長崎の被爆者の声(3) (6枚目のCDの21から30まで)
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長崎の被爆者の声(3) (6枚目のCD) (kousei, 2006/7/14 0:38)
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- 長崎の被爆者の声(3) (6枚目のCDの41から51まで) (kousei, 2006/7/14 11:09)
kousei
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その21 音声を聞く
ほな、大学病院さ行ったですよ。待合室ですかね。あすこにはもう仰山人間が死んでるでしょうが。全部黒仏ですもんね、黒仏ですよ、人間が。着もん着たものないんです、一人も!「これ片付けろ」って医者がいうもんじゃけん、ほて、こうやったらね、なんか骨に当たるんですよ、なんじゃろかって思うて、ほれをみたら全部手の入ってしまったですもんねぇ、肉の中に。湯がきですたい、人間の。
そん時ですね、握り飯が来たですたい、そしてずーっと配達されたですた。そしたら、そのおばさんがもう顔をこうしてですな、わーっともこうなっとるけん、握り飯ば、私がぁ、やらんじゃったとですよ《あげなかった》。まだ元気のよか人にやってさるいたとですよ 《元気の良い人に配って回った》。
「わたしにもちょうだぁい」って手を上げはるもんじゃけん、ほんとやねぇっと、そして2つやってですね、ずぅーっと奥の方からまわってですねぇ。15分か20分かかったですよ。その人はですねぇ、握り飯をこう持って、両方の手でこうしてですね、さしあげちょったですよ。さしあげちょったですよ。ほんとにねぇ。はぁ、人間てやっぱり死ぬまでやっぱ食うとば思うかな~と、思うちょったですよ。
それから、涙もつきたですよ、私しゃ、うん。私もうかんしゃくもちやけど、涙弱かもんですけんね。可哀相かねえ~。 畳の上で死ぬ人は、これは楽ばいてほんとにねぇーっとわたしは泣いとったですよぉ。畳で死ねたらほんとねぇ、運のよかと。あの原子爆弾で会うた人のね、あの哀れさはねぇ、ちょっと話じゃ語られんとて、うん。
その22 音声を聞く
山里町あたりに来ますと、もう、焼け野原が広がるんですねぇ。そして、まだあちこちで炎がみえると。 もう城山町一帯、もう、ほんとに、家一つ無いわけですね。家一つ無くて、もう、灰になっている所々では火がくすぶっている、死体はごろごろしている所があるし。
で、そして、寮が近づくにつれて、鬱蒼として茂っとったあの松の林がですね、将棋倒しに木が倒れとるんですね。もう、夕もやが迫っているけれども、まだ炎が見える。どうも此処が自分の寮だったことさえも見失うくらいだと。
その23 音声を聞く
そして、もう、私たち、体を触ってみたら、すこし温(ぬく)かったからね、死んだって分からなかったからですね、その時は。あぁ、まさ子ちゃんがおったーっていうんで、「まさ子ちゃーん」って呼んだんです。口にはもう黒い斑点がね、出血したんでしょうね。唇に出てたんです。
寝顔が苦しそうな顔でかったから、生きてるかも知れん、というようなつもりでね、もう一生懸命呼んだんです。
そしたら、その杉の木を向こうにはさんだところに、だれか女の人がまだ生きておられて、その人が、「会えてよかったですね」って言われたんです。「いいえ、死んでます」って言って。「今まで、せつ子ねえちゃん、おかあさんって二人がくると思って呼んでたん、呼んでいらっしゃいましたよ」って。
ちょうどあの日の晩、三日月だったん、細い三日月だったんです。杉の間からそれが見えたんです、そして虫が啼いたんです。それが悲しかったんです。
虫が生きているのにどうして死んだのかと思って。「虫だったらよかったねぇ」と話したんです。(嗚咽) 「死んでばい・・・・わたしは」・・・ あぁ、「すみません」、なんにも・・・。
その24 音声を聞く
八月十一日から十四日まで 長崎
その25 音声を聞く
それで、丁度、駅前に行った時分にまた空襲。あれは偵察飛行やったんでしょうかね。それがね、も、悪戯かなんか知らんが、その機関銃で「ババッーン」っとあのそれやるわけですね。ま、防空壕に逃げ込んだわけですが。それはもうすぐもう飛んでいってしまったわけです。
自分が出るときにですね、ま、足許見たら、なんとその死体の上にね、私ら座ってかごんどった《しゃがんでた》というようなことでですね。「こりゃ、ここに、これ、死人ばい」というようなことですね。ま、何も感じないんですね。
で、ただその、学校のことだけは気になるんですよ、奇妙に。それからまあ、大学病院に行った。まあ、そうしたら、その結局、病院なもんだから、そこにいっぱい逃げてきてるんですなぁ。どうかしてもらおうと思って。
と、その廊下を歩くと「学生さん、学生さん」とこういう。私らの足をこう引っ張るわけですね、いっぱい寝とる人たちが。それでその「水くれ」とかなんとかいうんだけど、その水もどこにあるのだかも、こっちも分からん。ま、結局そのままですよ。もう助けようもない、また助ける方法も分かりませんしね。
そして、その、ま、のろのろと家族の人でしょうかね、死体の口をみんな開ける。分からんわけですよ、もう人相がですね。焼け爛れとるもんだから。その、わしゃ、はじめ何しよるんだと思ったら、クチをあけてですね、歯を調べとるんですね。それで自分の家族の確認をしとったんじゃないですかね。
あとはみんな、ゴロゴロ、ゴロゴロと石ころみたいに死んどるわけですね。
その26 音声を聞く
ところが、まったく焼け野原だから、うーん、その家の目標が、ちょっと見当がつかんわけですね。家野町からずーっと城山へ行く途中は、人はあの死んどるしですね、で、馬は死ぬし、そして負傷した者は「うーうー」いっとるしですね。
で、そのまた死に方というのがですね、大体人間、****、死ぬ時はみんな手を合わせるはずだけど、手を組んだ人はみんなこう手を握りしぶってるんですね。そしてもう腹は大きく膨れておるわけですね。それを見た時に、いかにこの爆弾が残虐性の爆弾であるかということを感じたとともにですね、いかに死にたくなくて死んだかということをもうつくづく感じた。
そして、えー、負傷している人はもうそこらにおる、そりゃ、何十人、何百人じゃきかんでしょうね。そういうのを見た時ですね、私は本当にこういうことが阿鼻叫喚というか生き地獄というかですね、そういうことを肌に感じたですね。
そしてあの大橋を渡って、浦上川に行くと、もうその川の中にごろごろ、ごろごろとその死んどる、うなっとるですね。
その27 音声を聞く
あの辺一帯は、もうずうっと死骸の山です。それから水の流れの中でこう、うつ伏せになって倒れて、水の流れの中で倒れている、草むらに折り重なって倒れているもの。もう非常に沢山の人があそこにずうっと葦のあのところに亡くなって、それから僅かに残った力を振り絞って、あの辺の人が水を飲みに来て、そして水を飲んでやっと安心して、寝て、そのまま亡くなった、と。
それから城山の学校のあの近くのほんとにこう道の脇か、或いは崩れた瓦の、屋根瓦なんかの脇のところで、ま、生きてるか死んでるかわからないと、とにかく、ま、膨れ上がって血色になっている人、それから目の飛び出してこう倒れている人。
そこを通ると、もう音が聞こえるのか或いは何かで感ずるのかですね、「苦しいー、水をー」っともう、なんか小さな声ですが、何かこう声で、ああこの人も生きてるんだなあっていう気持ですね。これを聞いても、別に。目の飛び出して下がってる人は随分あったようです。
そこの悲惨な状態っつうのは、今でもあのう、ほんとに、これは言葉では表現できないようです。そういう状態は。
その28 音声を聞く
そしてまあ足音がすれば、「水、水、水、水」。足音がすれば、死んでると思とったら、そのずらーっとですよ。
片方はもうこの辺でやそのジャンジャン、ジャンジャン焼いてるわ、死人が見つかったのは焼いてるわ、焼け爛れたような人ですよね、髪毛もなんにも無い人ですよね。
「水、水、水」、「あなた何処の方?」って言うても、もうわからないんですよね。もう可哀想でもうほんとにもう。飲ましたい、あげたい本人が2、3歩行ったらこけるぐらいですから、飲ませる力が無かったんですよね。
かわいそうーに死んで行った人ばっかしですねぇ。だから私はですねぇ、ほんとに今でも必ず息切れしたら、あぁー、あの人達に飲ましてあげられなかった、あんなのがやっぱり自分に祟りがきたんじゃなかろかって、も、いっつも・・・。
その29 音声を聞く
で、行きましたけどね、まあ手に付かないんですよ。ま家は壊れてるし未だ燃えてるし。道端でね、物の下敷きになってる人がですねぇ、「助けてくれ、助けてくれ」と仰るわけですね。
もう私達が兵隊さんに見えたんでしょうねぇ、ゲートル巻いてあのナッパ服着て戦闘帽被ってるもんですから。「兵隊さん、水、水」ってみんな言われる訳ですよ。
ヒョっと飲ましてやりますとね、ゴクッって言ってですね、そのまま息絶える訳ですね。いわゆるあのう、末期の水って言うのが私初めて知りました、それで。体力が弱ってるのに水をやったら、飲み下ろす、嚥下する力がないんですよね。だから、ここでヒュッと瞬間、窒息。いわゆる安楽死ですよ。何十人くらい送ってあげたでしょうかねぇ。
で、比較的ですね、未だあのう元気そうな人を見つけてですね、引っ張り出そうと思ってですね、手を握りハッと。皮がズルッと取れるんですよ。最初は手が抜けたかと思いました。ズルッとねぇ、皮ごと取れてくるんですね。
もう目を背けるって言うのかですかね、もう仕方ありませんからねぇ。水を取り出して水を差し上げて、まぁ、あの世へ送ってあげる以外に方法無かったんですねぇ。
とねぇ、自分達で掘り出して自分達でねぇ、露骨な言葉で言えば殺してあげなきゃならない、ねぇ。爆心地の土地の整理だ、と言う目的で行ったんですけどねぇ。
その30 音声を聞く
前の昼にはもう死人のコロコロ、コロコロでしょ。死人の間ばこうして道ば頼って下って来たんです。「もうおじさん、も下らずにおろか」って。「ああた方に怪我させたらねえ、まあだ飛行機が来るから申し訳んなかけん」って私が言うたらですね、「ここまで来てからその親父の姿ば見付けずにどうするか」っておじさんの言いなさったけ、「でもねぇ、おじさん達怪我させたら申し訳んなか」って、「もうとても父ちゃん生きとらんですよ、この姿ば見たらぁ」て言うたですけど、みんな親戚の人が「もう行てみな《みなくては》でけん」って言うて連れて来てくれらしたもんですから。
あの、天主堂の下さん通って来たとです。もうあの辺ば通っときゃ足は熱かっとですもん。もう足はこう持ち上げてさるくごたっと《歩くかのよう》です。瓦は焼けてしまい、道ってないですもんねぇ。もう通る所通る所死人のコロコロ、コロコロですもん。木の下に、おっしゃがれておっとば《押しつぶされているが》、助くんもんのおらんとですもん。助くってしたちゃっあ《助けようとしても》、またあげきらんとですもんねぇ。ほんとですねぇ。
ほしてあの松山橋ば渡ってから見たらあすこにね、あなた、川はもう死人で水は見えましぇんと。人間の膨れて、もう人間だけですもん、もうその水の中は、浮いて。
そしてそれば、「ま、あら~」って言いながら、こう来てあん橋ば渡って来たところがあなた、奥さんのここの横っぱらから、赤ん坊の、もう奥さんが焼けたもんだから、こっからひっと出て《とび出して》ですよ。ほして奥さんは、転んでこう焼けてしもうて焦がれて、そんなともう、涙もなんも出んとですよ。