地震などの天災を語る 
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[No.139] しょうがなかんべ 投稿者:男爵  投稿日:2013/05/22(Wed) 13:08
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渡辺明(渡邊明)福島大学副学長のもとに結成された福島大学の放射線量モニタリングの試み

3月15日、副学長室に置いておいたガイガーカウンターがなり始めた。
副学長の渡辺は気象学者である。
これは大変だと考えた渡辺は、19日福島大学理工系の教員有志とともに
大学構内や付属学校園の線量の計測を始めた。

23日 政府がSPEEDIの試算結果を公表した。
NHKのニュースが、米国エネルギー省の国家核安全保障局(NNSA)が米軍機による放射線調査結果を公表した、と伝えた。

それによると、福島第一原発から北西に飯舘村あたりまで、高濃度ゾーンが広がっているという。

空からのこの計測値が実際、正しいのかどうか、を地上から点検したいという思いもあった。

今度は福島県全域のモニタリングを実施することにし、13〜14人の仲間とともに「福島大学放射線計測チーム」を立ち上げた。

25日から4日間かけて15台のタクシーに分乗して、県下各地を測定した。

放射線測定チームは当初、その結果を米サイエンス誌に緊急投稿しようと話し合っていた。

しかし、地元の住民にとってモニタリングの測定結果は重大な関心事のはずである。
渡辺が言うように「天気予報をやって気温がどうのこうのというようなデータではない」

まずは、首長にその結果を報告するのが地元の大学としての責任ではないか、サイエンス誌への投稿はその後でよい。

渡辺は計測をした地域の各自治体の首長に最初に連絡した。
どこよりも気になったのが飯舘村だった。

3月27日、渡辺は飯舘村に行き、菅野村長に会い、計測結果を報告した。

菅野村長は重たい面持ちで聞いていたが、やりきれないというふうに言った。
「何回、私たちを動揺させたら気がすむんだ」
「線量が高い、水が飲めない、土壌が汚れている。もう十分にわかっています。データはいただきたい。しかし、発表する必要ないんじゃないですか」

福島県の職員が菅野村長の脇に座っていたが、彼は渡辺に言った。
「もういい加減にやめていただきたい」

渡辺は大学に戻り、放射線計測チームのメンバーに、一部始終を報告するとともに、言った。
「研究業績を競ったり、争ったりしているわけではないのだから、公表はしばらく待ちましょう」

渡辺には、菅野村長が村全体の避難に強く抵抗する立場と理屈が痛いほどよくわかっていた。
渡辺自身、学内でも圧力にさらされていた。
こんな線量の高いところになぜ、大学を置いておくんだ、大学を移転させよ、という圧力である。

放射線量をめぐっては、政府が信用されない、文部科学省が信用されない、データが信用されない。
そういう状況になりつつあった。

どうしたら、信用されるデータを住民に与えることができるか。
地元の県の大学として何か役割を果たせないか。
いささかでもお役に立てたかな、と感じたのは、浪江町への報告だった。

渡辺のモニタリングチームは、浪江町役場が避難していた浪江町津島で毎時70マイクロシーベルトを測定した。

渡辺は、浪江町の避難先の二本松市の東和支所を訪れ、上野副町長に報告した。
浪江町は20キロ圏内からの避難指示の際、20キロ以遠の津島に移転したのだが、そこが高い放射線量ゾーンとなっていたわけである。

その後、上野副町長は福島大学の副学長室を訪れ、さらにデータについて問い質すとともに、放射線の検査体制や汚染状況や健康手帳の発布などについて意見を求めた。

浪江町は役場も町民も12日に20キロ圏外の津島に移転した後、15日には津島から二本松糸に再度避難していた。
ただ、多くの町民が津島からの避難を拒み、そこで生活をしていた。

町役場はその後何度か、町民に避難を勧告したが、彼らはなかなか応じない。
そこへ、福島大学のモニタリングチームの調査結果が提供されたわけである。津島からの避難を改めて勧告する必要が出た。

12日、福島県は独自にモニタリングしたのに、そのデータは浪江町には伝えられなかった。
上野はそのことが許せなかった。
「本来なら、最初の避難の時に、こういうデータがほしかった」と思った。

渡辺たちのモニタリング結果も、もっと早く提供されていれば、15日までの避難の時に役立っただろうに、と残念な気持ちがした。
しかし、2週間経っても津島が依然、高い放射線量にさらされていることを渡辺たちのモニタリングデータは示していた。

上野はそれを手に、津島に行き、住民の説得に当たった。
上野の話をむっつりと聞いていた住民の一人が重い口を開いた。
「地元の福島大学の先生が言ってるんじゃ、しょうがなかんべ」

上野は、それを聞きながら
「避難には役に立たなかったが、被ばくしたという認識を住民に改めて感じてもらうことができた」と意を強くした。
上野は渡辺に電話をかけてよこして、言った。
「しょうがなかんべ、の一言で、みんな納得してくれました」

学者の測定データをそのままにして公表しなかった福島県や飯舘村
それに対して、データを公表して住民に納得させた浪江町
それぞれの行政側の判断であろうが、いままでにも原発事故を隠してきた電力会社だけでなく、県も政府も何か考えがあってデータを隠すようである。

(放射線量データについては、どういう計測や予測がなされたのか、そしてその結果はどのように使われたのか使われなかったのか、思いつくまま紹介したい)

福島大学の渡辺明先生
http://kojingyoseki.adb.fukushima-u.ac.jp/top/details/238
渡辺先生は
真面目な研究者で、身の回りの機材を利用して
学生たちと外を回るなど体を使って気象計測をしてきた先生なので
この先生の調査結果は信用できる。

この後、某学会で会ったとき、上に書いた話は聞かなかったのだが
放射能汚染の心配で福島大学の受験生が減っていること
その対策として受験料無料などの対策を取っていること
幸い定員割れはしていない等の話を聞いたのでした。


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