広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の31から40まで)
投稿ツリー
-
広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD) (kousei, 2006/7/13 23:34)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の1から10まで) (kousei, 2006/7/13 23:38)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の11から20まで) (kousei, 2006/7/13 23:47)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の21から30まで) (kousei, 2006/7/13 23:51)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の31から40まで) (kousei, 2006/7/13 23:53)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の41から50まで) (kousei, 2006/7/13 23:56)
- 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の51から61まで) (kousei, 2006/7/13 23:58)
kousei
投稿数: 4
その31 音声を聞く
出たときには15メートル四方は火の海ですよ。バリバリバリバリーーっと。
「いやぁー、こりゃ、ここにおったら焼け死ぬよ、お父さん、お母さん、わぁーっ!」いうことですよ。
ほいでまぁわたしゃ、とにかく、燃えんところから、燃えんところからよって《よって=選んで》「まぁ川へ出なしょうがない、怪我しんさんなよ、父さん、そこ五寸釘がのぞいとるよ」 ゆうてね、云いながら、這うてみたり、立ってみたり、転げてみたり、「わぁー、こりゃー生き地獄じゃのー、口惜しいのー、こがいなことがあるもんかい」、ゆうてね。
その32 音声を聞く
腰を屈めてから這うて、四つ這いにみたいにして歩くんですよ。釘が上向いとるでしょ、みなこうなっとるから。四つ這いになってから、裸足でしょ、履き物なんか全然ありませんでしょ。生きる為にねぇ、もう我一勝ちですよ、逃げるのが、もう怖くて。
その時はほんとに人間どうかしとるですね、みんな狂うとりましたよ、本当が。
わし震えよるんですよ、そのことを考えたら恐ろしいから。 そうして、あのもう、「助けてくれ~、助けてくれ~」 いう人ばっかりですよ。
声は聞えてもね、姿はみえませんの。みんな、もう、建物の下におられるんですから、みんな。それでも、誰こそね、助けてやるゆう親切さは ぜんぜーんありませんよ。自分の身が可愛いばっかりなんですよ、本当が。
で、飛行機がきたらもう、「みんなかごめー《かごめ=屈め》」いうてんですよ。 立って歩くの、駆けって逃げるのが分るから、「すぐそこに転げなさーい」 って誰か云うんですよ。ほしたらね、皆すぐに、はあ、飛行機の音がしたら、はあ、皆ころっと転げとるんです。 わからんでしょ、歩くの、転げとったらわからんでしょ、転げたんです、皆。ほで、飛行機逃げたらまた、駆って。駆けらりゃせんのですよ。
その33 音声を聞く
こう、つろうてね、《つろうてね=連れ立ってね》、「どっちから逃げようかね、逃げるとこがないけん、早くなんでもええものをひとつ拾いなさい」ゆうてね。
わたしゃ垂木を1本持って、ほかのもんも、みんな垂木を下げとりました。
そいから中にはね、真っ裸で子どもをせな《せな=背中》に負うとっちゃた人も。 子どもは、はあ、もう死んどるのにね、私の後ろにおって・・。それが屋根がこがぁに、こがぁに《こがあに=こんなに》倒れとるんでしょ、そいでも しょうがないでしょ、屋根の棟を歩かにゃならんから。
ほして下からね、「たすけて~~」 っていう声が この耳の中に八年ぐらい のかなんだ。《のかなんだ=消えなかった》
その声がなんともいえん、その、家がなんぼにも《なんぼにも=いくらでも》こうゆうようになっとるんですけんね。「たすけて~、たすけて~」 いうてんですがね、助けることじゃない自分の身が逃げるのが一生懸命で。
ほいで屋根の棟をこうやってみんな叩いてね、丈夫そうなところを渡って這うようにして逃げたんですよ。それなのに、「奥さん助けて、子どもが、こどもが・・・」《って言うんです》
「あんた今どうにもなりゃせんじゃないの、早う前になっと抱いてやんなさい。《前にでも抱いてやりなさい》 死んどるものを負うとってんでしょ。」
その34 音声を聞く
逃げ道が断たれますからね。そやからどっち向いて逃げたらええか思うて、頭が転倒してしもうとりますからね。
「お泉邸はどっちですかー」 っておらんだ《おらんだ=叫んだ》んですよの。 すると 「お泉邸は火事になっとりまーす」 云うてんで 「火事になっとってもまだ避難の余地ありますけん、どちらですかー?」 いうてもだまって皆かごんでしもうとっとですよね。
今何時かしら、とこう空を仰いだんですね。 そしたら太陽が真っ黒い雲の中からね、この位の大きさになって真っ赤になって顔を見せとりますね。
「こちらが東ですよ、こちらがお泉邸ですよ、早う逃げましょう、周りが、逃げ道が断たれますよー」 云うて、私がおらんで、そいで私はどんどんどんどんお泉邸へ走ったんですがね。
黒煙がもう何十丈も、ぱーとあがりよる、火と共にあがりよるんです。《あがりよるんです=あがってるんですよ》「これは大変ですよ、道を断たれますでー、断たれますでー、」 云うてね。
その35 音声を聞く
そうして避難してそこで見ますとね、高ーい松の木のね、上の方がボウボウ燃えとるんですね。 松の木ですから青いでしょ、焼夷弾もかけらも何もないのにああいう上の方が、しかも青い松の葉っぱが燃えとるというのはどういう訳だろうと、今まで爆撃は方々でいろいろあったけども不思議でしょうがないと。
原子爆弾て気がつかないですからね。
そうするとね、時々あつーい炎の風が地面を這って、こう。 そしてその周囲におる避難してきている人間が みんな大火傷をして 顔がもうわからんくらいに赤むけになってしまっとるんです。
そして苦しくてしょうがないもんだから その連中がみんな池の中にはいってるんですね、冷やしたならば苦痛が少しでも少なくなるかと思って冷やしておるんでしょうね。
そうすと、その避難してくる人間がだんだんに人数が増えてきましてね、それがもう実に二目とは見られんような顔つきになっとるし、苦しんでおりますしねぇ・・・
その36 音声を聞く
もう焼け爛れたですね、まぁお化けのような被害者の群れでですね、その公園はいっぱいなんですよね。
この大きな桜のですね、あの、幹の側にね、まだ年若い母親がですね、乳飲み子を抱いてね、お乳を飲ましているんです。
ところがですね、その母親はですね、年の若い母親はもう既に死んでるんですがね、この乳飲み子はですね、母の死も知らないでね、無心にですね、死んだ母の乳房をしゃぶっている。
そいでしばらく二人で待っていたところがですね、私の前にですね、一人の男がね、こう立ちはだかったんですね。私は キヨシ と申しますが、「おお、キヨシじゃないか」と。
私の名前を呼んでくれたものですから 初めて父親だってことがわかったんですね。ええ、一目でわからないんですよね。
父親はもう素っ裸でね、それこそもう頭のてっぺんからですね、もう足まで全部焼いてしまってるんですよね。 顔はですね、もう腫れあがってますしね、まるで目が糸を引いたようなんです。 唇はもう豚の唇のように腫れあがっているし、それからもう睾丸はですね腫れあがってる。
ところがですね、父親はそんな自分の身体に気がつかないで 私共夫婦がですね、焼け爛れた身体を見て心配してくれたんですね。 「お前は酷いことになってるじゃないか!」ということでね、まぁ、とにかく、お前らに会えてわしは安心・・
その37 音声を聞く
(川)上の方からね、筏に乗って警防団の方が、漕いでどこへいかれるのか知りませんが、いらっしゃるんですよ。
それで 「すみませーん、助けて下さい、私、もうこの材木につかまってる手がもう放れそうなんですが、もう主人は亡くなったけど 子ども二人の安否がもう、私は今ここで死んでられないから・・」 ゆうて云ってもね 「いやー、おばさんよりはもっと助ける人があるんだ」 云ってですね、行ってしまうんです。
何人でも。 助けてくれません。
もうしょうがない思ってましたら、こんどはあの両岸はどんどん燃えてますからね、ばーっと火の勢いが川の中に入りますと竜巻が起こるんです、一丈くらいの。 それがざーっとこっちへ押し寄せてくるのが見えるんですよね。
その38 音声を聞く
空が凄く暗くなりましてね。暗くなったいうのが、 日蝕ですかね、あれ全部お日さんが隠れますでしょ、その時くらーくなるでしょ、あれ位だったか、あれよりまだ暗かったか思うんですが、もう空は真っ黒い雲ですね。
そいでみんなあの煙突から抜け出たように、もう煤もぐれのような感じで、髪はもう逆立に立ってますしね。まあ、もちろん服なんか真っ黒ですよね。だからあの時は灰色よりまだ黒い色と真っ赤な血と、という色しかなかったと思います。
それで雨が叩きつけるように降ってきました。 で、中学の1年生、2年生くらいのちっちゃいのが、全身もう焼けて、もう風船のように膨れてますね。 皮はぼろぼろさがってる。
男の子は帽子被っているところは髪が残ってるんですけど、その帽子の下からはもう全部火傷ですから、髪も溶けてないし、耳も溶けたような感じですね。
「もしもし」、って呼ぶ子がいるんです、女の子でしたね。 女の子か男の子かわかりませんけど、まぁ、声を聞いてわかりますね。 で、「雨にうたれて寒いから、何か着るものないですか?」って云うわけなんですよね。
その39 音声を聞く
ほしたら雨降り出したよの。 それが真っ黒いんが。 おかしいのぉ、、思いよったらねぇ、なにあんた、川向こうからあんた、もう何百人何千人いう人がこっちへわぁーて歩いてくるんですよ。
それがみな裸で もう焼けたりなんかしてね。 ボロが焼けて溶けたようにね、皮がむしれてね、そん中に水が、雨が降っとるけ、水が入るでしょうが。皮の中に水が入って、こうやりゃ、ザーって水が落ちるように。 それが入る、上がる、土手・・・あがってくる人間は、「水くれ、水くれ、水くれ、水くれ」 って唸っとるんだね、みんな。
「水くれ、水くれ、水くれ」 云うちゃ バタバタバタバタ倒れよるんだよね。ああ、凄いひとじゃなと思った。 中にはトタンを持ってから、雨降っとるから、こうやって裸になったような者もおる。 布団を被ったんもおるのぅ。
さぁ年頃42~3位の女の人が、女の人じゃろ思うんじゃが、ずるずるや、頭の髪は1本もないんや、ずるずるでなにもないんや。 8月の6日でも「寒い」云うてな、濡れて、普通の雨じゃないんじゃけん。 「おじさん済まんが布団をちょっと貸してください。」云うて、 貸してくれゆうたって見た目がねぇ、ずるずるでしょうがい・・・
その40 音声を聞く
逃げた時に、雨がこんなの降りました。真っ黒い雨が、大きなのがどんどん。 まぁ黒い雨じゃない。
結局、黒い煙があがっとるから、広島全部が壊れて、黒いのがばーっとあがっとるから、黒うなって落ちたんだろうじゃないですか、今からみると。
あれとね、太陽がね、もうそれこそね、広島全部、半分がね、太陽に見えましたよ。 あんな大きなね、恐ろしい太陽みたことないです、私。 広島が半分、祇園の方へ向かって、全部が太陽に見えたんです、真っ赤に。 見えたんですよ。