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Re: 大事な家系図

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あんみつ姫

通常 Re: 大事な家系図

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2004/2/24 14:46
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
役所の家族と共に夜通しトラックにゆられて辛うじてチチハルに逃れた。
時すでに四囲《しい=まわり》の道は断たれて動かれず、避難者一同の共同生活が始められたのだった。

その直後、日本の航空司令部から通訳官として召された武が行方不明となり、生死の消息さえ絶えてしまった。その憂愁《ゆうしゅう=心配や悲しみの心》と栄養失調《えいようしっちょう=食物の不足による体の不調》のため、私は紫斑病《しはんびょう=血液や血管の病気》で倒れた。また小児に流行していた麻疹《はしか》のために、勇の長女陽子が、次女の瑞枝が、武の長女妙子が、相次いで死亡するなど悲惨《ひさん=悲しく痛ましい》苦渋《くじゅう=苦しみ悩む》の一年が過ぎた。

二十一年八月十八日の夜 急に引き揚げ命令が下った。
一日の猶予《ゆうよ=日や時間を延ばすこと》さえなく翌払暁《ふつぎょう=明け方》出発と決められた。持ち物は制約され、お金は一人千円、衣類ハ《は》二枚、下着若干《じゃっかん=幾らか》、書類写真など一切まかりならぬ、違反者一人でもあれば、その集団は帰国禁止との苛酷《かこく=厳しい》さだった。

私はこの時に、札蘭屯を出る時いたく心を痛めた家系図の見つからなかったことに、あきらめの終止符をうった。
                     続く

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あんみつ姫

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