を聞く

 私たちの隊で、兵隊と将校で編成を組んで担架やなんかもって御幸橋の袂(たもと)へ着きましてね、そこを拠点として方々へ散らばって、ま、重傷者はね、運び出したわけなんですけどね。

 とにかく、どっから手つけていいか分からないぐらいのもう人達がもう「助けてぇ「助けてぇ」っていうんですよね。で、熱いもんだからね「水をくれぇ」「水をくれぇ」って、もう泣き叫んでいるわけなんですよ。周りはもう火の海で、なかなか中へ、熱くて入らないんですよね。

 で、またまだその奥のほうへ入っていきましたら、女の人達がたくさん倒れてるわけですよね。で、「兵隊さん、助けてくれぇ、助けてくれぇ」って、「熱いよう」ってなことを言って、で、「水くれ」「水くれ」っていうんですけどね。

 着物や何かはもうほとんどもう着てない状態ですよね。からだ全体がもう焼けていますからね。あのぅ、一緒に行ったやっぱり兵隊にこう「持て」って持たせるんですよ。持たせると、もう皮膚のこの焼けた皮がみんなべったり手にくっついちゃうわけですよね。


その2 音声を聞く

 もう、死んだ人の、ころげとる、ころげとる。その人はもう、いっぱいここここ這いよっでんな。

 ところが、どうも「助けてくれ」「助けてくれ」いいよるばってん、こっちむけのことがあるやし、そりゃ一人や2人どうこうされちゃそりゃいくらなんでもどっちつかんですわ。

 そのあいだを、こうせき切ってですね、もうその間にそのぅ、水槽があったでしょう、それに飛び込んどるんですね。もう、それ、かーって手曲げて、頭上げ、黒こげで、かーっ浮いとるです。それがもう水槽あらゆる水槽にですね。それこそ、もう、5人、7人、10人ちゅういうにですね。飛び込んじゃ、もう黒こげになって死んどる。それこそ、形相なもんですなぁ。その姿にゃもう、虚空を掴んでるね、もう、とにかくもう話にならん。

 川下、川上、ほんとそれこそ、あんた、その、川の淵に寝とる人、それがもう「助けて」「助けて」っていうばって、赤剥けになった芋虫みたいに、ころげちょるわですわ。それも助けようない。とにかく1人や2人どうこうしようがないんじゃから。いっぱいじゃから。


その3 音声を聞く

 みんな向こうのほうからくるんですね、こっちへ。私ゃ、逆に街の中に入ってたんです。

 そしたらね、元気な私を見てね「水ちょうだい」「水ちょうだい」いうて、みんな私のところへくるんですよ。そうかと思ったらまた私のところへね、「すみません、私の住所はここ、こうこうこういうところなんで連絡してくれませんか」。私は、みんな私のところへよってくるんです。

 私はねぇ、なぜ聞いてやらなかったかのと思うんですよ。私ゃ鬼じゃないかと、あの時にね、叶わぬまでもだれか1人でも、2人でも、あるいは3人でも。あんなにたくさん寄って来たんだから、住所を聞いてあげればよかった、水の一杯ぐらいあげてあげられないことはなかったんです。

 私ゃその時にねぇ、これが戦争なのか、これが地獄なのか、後からいろいろな映画が見せられます、一ヶ月か二ヶ月たった後の。あんなものがね、原爆じゃありません。


その4 音声を聞く

 その家に近づくその道路に一歩入った時にね、偶然にもね、妹に会えたわけですね。それで、その妹たってね。その妹の影がないわけですね。妹の顔はね。顔はなくてね。あのモンペのね、いつも着ているその服の模様でね、妹じゃないかと思ったわけですね。

 そして私が「あんたはちよこじゃないかって」声かけたら、「お姉ちゃん」って飛びついてきたわけですね。「なんだ、ちよこか」って何べんも聞きましたらね、「ちよこじゃ」って。それであの「お母さんは」ていったら「お母さんは知らん」っていうんですね。

 で「今までどうしてたか」というたら、先生がね「川へ逃げろ、川へ逃げろ」っていったって。で、それで川へ行っていたっていうんですよ。今まで川におったんだけど。川の水が満潮になったんですね。川が増えてそのおるところがなくなって。それでみんながね、こっちへ歩いているから、みんなの後ろついて歩いていたなんていうんですね。

 それが、もう、私を見るまではね、まだ目はまともに開いてたんですけどね、私を見た瞬間からね、もう目も見えないように腫れあがってね、口も腫れあがって、とにかく私にすがりついて「眠たい、眠たい」いうんですね。それで、寝たら死ぬるからね。「寝たらいけん、寝たらいけん」いうて。そしたら、どうしても「眠たい」っていうんですよ。それでーーー。


その5 音声を聞く

 アスファルトのあの道路をですね、長靴を履いて走っていく走って行くとパタパタバタバタと、そう音がするんですね。もう、人っ子ひとりおらんようなところで。ほで、まあ、電線があるとそれを飛び越える、電柱が横たわっとるとそれを飛び越える。

 音が聞こえるわけ。音が聞こえるとですね。途中倒れて死んでおった人間がですね、むっくり起き上がるわけ。起き上がって手を差し伸べるんですよ。差し伸べてそのまままた「バターン」と倒れる。こっちもつかまっちゃいかんと思ってそれを避ける。

 そうするとまた足音がパタパタ。もうこっちの走る足音が聞える。そこで倒れている人間はまたむっくり起きてですね、そのむっくり起きる時は顔色がやっぱり黒くなっている。それがむっくり起きてですねーーー。


その6 音声を聞く

 行ってみりゃあ、こりゃまた大層なこと来とるんですけ。それがまた見られたもんじゃにゃあげな。大怪我をしたり。まあひどいのになったら、なんですけなこの、皮が剥けてね、ぶらんとこう下っとるんですよ。皮が剥けてぶらんとこう下っとるんじゃから中のものが見えよる。それで、ぶくぶくしよる。

 やれやれこんなの。あれでも生きられんのか。生きとるやろな。もうそうなったら、可哀想なとか同情とかいうようなもんはまあ、沸かんですよ。そういうのばっかり見とるんじゃから。全部がそうなっとるんじゃから。

 ただもうその、もう火が猛烈に燃えてきて、熱うて熱うておれんのですよ。川のほとりから、もう川ん中へもっていって、本当、バタバタ、バタバタとこう飛び込むんですよ。あの火に追われてかなわんもんじゃけ。それで一人もその泳いで渡るとかなんとかいうもんはおりゃあせんのですよ。

 そうしよったら「ありゃ、どうしたんかのぅ」と思うたら、こみ上げてくるんですな。あのあげるいっでしょう。嘔吐ですよね。こみあげてきてね。せえからかなわんのです。あげだした。見りゃあのそこらにおる人がほんどみんなあれですよ。ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあいうて、こうあげてね。


  
その7 音声を聞く

 熱くて熱くてですね。もうどうにもならんのですね。もうとにかくその広場でじっとしておれんのですよ、熱くて。

 電柱があるでしょう。だからこのどうしてもこら川ん中に入らなんだらね。これだけの人は、これどうもこうもならんって言うんで私たちは電柱をころがして川ん中に飛ばしこんでね、それにつかまってもう流れに任せてこうね、行くよりほかにしょうがないと私考えたんだけどね。その電柱まで燃え出してね、火が。

 ところがもうその頃になりますとね、上(かみ)の方からどんどん人が流れてきますしね、死んだ人がね。それから、あの橋が今度燃えよるんですよね。橋が。燃え切れて「ザァーッ」とすごい音を立てて、この落ちるんですよね。燃え切れて。かなり長い橋でしたけれどもね。それがもう帯のようにね、虹のようにこの火がですよ、炎ですよね、弧を描いた。それが燃え切れて「ザァッー」と落ちるんです。


その8 音声を聞く

 まったくすごい勢いで「ガーッ」という音でねぇ、もう、炎の竜巻みたいですね、竜巻じゃない、もっと大瀑布っていうんですか、大きなナイヤガラの滝を炎にしたようなやつが逆さまに天に向かって登っていくわけですね。「ガーッ」と渦巻きながらね、炎がね。

 で、広島市がもう今、断末魔の最後の中にあるなと思いながら、私見ましたがね。そのうちに、なんか雷鳴に似たような音がしてくるですよ。そしたらね、その雷鳴がね、ちょうどあの空襲で爆音とそれから爆撃音ですか、爆弾が飛んで「バーッン」とこう炸裂するような音みたいに聞こえてくるですよ。

 ということは皆もう気が立っているから。川原、その川原にいっぱいご婦人方や我々とか男も女も若いもんも子供もみんないるんですけどね。もうみんな「空襲だぁ!」っていうんですよ。

 みんなもう精神錯乱状態になっているんでしょうね。吐き気がするんですね。それからね、便意を催すんですよ。もう恥もなにもないんです、ああなったら。みんなあの、着物着ていない人もいるん、多いんですからね。もう下半身だってもうそのままっていうのが一杯いるんですからね。


その9 音声を聞く

 それから後、うちの前はとにかくもうハダカ。なんていいますか、もうハダカですね。女の人はとにかくもう下が全部あの焼き爛れて、それでお構いなしに真っ裸の状態で、それで髪の毛も全部、あのう焼き爛れてしまったような、まあ男か女か分からないような人が、もう何百人とドンドンドンドン、あのう、移動していくと。

 子供も真っ裸のまま。あるいは、あのう、若い娘さんが真っ裸で半狂乱の状態で、ま、これは言葉では表現できない、どんな方法を使っても表現できない惨状な姿で、とにかくドンドンドンドン移動していくーーー。


その10 音声を聞く

 傷ついた、もう人が、ぞろりぞろりとその逃げて来る。この人達がね、一言も口利かない。それで行く先がね、目的も何にもなく、ただ前の人が歩いていくもんだからついていくという、そういうその動き方ですよ。ぞろりぞろりとね。

 人間というのはね、ある大きなショックを与えるとね、羊飼いの羊みたいになっちゃう。でもう自分のね、意思というものがなくて、ただ群集心理にね、で、くっついて行動を共にするだけしか残らない。その行く先が助かるところであるかどうかということをちっともその考えないで、ただ、ぞろぞろと行きましたね。

前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 0:06
kousei  管理人   投稿数: 2
 
その11 音声を聞く

 裸同様な人がどんどんどんどんと行列を作って、もう本当にもう顔を見ると幽霊のようですね。もう目のふちから唇がもう大きく膨れ上がって 肩から両手へやけどを負ってですね、もう目は見えなくなった人の手を引っ張ったり押したり。

 ちょうど私のところへ、表通りですから、突然女の人が飛び込んできて、まあその顔をみると本当に「お岩」のような顔でした。もう髪は焼けて、それから真っ裸ですから、ああ陰部も押さえて「あー、済みませんがモンペか着物を貸してください」まあそういうような若い奥さんのその姿みてもどうすることもできず、まあ、私もこういう状態だから、向こうもそれを察して、すごすごとまあ出て行きましたが。

 それから間なしに、若い奥さんがですね、何か胸に肉の塊のようなものを持ってこちらへ歩いてくる。おかしい、なんだろうかと思ってよく見ると、それはもう生まれて間もない赤ちゃんじゃないでしょうか。

 まあ、無残といっていいか、なんですね。残酷といっていいか、何と表現してよいか分からんですね。まあ、私もそういうその姿見て本当にもう、今こうして語っておっても、その当時のことを思うて。本当に地獄ですか。ほんとに地獄絵図といっても、それ以上のねーーー。


その12 音声を聞く

 その時はね、その恐ろしいとかなんとかいうものはないですよ。全部がそうでした。だから、あの色々なものを見ましたが、頭がね、半分に割れて開いてる。それでまだ生きているんですね。3センチぐらいの直径の竹がね、まあこの30センチぐらいですか、長さ、それが頭にボンと刺さっている。それでもまだ生きているわけですね。

 まあ、あの兵隊さんなんかねぇ、全部、服を焼かれて、まあ、あの短剣ですか、あれは下げているわけです。バンドもやって。それから長靴ですか、あれは履いている、帽子被っている。(裸ですか?) 裸で。ただ、そのときは変だとか何とか言う感じはないですよね。全部がそうでしょう。


 
その13 音声を聞く

 若い、17-8の娘さんがね、真っ裸でね。目に持っていってその1尺くらいの棒切れがね、目へスポッと刺さったままで、そして、どんどんどんどん歩いて行ったのを覚えていますよ。

 あれを見てね、平権五郎景政がね、自分の目に矢が立ったままでね、それで相手を切り伏せたとか何とかいうような軍記物語がありますわ、これは随分ホラだなとこう読んだ時は思いますよね、思っとる、ところが気が立っとる時は、あの娘さんがあの長い棒切れを目に付き刺さったままでね、どんどんどんどん歩いていっとる姿みてね、はぁやっぱり、あの平権五郎景政の話っていうのは、事実だなとーーー。


その14 音声を聞く

 とにかく、あのずる剥けになって、ここの皮がね、こういう風にぶらさがっとるんですね、立ってね、両方の皮が。て、顔はもう真っ黒けにもってってから、剥けて、目玉は飛び出てね、唇はね黒んぼの唇を見たようなんです。それがね、もう丸裸が、まぁ、どんどんどんどん血もぐれとそれとが、まぁ、見渡す限り逃げてくるんですもの。まぁ、それを私ら、逃げてくるところにおったでしょう。まあ、何いうても、まぁ、この世でね、まぁ、こんな様なことがあるんかしらん思いましたね、つくづく。


その15 音声を聞く

 何千人いうのが、皆こんなになりましてね。手をこんようにして、そして、あのみんな丸裸です。それが身に一糸として身についているものがおらんのですもの。それであの、女はね、まあおかしな話するようなのですけど、おかしゅうないですね、男の人、おちんちんがみんなこんなになっとるんです。

 そして顔はこうなっておりますしね。そして手、こうボロがさがっとるんじゃろうか思や、皮がさがっとるんです。で、みな手をこんようにして、手をこんようにして、裸足で、皆ああ空襲が、ああ解除になったいうんでみな裸になったんですね。それが暑い日でした。あの8月、あの6日の暑さいうたら、その後ないでしょう。あんな暑かった日は。


その16 音声を聞く

 またその連れて行く道にまあ、どーっと倒れてね、で、その倒れとる人がね「水ちょうだーい」「水ちょうだーい」「水ちょうだーい」いうて、みな死に物狂いであんたおらび(叫び)よってんですよ。

 それで、それでまた出て行ったらね、またそこがまあ、焼け爛れた人ばっかり。まあ、私は気分が悪うなってね。それで、あの私が行きましたらな、やっぱりこうぶら下がってね、目が飛び出てね、目ぇ見えんのです。それでも私がね、こう来た気配は分かるらしいね。私にね「あの おばさん、はよう医者んところへつれて行ってくださいや」っていうんですよ。

 ま、連れて行ってくださいいうても、握るところもありゃしませんのよ。私ゃ、まぁ、はぁ、あの恐ろしゅうて、恐ろしゅうてね、ほで連れて行ってあげたいうても、あれは赤チン塗ったぐらいのことでしたよ。何ーにもありゃせんのですけん。


その17 音声を聞く

 そして、その収容所へ一歩入って もう私はもう地獄っていったらね、私はね、ここのことじゃないかと思ったんですよ。

 裸の人もいるし、「空襲だ」「空襲だ」「空襲だ」「空襲だ」、あれは頭にくるんでしょうかね。立ち上がっては「バターン」と倒れる、それが1人2人じゃないんです。あっちからもこっちからも「空襲だ」「空襲だ」「空襲だ」って言う人もおれば「おかあさーん」「おかあさん」言うて泣く。

 そんな人がいっぱいいるなかで「はあ、地獄だ、地獄だ」と私 思いましたよ。その時にね。弟が、こん中に入れられるんかと思ったけれど、でもここへ来たら診てくれるんだと思いましたんでね。「お兄ちゃん、どうにかしてちょうだいよ。ね、お兄ちゃん、どうにかしてちょうだいね」っていうんでしょう。「いいよ、いいよ」って言いながらその一隅へ寝かされました。

 そうするとね。あっちでもこっちでも、みんなご承知だと思いますけど、「水ちょうだい」「水ちょうだい」みな叫んでるでしょう。兵隊さんが水をやるだけが看護なんです、薬を塗ったり、手当てしてくれるんじゃありません。あの収容所ってのは、水をやるだけが看病だったんです。あの日は。


その18 音声を聞く

 そうして見てびっくりしました。みんな頭がちりちりちりちり、焼けてね。あとね着物はみんなぼろぼろなんですよね。

 そして私はねぇ、瞬間に思ったのは、これは気違い病院がやられて、そして気違いの人達がこうやって乗せてこられたんだな、とそのとき思ったわけなんです。

 それでね、話すことでもなんでも、こう頭おかしくなった気違いと同じことをしゃべってるんですね。そしてね、後いろいろなものが刺さってるんですね。大きな木みたいなものがダーっと顔に刺さったり、身体にそのままつけてくるわけなんです。まあ、本当にあれ見たら生き地獄ですね。

 
その19 音声を聞く

 トットコ、トットコ、こっち方面のやつは駆け込みますからねぇ、それが、足の折れた奴が駆け込むんですよ、えぇ。肩へ骨折や手に、これ折れてるんです。それが気が立ってると駆けりますねぇ、あぁ。だから、あそこ入って、これは骨折だ言うたら、それっきり動けなくなったです、ねぇ。えぇ、そんなんがおるし。

 それから、このぅ、目ん玉へもってって、あの、障子の桟ですねぇ、どっからか飛んで来て、ぱっと突き立ったんです。障子の桟が突き出たままでも駆けって来るんですねぇ。それを途中で引き抜くちゅう考えも出てこない。えぇ、そんなん、ひどい、可哀想なのもおりましたねぇ。

 手当てをしてると、もう、こっち、先生来てくれ言い、いっぱい溜まっとりますから~と、溜りへ行ったんですよ。わし先に診てくれ、わしが酷いんぞ、わし診てくれちゅう言うんで、ことにならんです。これいちいち整理して順番付けなきゃ言うて


その20 音声を聞く

 一人を治療して、次待って立っておるのが、目の前、あら?今 おったのに、と思うのに、もうパタッと倒れてる。はぁ、脈見りゃ無い、はぁ、死んでしまっとる。それだからもう目の前でパタパタ死んでゆきよる、ほんと、この世の地獄だぁね、えー。

 それから、その患者たるや、もう、ここをこう顔をこれだけぐらい、ぶわーっと剥がれるように怪我したのがおるし、それから一つは、可哀想にねぇ、まーだ若い娘さんが、まっ二つにこれを、鼻を、二つに割ってる。ま、そりゃええ塩梅に、こぅ、縫ってやってね、大抵あれでまぁ治ったろうと思うけどね。

 それから今度、夏のことやからシャツ一枚でしょう。そいから男は裸の人もおるし、よくその魚の湯引きいうのがあるでしょ、魚に熱湯かけてね。熱湯かけられたようになって、この皮が、つるーんと、一皮こぉ、むげてね、おるのがあるし。そりゃあもう

前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 0:09
kousei  管理人   投稿数: 2
  
その21 音声を聞く

 原爆いうのはのちに分かったことですからねぇ。放射能使こうたいうようなことはだいぶのちに分かったことでぇ。その当時は、とにかく、まずう目に見えた切り傷とかねぇ、火傷を手当てするとか、まずぅ第一番じゃったですなぁ。火傷、ほいからあの、このぅ、ガラスでね、怪我して、その出血でドッド、ドッド血が出るようなの、まず治すと、こういうようなことが、外科的なあれがまずじゃったですなぁ。えー。

 ほりゃもう、どう言うてももう、薬は無いし、まぁ惨憺たる状態でしたねぇ、えぇ。その患者たるや刻々死んでゆくんでしょう。厳しいですなぁ、医者としては厳しいですねぇ。その、治療しようにも材料が無いと、こういうことで、厳しいですなぁ。

 廊下の縁(へり)で、こっちへ、白島の方へ逃げて来た兵隊じゃったですが、(声が震える)“お母さん”言うていたですなぁ。(感情が昂ぶって声が崩れ聞き取れない、おそらく、“それから、間もなく死んでいったですわ。”)。若い人じゃったですがのう。


その22 音声を聞く

 旗が立ってるのを求めて怪我人が沢山おいでるんですけどね、その来て、してるうちに、どんどん亡くなっていくわけ。そして、まぁ、ほんと鬼のような気がしました。あの、名前聞いただけで亡くなる方もあるんだから。その長い列が続きますけどね、そして、その待ってる間に亡くなる方もあるわけ。

 女の方でガラスの破片がいっぱい体刺さってた方が「お水下さい」言われたんです。気の毒に思ってお水ちょっとあげたら、そしたら、体中から、すぐ泡のようになって水が出てきた。間なしに亡くなられました。

 だから時計されてる方は文字盤が皮膚に焼け込んでましたしね。んから、兵隊さんの場合でしたらもう、将校さんなんかはサーベルですね、剣が、だけになって、ほとりは全部焼けてんですが。兵隊が担いで来られるのが沢山いましたからね。だけど、その将校よりも兵隊さんのほうが、よっぽどひどいんだから、「その将校さん置いときなさい」言っても、「いや、上官をどうぞ先に」言いながら死んでいかれた兵隊さんも、だいぶ

 
その23 音声を聞く

 その掩体壕の蔭から、ほんと可愛いおかっぱの嬢ちゃんが走ってきて、「おじさん、弟見てやって頂戴」て。掩体壕の蔭に幼稚園にあがるかあがらないぐらいの可愛い息子さんが火傷受けてお尻を掩体壕におろして、手を前に突き出してぶら下げるような格好して。ひょっとみると、左の目ですね。結局目のあった所から15センチぐらい目の玉がぶら下がって、鼻の下のほうに眼球がぶら下がってる。

 それを見てもこちらも気が立っておりましたけど、「診てくれ」って、その嬢ちゃんが、お姉さんが言われても、私ももちろん眼科医でもないし、医者でもないし、眼球を指つまんで元の眼窩の中収めてそれで済むもんでもないことも分かっとるし。その時には本当にそのお嬢さんと、その坊ちゃんと、まぁどうしていいか。

 小さいながら、そのことが未だに念頭離れませんので、毎年八月六日の夕方、お参りするときには心の中で、嬢ちゃん、坊ちゃん辛かったでしょうね。おじさんこらえてくださいね


その24 音声を聞く

 あの、うちの子見つかったのよぉ、言うて。まぁ、良かったねぇ言うたら、あの、臍で判ったの言うて。どこにぃ?言うて見たら、風呂敷包んでるの、このくらいのもんですね。

 あら、頭も手も足も無いじゃないの、胴だけ?言うて言うたら、ええ、焼けてね、くっついてない、離れとったから、もう投げといて、胴だけ負うて来ました、言うて。

 母親が見て臍になんかの特徴があったんじゃろ思います。どこで判ったんですかぁ言うて言うたら、臍、臍で判ったのよぉ言うてね。

 まぁ、あんな時はもう、ちょっとその、ちょっと気が狂っとるようになっとりますからね。だから、まあ、あの、ほかを捨てても頭だけ持ってくりゃよかったんなぁ思うて、あたしゃ


その25 音声を聞く

 まぁ、助けの神さんですやね。そのトラックが通った。ほで、こうやって手を振ったら、、私がこうやってね、ほしたら止まってくれちやったんです。

 ほで、兵隊さんがね、あのう、子ども先こう、帯から解いて降ろして、ほいでトラック乗せといて、ほいでまた私をね、二人か三人かで乗せてくれちゃったんです。抱えて。トラックへね。ほで毛布ひいてね、そこに寝せてくれたんです、親子。助けの神さんじゃな、ありがたいのう思うて手を合わせてね、私は拝みました。やれやれのう、こういう見ず知らずの人に、こういう風にて。

 そしたらね、あの、その、子どもがね、顔を変えてね、みるみるね。「父ちゃんね?、父ちゃんね?」言うて言うたのが、兵隊さんじゃ、あー思うてね、「あー僕の父ちゃん兵隊さん?」言うたら、「うん」言うたんよ。ほいでね、うなずいたんですよ。

 ほいたら「あぁそうかそうか、元気でおれよ、死ぬなよ。元気でおれよ。父ちゃんすぐ戻るけんのぅ」言うてからね。「うんうん」言うてからね、うなずいたんです。

 それがまぁ、向こうの人にね、私らに情けかけてくれたんじゃと思うと。いったい子どもはこまいしねぇ。とうとう助からなかった。「母ちゃん、父ちゃんは?母ちゃん、父ちゃんは?」言うてね、言いよったです。


その26 音声を聞く

 造船所っていや南の端でございましょ。だから怪我人が皆こう逃げて来てね、だんだん溜まるわけですよ。それがまぁ、呻いておる。それから「水を水を」って言う声ね。これは忘れられませんですよ。

 そうするとね、「水をくれー」って言いますと医者がまた大きな声で怒りよる。「水飲むと死ぬぞ!」ちゅうて一喝しよるですね。まぁそれは誰にも「水を水を」と言う声が忘れられんと言いますけれども、やっぱり耳に、今さっきのように耳には残っておりますですね。

 まぁ、結局、その、特別に造船所から船を出してくれまして。その時も学生は僕を担架に乗せてね、そしてなんですよ意気揚々。まるで負傷した大将を担架に乗せて兵隊が帰るような具合の調子ですよね。あの動員の歌、今こそ筆を投げ捨ててという。「♪今こそ筆を投げ捨てて」ってちゅう。あの歌ですね、あれを歌ってね。もう


その27 音声を聞く

 やがて夜がやってきましたが、広島市はさながら真昼のごとく炎上しており、家は爆風により倒壊し、空は赤土の粉を撒き散らしたようにどんよりと曇り、陰惨な風景を呈していました。

 間もなく、「負傷者は集まれ」の声に、兵籍者、地方民を問わず、一つ所に集まりました。看護婦は一生懸命負傷者に布を巻いていました。手当てするにも資材とて無く、治療の施しようも無かったのです。

 集まった人を見れば、みな血だるまのごとく、出血しており、中には女の人も混じっていましたが、髪は赤く縮れ、顔の皮膚は赤く、まるで外人を見るようでした。

 一同は応急手当を受け、間もなく兵舎の中の毛布を各自一枚あて持って頭よりかぶり、我々兵隊は病院裏の防空壕前に布陣しました。6人一組ぐらい、集団にかやを張り、各自が持っておる毛布一枚あてを用いて寝床にあてました。


 
その28 音声を聞く

 あの、ずる剥けに真っ赤に裸になった人間がね、トラックに乗って、もう狂い死にしよるわけですよねぇ。なんかワーワーヤーヤー言うてトラックの上でもしよるしもう。

 広島の県女(県立高女)のね、あれがねぇ引き倒しにいたのが(行ったのが)、先生に引率されて帰って来てね、全部死んだですね。張り切ってそこまで来たらもうバタバタとみーんな倒れたですよ。ほーしてね「諸君の仇は先生がとってやるから」ちゅうて、先生…


その29 音声を聞く

 六日の晩はどうも何とも言えん悲惨な思いがしたです。「寒いのー」言うてから、おらぶ(叫ぶ)んですなぁ。そいから「水をくれ、水をくれ」。そいから、子どもがねぇ、母親をおらぶんですよねぇ、「お母ちゃん、お母ちゃん。お母ちゃんどこ行ったんかい」言うて。それがね、夜っぴて耳についた。ほで、夜明けによけい死んだですよ。


その30 音声を聞く

 ま、妹はさかんに「水が欲しい、水が欲しい」って言ってましたけどね、まぁ「水をあんた飲んだらね、すぐ死ぬるんじゃき、我慢しんさい。でも明日の朝になるとこの奥のほうへねお医者さんがおってじゃろうから、お医者さんとこすぐ連れてってあげるけんもうちょっと我慢しんさいや」いうことだったんですよね。

 夜になりまして、広島のこう空を見ましたらね、凄い真っ赤なんですよねぇ。ものすごくもう明るいんです。今にもこう山が燃えてきそうですね、己斐の山が《己斐は西区の地名》、もう、ずーっと町中が燃えてたんでしょうねぇ。

 で、まぁ、妹の、もう丸焼けですからねぇ、どこをどういう風にしてやるとも分からんですね。つける薬もありませんしねぇ。で、水もやったらいけないとばっかり思ってますからね。ただついているよりしようがないですよ。で、時々「どんな、痛い?」とかいう風なことしかね、言えませんね。

 で、夜中にあれですね、あのう、急にこう呼吸が荒くなりましてね、もう「呼吸が苦しい、呼吸が苦しいー」言っですねぇ。もう、そう言ったらもう途端にもう亡くなりましたね。

 しまった! こんなんだったら、水を、あれだけ欲しがってた水をやればよかったのに思ってね。で、みんな本当に大声あげて泣きました、はぁ。母はもう気違いみたいですね、もう。
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 0:11
kousei  管理人   投稿数: 2
 
その31 音声を聞く

 全身火傷の人もいますでしょ。そうすっとね、学徒動員で行った中学生なんかがたくさんいるんです。「あんた、どこの誰?」って聞くんです私。「どこ?何中学の何年の何?」って言うと「何年の何だ」って言うんですよ。

 最後にはね、「勝利の日まで」を歌うんです。みんな「勝利の日まで」を歌ってね。最後に「お母さーん」って言うんですよ。そしてもう息が絶えたと思った時には「天皇陛下万歳」でね。まだ12、3からそこらの人たちがみーんなそうでした。

 そいでね「明日になったらお母さんかお父さんかみえるから頑張んなさいよ」って私はもうずーっとその間をよく歩きながらね。そのうちに、その晩はずいぶん死にました、その人たちがね。


その32 音声を聞く

 ただまぁ水が飲みたいんですよね。のどが渇いてもう死にそうなんですよねぇ。で、私ははぁ、もうその頃には顔は、目はつぶれてから、腫れてからつぶれて、誰が誰やら全然分からんし、声だけで、誰だ、いうんが分かるんだけ、のような状態だったです。ただもう「水を飲ませい」、こう言うんは、まあ、私らがまあ「死んでもいいけん飲ましてくれ」言うぐらいまで苦しかった、その水の欲しかったいうことがね。

 ほで、先生は飲ましたら死ぬるけえ飲ましたらいけん言われるんじゃ。それで「誰々」言うて、下級生の名前言うてですね、「死んでもいいけえ飲ましてくれ言うんじゃけぇ、の、汲んで来てくれってことよ」「お前汲んで来てくれんのなら、恨んで出るぞ。死んだら恨んで出るぞぅ」って言うてま言うたわけですよね。

 汲んで来てくれたんが、ビールの瓶へ井戸水を汲んで来てくれたわけですよ。ほいで「さげられんけん、これ飲ましてくれ」言うて、その、水を飲んだ時の、そのまぁ、美味しかったよ。その冷やい水が咽をカラカラになった所を通る旨さに、未だにまぁ…


 
その33 音声を聞く

 「潮が満ちて来るとそこに座ってたらね、溺れてしまうから、上まで上がんなさい」言われたって、どうにも足が一歩も立てないんです。それから、わふ、こんなことしてたら潮が満ちて来たらいかんと思いましたから、ようやく這って上へ行きましてね。石垣があるんですよ。その石垣へこうやって寄っかかったきり、もう何が何やら分からなくなってしまいました。

 それで、一晩そこで野宿ですわねぇ。その間にどれだけの人が亡くなりましたか、周りで。日が暮れて、もう火事で全部焼けましたから真っ暗でしょ。ここら、私のこう寄っかかってる傍にこう可哀相な女の子がいらして。この方も明け方に息引き取ったらしくて。「寒いよー、寒いよー」言ってね。あー、一人でそこまで逃げてきていらしたんでしょうか。そいから何人か川へドボンドボンと落っこちて亡くなられた。


その34 音声を聞く

 ただその時は自分の娘も今どっかでこいうような目にあってるんじゃないかしらんという気持ちがある以上はその人たちを見過ごすことができないわけなんです。なんとかしてこの人たちも。

 ほいで、「おばちゃん、水ちょうだい、水ちょうだい。私の兄さんはどこそこのね警防団にいるんじゃから連絡取ってくれ」、「なんね、今そうじゃない。おばちゃんの娘もも、今こうこうで、今あんたたちらと同様にどっかでこのてんように泣いて(《こんな風に泣いて》、あんた達のように叫んでいるじゃろう思うから。まぁとにかく水を飲んだらあんた達は死ぬるんじゃから、いや、もう飲んだらいかん、もう飲んだらいかん。あんた達は命が大事なんじゃから。もう明日夜が明けたらねぇ何とかなるから、夜の明けるまではここで辛抱してくれ」言うたんですがね。

 みーんな死んだんですよ、はい。もうね、みーんな死にましてね。もう私もう本当にともに泣きましてね。その人たちが死んだのが、その人じゃない、私の娘がこの通り死んどるんじゃろう思いましてね、泣きましてね。


その35 音声を聞く

 防空壕の狭い所へね、押し合いへしあい、皆入ってるんですから。その中には火傷した人はおるしねぇ、怪我した人はおるしね。とにかくぎっしりいっぱいですからね。足の踏み場も無い。それにもってきて真っ暗でしょ。そでまあ、中にローソク持ってた人が一つポーンと点けてくれとってんですから、もう暗いんですよ、何しろ。

 その時にその子はね戸口の所におったですがね。「痛いよー、痛いよー、お兄ちゃん、痛いよ、痛いよー」って言うんですよね。「お兄ちゃんここにおるからね。静かにしなさいよ。僕だけじゃないんじゃから」言うて。そのお兄ちゃんいうのがようできた子でね。一生懸命言いよったですがね。そうするとね「いやーおしっこ行くよ。うんち行くよー」言うんですよ。痛いもんじゃけ、やるせがないもんですから、そう言うて兄ちゃんをねぇ、何とか自分の所へこう引きつけとこう思うて言うらしいんです。私はずーっと寝とって聞いとりましたけどね。

 で、始めのうちはお兄ちゃんもね「よっしゃ、よっしゃ」言うてからね、抱こや思い、痛ってててぇって大騒動するんですよね。だけどうんちやおしっこじゃいうんじゃ《うんちやおしっこは》防空壕の中じゃできんでしょ。で、痛がるの抱いちゃ、外へ連れて出てね、また連れて入ったりしよったですがね。「お母ちゃーん、お父ちゃーん」言いよったですがね。

「お母ちゃんもお父ちゃんもすぐ来てくれてじゃけん、ええ子して寝てなさい。お兄ちゃん、もうそんなに悪い子する子じゃったら放っとくよ」って言いよりましたよ。

 そしたらね、何とかいう名前でしたね。「何とか、何とか!」っていうお兄ちゃんの声が、異様な声でね。はっと私らも目が覚めたんですよ。あらーって思うたらね、「何とか死んどる。お母ちゃーん、助けてぇー」言うてねぇ。その男の子が、中学3年ぐらいの男の子だったですがね。「どうしよう、死んどるー」言うてから、もうおらびだし《叫びだし》ましてね。「堪えてー、堪えてー。お兄ちゃんが悪かったー」言うてその子を抱きしめてね。「死ぬるんだったらお兄ちゃん怒るんじゃなかったのに、堪えてくれ、堪えてくれ」言うてね。みーんなもらい泣きしたですよ。


その36 音声を聞く

 集団疎開先でね、八月のね、六日の日だったんですよ。子供をね、夜どうしても起こさなくちゃ、夜尿症がおったわけで。12時に子どもを起こしてお便所に連れて行くんですよね、3~4人。もう起こす子供も決まってるんですよ。

 起こしに行ってね。私がね、便所へ子どもを連れて行って、私も行った時に、すーっと白い着物着た女の人がねぇ、立ってるんですよ、便所に。私はそれを見て、びっくりしてねぇ。「まぁちょっと来てや」言うて。子ども起こすわけにいかないけん、寮母さんに、起こして。怖ろしくて、恐くて。

 「白い着物を着た幽霊が便所のあの奥の方に入ってるのよ。ちょっと来て見てよ、子どもにあんまり大きな声して、びっくりしてね、夜便所行かんようになったら私困るから、ちょっと来て見てよ」言うて。私はそれを起こしたのを覚えてるの。

 結局は、私それね、人の魂が乗り移る、母の魂が私の方へ、私のところへ来たんじゃないかなぁと思う。それをみんなに言やね、「そんなことないよ」って言うんですけどね。それがちょうど 八月の六日の夜だったの。12時頃にね。だからね、原爆におうてね、ひどい火傷でものが言えんようになって。まぁ疎開先は一度は来とりますから。結局魂が私の方へ来たんじゃないかねぇ思う。



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