広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の21から30まで)
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広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD) (kousei, 2006/7/13 23:34)
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kousei
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その21 音声を聞く
そいで、ぱぁーとやられたところが、まぁ、雲が出て、また黄なのが出て、それがまた何でしょうね、最後に見たらまっ黄色なもんが流れよった。
やられたと思って、飛ばされて、畑の縁に何メータまで飛ばされたわけです。ほいで意識不明じゃったんです。
なのが、耳の中でなにかじーんというて蝉がなくように声が聞えたから、こう目を開けてみたら、上の上着が全部燃えて無いし、手やら胸やら顔がね、皮が全部ぶらぶらぶらと雑巾みたいに下げて、このままじゃ子どもを連れに、探しによういかんから、家入ってなにか上着をかけて出にゃならんと思うて家入った途端に、家が崩れて下敷きになりました。
それで後、子どもが、2人がぜんぶ裸で、大きい子どもがね、小さい子どもを負うて「お母ちゃん」 いうて入った時、見たら、せなやら顔やらじゅるじゅるになって、顔が燃えて、雑巾みたいにぶら下げてきて・・
その22 音声を聞く
光った瞬間はまわり全体がぱっと明るくなって、大きな溶鉱炉に投げ込まれたような感じでもあるし。火の雨がですね、驟雨がざーざーと降った、まわり全体にざーと降ってきた、そういうような感じでもあるし。まぁもっと云えば、あの、夏に、こう、太陽ですね、太陽が輝いている、それで海岸なんかへ行ってこう寝転んで目を瞑って、太陽の方を向くとぱぁーと明るく、瞼の裏が明るくなりますね、そういう感じであったようにも思います。
で、川の側だったものですからね、ずるずるっとその石段を伝って川へみんなと一緒に、瞬間的に熱いと感じたんでしょうね、入り込んでました。
で、たまたま一人だけ、あの、僕と同じ位の背丈の友達がいましてね、僕と向かい合って、「顔がどうかなってるか」 いうて聞くんです。
そいで、あの、見るとね、こう、ずるっと皮がむけて、あの、顔のあたりから首にかけてこうあの、ロウが垂れたように、雑巾をこう、べたっと垂らしたようになってるわけです。
それで、あのう、、そうなってる、垂れてるいうて云ってやったんですね。
自分もそれと同じにあるいはそれ以上なってたわけなんでしょうけども、自分がそうなってることも知らないし、それから自分は、友達がこうだから自分はどうなったのかなと顧みるという意識も働かないのです。
その23 音声を聞く
痛いもんでね気がついで、ほいで《ほいで=それで》起きようと思ったらねぇ、あたりは真っ暗でしょ。 おかしいなぁ、カンカン照りのところをわしゃ歩いて来た筈じゃが、こう暗くなったのは、こりゃひょっとしたら、わしゃ死んどるんじゃないかと、こういうことを考えたんです。
じゃが 死んどるにしちゃ、今までの状態の意識が変わらんのだよな。死んでもやっぱり人間はこういうな意識があるんじゃろと暫く考えたんです。
ほいでもね、いつまで見ても暗いでしょ、ほいで仕方がないから目を瞑ってこうやってふさっとったんです。《ふさる=伏せる》 ほいてこんだ目を開けてみたらね、こんだ大夕立の雨が降りますね、そして降ってこう地面にこうしぶきがあがるでしょ、ああいうふうな状態で青い火がね、ぱらぱらぱらぱら上から落ちてくるんです。
不思議なもんですな。こりゃいよいよわしゃ死んだんじゃわ。死んだら黄泉の鬼が火の車を引っ張ってくるゆうことをよう聞いとるが、あれじゃな、こりゃ確かにわしゃ死んだんじゃわ。
もう死んどるのも生きとんのもしょうがないわねぇ、思うて諦めて見とったんですがね、ほんでもまだねぇ、人間の意識があるんですな。この青い火を見とったら目が悪うなりゃせんじゃろうかという意識が出て目ぇつぶってねぇ、また、しばらくふさっとる時間は長かったですよ。
ほってこんだ目えあけてみたらねぇ、今度は火は消えてねぇ、ほでやっぱり暗いでしょ、どういうこっちゃろうかと思うて、考えて、ほして駅の方向をみましたらね、雲がちょっと薄くなったと思ったらぱぁーと明るくなって・・・
その24 音声を聞く
登ってみたところがですねぇ、一面がもう瓦礫に化してるわけなんですねぇ。ほで、普通は見えないところの今の西広島駅とか、駅の裏の山とか、もう全く手近に見えるわけなんですわ。
そしてまぁ東の方を見れば昨日まで威風堂々として建っておった、その、広島城ですね、これがまたぺちゃんこになってると。ほいで下を見ればですね、下の電車線には電車がもう3台も4台も横倒しになり、あるいはもうひっくりかえっているのやら、それから軌道から外れてですね、横を向いておるのと。
もう人影は全くないんですよ。物音はもう全然聞えません。人っ子ひとり通らん静かな死の町といいますか。
その25 音声を聞く
そうしよるとドームの窓から窓枠が燃えて、その窓枠から火が中に吸い込まれていく。そいで暫くするとその中から逆に外へ火を吹き出してきたと。で左の相生橋のとこの商工会議所、4階建ての商工会議所をみると、同じように窓から火が吸い込まれていってまた火を外へ吹きだしている。
そうしよると向かい側の木造2階建ての広島郵便局も、これが一番早く火の手を上げたように思うんですが。ぐるり八方がもう火が燃える音だけで、人間の声も何の声もなし、しーーんとしてしまったと。
しばらくすると、その川から、2mぐらいの直径の川の水が竜巻になって100メートル近く、上へびゅーと巻いてあがるんですねぇ、それが3本ほどみましたよな。それがばらばらーと落ちてくるんです、その、雨のしずくとなって。
その26 音声を聞く
ありゃま、どうした《どのような》爆弾落としたんだろうか? 思うておって暫くしとるというと、向こうの方からですね、もう破れ着物を着た人がね、ここらから血を流した人が、それからばーと手の先が、皮膚が垂れてぶら下った人が、そういう人、それから女でも髪を乱したひとが、半裸体ですね、半裸体になった人がつぎつぎつぎつぎダラーッとこう、首を垂れてやって来よるんですよ。
女学生なんかがスカートを、破れたヤツを手を覆うようにして、そしてずんずんずんずん続いてくるんです。それがもう何十なのか何百なのか続いてくるんですね。それから、これはまあ、ひどいことじゃ、それを見るというとほんとにまぁ、私共は、この世ながらの、いわゆる地獄ではないかと。
その27 音声を聞く
こんなに、こう火ぶくれでね、顔の相が全然わからん人も。 それからあの、死んでる人のあの、睾丸がね、男のひとがこう風船をふくらして、はじける位の大きさに膨れとったのがね、あれ、どうしてああいうところがあんな大きく膨れたんだろうか、いうようなのが生々しく残ってますね。
それからあの、子どもさんがね、怪我をしてどんどん帰ってきましたね。 「先生、先生」いいますけど、「あんただれ?」 って云ってもわからんのですよ、顔がぜんぜん姿が違うので。
この人たちは勤労動員の、外で直接受けた組ですからね、全部あの、、こう、豚のように腫れ上がって、それが茶色じゃなくって灰色の火ぶくれでね、で、「寒いよぅ、寒いよ」って、夏の真っ盛りですのにね、「寒いよ、寒いよ」ゆうて、「着るものちょうだい」「着るもの頂戴」、「お水頂戴」、「お水ちょうだい」言うてね。そういう子どもさんは、みんな亡くなりました。
その28 音声を聞く
薄暗いような向こうの方から、作業にいっとった生徒たちが学校に帰ってくるんですねぇ。
それみると、土人かなんかが、ちょうど、爆弾落として、黒人か何かの、土人かなんかを、落下傘ででも降ろしてからこさしたのかなというような感じでから、頭のところだけ線があって、帽子のところだけ線があって、それが後は真っ黒い身体をしたのが、こう来るのですよね。
それをよく見ると一中の生徒じゃったんです。見覚えがある顔ですが、それはみな裸のようになってから、靴だけで 後はみな真っ裸のようなんで、ほいで、「火傷をした、熱い、熱い」 ゆうてから、ジャガイモの皮のようなこう、めくれたような皮を、みな、すいすいすいすいと、ちょうど桃の皮を剥くように剥いて、「熱い 熱い!」ていいながら剥くんですよね。ほいで、「そんなことしちゃいけん」 云うてから、云いよったら・・
その29 音声を聞く
で、そのお友達がね、「よっちゃん、おかしいよ」っていうんですよね。で、「私も怪我してる?」って二人がまぁ聞きあったんです。 そで、「うん、ちょっとお顔がおかしい」っていわれるので、ほんとに指をですね、お顔へそっと当てただけなんですけどね、なんかあのぅ、柔らかい肌の感触がなく、なんかきんきんしたものが感じられて、指には、そのぅ、皮膚がねべったりついてたんですね。
そいで、ああ、私怪我してるってその時にまた思ったんですけどね、それから両腕をみますと、張り裂けた皮膚がですね、あの両腕の下にぶら下って、ほんとびらびらがこうぶら下ったような感じで、それから怪我をしていることが、その時はっきりわかったのです。
それでもなんとかお家の近くまで帰ったんです。そうしますとね、いつも可愛がって下さるご近所のおじさんに会いましたんですけどね、私が誰だっていうことがわかんないんですよね。 で、そのおじさんに私が声をかけますとね、びっくりして、「よっちゃんだったんか!」いうことで。
でもう、曲ってね、私には見えるんですよね、家族が、皆と右往左往話してるのが。私が娘だということがわからないんです。 で、私が泣きついてはじめて、「よし子か!」ということがわかって。ほんとにそれ程まぁ、私は変貌してたんだと思うんです。
その30 音声を聞く
それで見たらばもう、轟々ごうごう、もう見渡す限り火の海なんですよね。 みんなその火がうちの方に向かって燃えてきますしね、それに立ってる家がないんですね1軒も。
そいでね、それを掻き分けながら、裸のまま、子どものことを横に抱えましてねぇ、出たんですよ。手を血だらけにしましてね、掻き分け、掻き分け、出たんですけどね。
そのところの梁の下にお隣のおばさんが挟まっちゃってるんですよね。それで「助けて、助けてー」云うんですけど、助けてやりたいと思っても手がもう、掻き分けて出るのに手が血だらけでしょう。
だけど助けてやろうと一所懸命になって、それをね、子どもをそこの上に、瓦礫の上に置いといて、その梁を持ち上げるですけど、持ち上がらないんですよね、女の力では。
そのうちにほら、ごうごう燃えてきますでしょう。もう熱い風がびゅーと、こう、ふる《吹く》んですよ。 だからもう、「ごめんねー」ちゅうて、私、すぐに太田川のねぇ、土手の上に逃げたんですよね。
たくさんいましたねぇ。でも、どうしてあげることもできない。「助けてー、助けてーっ」て、あっちでもこっちでも泣いてても、それをどうしてあげることも出来ないなんて、ほんと、こんなむごいことがあるでしょうかねぇ、ほんとに。