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広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の51から61まで)

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kousei

通常 広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の51から61まで)

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/13 23:58
kousei  管理人   投稿数: 4
 
その51 音声を聞く

 その火事場に中学校の生徒が、いっぱい檻に押えられて下敷きになってんですよ。ほいで、足も手もバタバタ、こうしてるのが下から見えるんですよ。 
 そしてその側はもう火がね、どんどん燃え、そして、そこをやっと通って後ろを向いたら、もうそこは焼けきってしまって、むこうへこぅ、移ってましたからね、全部の学生はそこで焼け死んだいうことになるんですね。

 そしてこの広い道路は、全然隙のないだけに、何千人の学徒が、わーっと来たんですよ。真っ裸のもんが全部ですけど、5人に1人くらいは血だるまになってる子がいるんです。そして女と男の区別は全然つかないんです。

 みな、もう真っ裸になって、それと女の子は髪がばんと空向けに、ぱっと上むいてるんです、立ってるんです。ほいで、あぁ、あの子は女の子じゃいう区別しかつかないんですね。 
 そしてもう、わぁーと


その52 音声を聞く

 それが地下壕の上へ、建物が潰れたもんですから、その地下壕の中の、奥の方におる人や 小使室の方でまごまごしてる女たちや、小使いのお年寄り夫婦なども、みな、生き埋めになったわけなんです。
 下で、「助けてー、助けてー」、「誰それさん助けてー、お母さーん」という声が地底から聞えるんです。それを助けようにも道具がないわけ、ツルハシひとつも、何にもないわけです。
 一瞬になくなってしもうた。それがもう、皆逃げ切れないわけです。 

 ところが、間もなく気がついた時には、辺り木材が全部火を含んでおって、火災となった。その熱気が、今度は我々の身体へ反射しまして、耐えられなくなった。

 ほたら、「とり巻け!」と、もうこれ以上は我々も共死すると、火に囲まれてしまった、と。「みな、念仏を唱えよ」ということで、みんな、期せず、自発的に「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」というて、生き残りが下で、地底で泣き叫ぶね、「助けてー、助けてー」という。
 そのもう、その食い入るようなものをね、後髪引かれるような気持ちで・・・ 


その53 音声を聞く

 中にはね、その、足首だけ押えられているのがいる。「行宗(ゆきむね・語り手の姓)、切ってくれ」というわけですよ。「これ、どうしても取れねぇ、どうも駄目だから切ってくれ」。

 切るにはね、牛蒡剣しかないし、その牛蒡剣には刃がついてないんですよね。足首なんか、とても切れないですよ。どれやってもね、どうにもならないの。そのうちに火の手が物凄く強くなってきたんで、その、准尉もね、「もはやこれまでだ」と・・


その54 音声を聞く

 それで、その家族が「うちのお母さんが、柱と敷居に挟まれてるから、助けてくれ」ちゅうね。ほいで行った。
 行ったところで、どうにもこうにも、こんな太いあんた、直径1尺5寸位あろうかいうような棟木だから。それと敷居の間に挟まれてVの字になったようなんだ、こう、つまりね。
 ほいで、下半身が挟まれちゃって、上は動いたってこっちが抜けないね。

 それを、あんた、そんな重量物をわし一人で、誰が行ったって、どうにもなるもんじゃないでしょう、あれ動かすいうのは。その上にまだ物がのってんだから。ほいで本人は生きてるんですよ。

 そのうちにもう、あんた、自分の尻の方から、火がボウボウボウボウ燃えてくる。だから「もういいからあなた、私死ぬから、いいからあなた逃げてくれ!」っていわれて。
もうそりゃね、実際、ありゃ地獄だね。


その55 音声を聞く

 もう広島中は、その、火の海でしょうが。そいで恐ろしいでしょうがいな。そいで、どっどっどっ、そのう、人間の焼けよるのが、その、走ってくるのに、みとるでしょうが。

 もうこれだけ、もう、地獄みたいなことはなかったですね。助けようちゅうても、もう火がどっどっどっどっ燃えてくるもんじゃけん、手が出せんのですよね。

 そいでそうなったら人間ゆうのはおかしいもんで、自分の身を救うより他には手がない、いうような頭を持つですね。ひとつのその、犬猫と同じように野獣に変わってくるんですね、もう。


その56 音声を聞く

 行った時に母は「消防署はどうしてるんだ」と、それから「軍隊は助けにこないのか」と。
 「もう火がついてきてる」と、いうんで、「僕は間もなく戦場で後を追うから、それじゃ先に行っててくれ」と、云ったら、「それじゃぁ妹のことを頼む」と云って、後は般若心経を唱え始めました。
 で、その般若心経を聞きながら、私は ・・・


その57 音声を聞く

 必死で父の名前を呼んだんです。
「お父さん、お父さん」と云って呼びました。いっくら呼んでも返事がないんですよね。
 それで、お父さんと云ったんでは聞えないんだと思って、「さだこ」といいました。
 「さだこがきたよ、お父さん、さだこが来たよ、お父さん、返事をして頂戴!」と呼んだんです。

 そしたら一度だけ「う~ん」といううなり声が聞えたんです。そして、その後も何回も、「お父さん、お父さん、さだこよ、お父さん」って呼んだんだけども、とうとうそのまま返事が聞こえなかったんです。

 そうしているうちに、どんどんどんどん火が燃えてきたんです。「もうここにいたら焼け死ぬから、早く逃げんといけない、早く逃げなさい」って周囲の人が、みんなが云って下さったんで・・・ 


その58 音声を聞く

 そいで、もういろいろとやってみたけれども、どうにもならない。今度は子どもじゃない私がですね、そこを通りよる人にですね、「どうぞ手を貸してください、この下に家内がおるんだから」って云ったけれども、見向きもする人はないですね。えぇ。

 もう消防もですね、巡査も軍隊もあったもんじゃないですよ。もう軍人でもですね、みな軍刀引っさげてね、だっだっだっ逃げることばっかりですよね、えぇ。
 もう、どうすることもできませんでしたね。ただ「助けてくれー、助けてくれー」という声を聞くだけでしたね。

 それからもうだんだん火は、あちらこちらに火の手が上がるでしょう?「助けてくれー、助けてくれー」って云ってですね、呼んどりましたがね・・ええ・・じゃが、どうにもならんのでねぇ・・


その59 音声を聞く

 どうにもならないんですよ。私の家の下の材木にも火がつきましてね、下からまぁ、声の限りにまぁ、叫んでるわけですよね。 「ほら、足の、足の方に火がついてきたから~~」
「どうにもならないんだよー」と云って、最後にはそこに泣き崩れましたね。

「ねえさん わるいけど どうにもならないだって、堪忍してくれって」言ったら こう、「おまえは私を見殺しにするんか」って・・こう・・・どうにも・・・
 一歩逃げてはふりかえり、一歩逃げては振り返りで、8月6日がくると、なんか恨みの声が聞えてくるようでね。


その60 音声を聞く

<吟詠>
生霊二十万悉く鬼となる
悲惨かくの如きは青史になし


その61 音声を聞く

 呉着後広島の状況と陸軍側の要望を参謀に伝え、鎮守府は直ちに各部隊長の参集を命じ、部隊会議を開催、次のように至急実施することになった。

 一つ、呉海兵団長は1500人の作業隊
 二つ、呉海軍病院長は10隊の救護隊
 三つ、呉軍需部長は2万人の食料の準備

 概ね午後3時までに編成する事となり、私は再度広島市、出発する命を受け、部隊より先に自動車にて呉を発し、広島駅に直行したが、早朝の状況とは一段とその様相が異なり、市内一面に猛火に包まれ、負傷者の右往左往と死者の様相を加え、猛火の状況は言語に絶する状況にあったが・・・ 

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