地震などの天災を語る 
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[No.177] Re: SPEEDIは動いているか 投稿者:男爵  投稿日:2013/05/30(Thu) 19:37
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> > > > > > > > > 第18章 SPEEDIは動いているか
> > > > > > > > >  放射性物質の広がりを気象条件などをもとに迅速に予測するシステムSPEEDI。
>
> > 14日午後、細野首相補佐官は、文部科学省の加藤審議官を部屋に呼びつけた。
> > 「放射線モニタリングをちゃんと取らないと大変なことになる」
> > 細野はそう言ったと後、加藤に文科省がどんなふうにモニタリングをやっているのか、その結果はどうなのかと質した。

この本には、その後
うなぎみたいにのらりくらりの文科省の姿勢が書かれています。

15日午後8時、文科省大臣室
高木文科相、鈴木副大臣、笹木副大臣ら政務三役5人と事務方の協議が開かれた。
担当者がSPEEDIと、より広域に拡散状況を試算できる世界版SPEEDI(W-SPEEDI)の試算結果を示し、状況を説明した。

SPEEDIは、1回放出による100キロ圏内の評価結果である。
WSPEEDIは、関東、東北地方にプルーム(放射性雲)が流れるという予測結果を示していた。

鈴木は次のように主張した。
WSPEEDIの試算結果が出ると、たちまち風評被害が起こり、東京から福島への輸送もストップしてしまうだろう。
すでに郡山市と福島市から福島第一原発のある沿岸地域の浜通りへは輸送トラックの運転手が運搬拒否をしており、物流が滞っている。

なかでも必要なのは、ガソリンや重油を福島県内に届けることではないか。それが行かないと、救急車も動かない。
「いま、大事なことは、次に亡くなる命を減らすことだ」と相馬市の立谷市長が言っているが、立谷市長の言うとおりだ。この点に注意を払っておかなくてはならない。

それに、WSPEEDIは、放出量が100%、つまり全原子炉が壊れた場合を前提で計算している。
そんな高い放出量で予測することが果たして妥当なのかどうか。

文科省EOC放射線班の内部メモによると、政務三役は「一般にはとても公表できない内容」であると判断。
「SPEEDIおよびWSPEEDIの結果については、別途標準的なものを用意する」こととなった。

この点に関して、内閣府原子力安全委員会委員長の斑目は後に、次のように証言している。
「文科省から公開された計算結果を見ると、全原子炉が壊れた場合には首都圏を含め広域に放射性ヨウ素の雲が広がる。深刻な被害を示す結果が出ていました。これを文科大臣ら政務三役に説明したところ、バニックを心配して、とても公表できない、という判断だったようです」

15日午後9時26分に文科省EOCに、渡辺と雨夜の二人のモニタリングチームから緊急電話が入った。
「ポイント32で、330マイクロシーベルトの数値が出ました」
ポイント32は、浪江町川房である。
彼らは川俣町・山木屋の公衆電話から電話してきたのだった。
(これは[No.168] で書いたことと対応しています)

彼らはその日の夜、福島県庁隣の杉妻会館に泊まった。
そこから文科省のEOCにこの結果をFAXしたが、文科省EOCはその情報を現地対策本部に連絡しなかったし、関係市町村にも連絡しなかった。

それぞれの諸官庁がバラバラにモニタリングを行っていた。
「一覧性のない、ここの部局の測ったのはこれで、この部局の測ったのはこれでというような構造になっていて、こんなものを各部局がホームページで公表しても国民の皆さんはわからない」のが実態だったと枝野は後に述べている。

枝野は「モニタリング・データのフォーマットの不統一は、行政の縦割りが情報の共有を阻害」しているととらえた。
「いくら高度の技術によって情報の絶対量や精度を上げても、それぞれが集約され、整備され、共有されなければ、それはまったく機能しない」

政府全体としてのモニタリングの把握と責任の主体があいまいだった。

原子力安全委員会は、文科省のモニタリングの測定方法が統一されていないため、採集したデータを比較できないと苦情を申し立てた。
岩橋事務局長は、次のように振り返る。
「測定方法が統一されていないから、沈着物にしてもなかなかデータを比較できない。データがほんとうに信憑性があるのかどうか、計測器が汚染されていると高い線量が出る。だから、そうなっていないかどうか、こちらがデータを使う度にいちいち確認しなければならなかった」

官邸は、モニタリングの最大の責任官庁である文部科学省に対する苛立ちを強めた。
福山や伊藤のところには、福島大学の渡邊明副学長を中心とするチームがモニタリングを実施しており、飯舘村も含めて汚染マップもつくっているとの情報が入った。
([No.139] しょうがなかんべ で、渡邊明福島大学副学長のもとに結成された放射線量モニタリングの活動については述べましたね)

伊藤は文科省の担当者を呼んで言った。
「福島大学がここまでやっているのに、なぜ、文科省はできないんですか」
「いや、やればできます。ただ、人手が足りないし、車も足りないんです」
「文科省、持っていないんですか」
「全国からかき集めればなんとかありますが、ただ、電事連のでないとダメです」
「電事連の」とは、車外に出なくてもダストサンプルを計測できるモニタリングカーのことである。

電力会社からモニタリングカーを借り上げないとやっていけないと恥ずかしげもなく言う。
「要するに小出しにしているのか? それとも、自分たちの責任と思っていないのか?」
伊藤は憤った。

鈴木は
「モニタリングについては、情報参謀と作戦参謀の仕事をきちんと分けなければならない。文科省は、情報参謀と情報部隊の役割を担う。原子力安全委員会は、作戦参謀を担うことにするのがいい」といった論理を編み出した。

15日夜から16日早朝にかけて、鈴木は福山官房副長官にそのような考えを伝え、モニタリングの役割分担を官邸主導で決めてほしい、と訴えた。

これとは別に、枝野の指示で、枝野の秘書官たちが文科省、保安院、防衛省、警察庁、原子力安全委員会、JNES、原子力安全技術センターの課長クラスを官邸地下1階の会議室に呼び、モニタリングの強化について話し合った。

文科省だけのモニタリングではとても無理だろう、との認識の下、どのようにしたらモニタリングを強化できるか、が議論のポイントだった。

「モニタリングカーというのを文科省は持っているが、チョロチョロやっているだけだ。定点観測もないし、数も絶対数が足りない」
「同じ基準でやらないとダメだ。例えば地上1メートルで測るとか、その地点を決め手、定期的にやるとか」
「そのとりまとめを文科省にやってもらう」
そういう話し合いを持った。

「データのとりまとめは文科省、その評価は原子力安全委員会」
彼らはそうした役割分担を決め、その旨、枝野に報告した。


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