広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD の41から50まで)
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広島の被爆者の声(1) (1枚目のCD) (kousei, 2006/7/13 23:34)
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kousei
投稿数: 4
その41 音声を聞く
大きな粒の雨が突然降った。
これは油脂爆弾とか、まぁ勝手なことを、まぁ知ったかふりして、みんな云いあっとりましたが、「水を飲んじゃいけませんよー、水を飲んじゃいけませんよー」、とゆうて軍人らしき者がですね、後ろからどんどんこれらも逃げていくのですが、注意してくれました。
水を飲んじゃいけないと。
ところが道中に、ずーと道の両側に、村の人がみんな行列でしょんぼりして「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」 いうて両手を合わせて、そういうのがもう乞食というようなことでなく、その一歩まだ深刻な格好でですね、全身が血みどろで 上のワイシャツなんかぼろぼろになって血だらけで、死相で血を見て顔色は悪いし真っ黒で、目と歯だけが白いという状態であったために、もう村の人はびっくりして、ただ「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
その42 音声を聞く
この時刻広島市郊外 同盟通信広島支局の避難先にて
その43 音声を聞く
いわゆる、私らが言う、正規の第一報はそれで済んどると。 NHKへの支局へ、同盟通信の岡山の支局の連中を呼んで貰うて、こうこうじゃと出したから。
そいでいわゆる雑感をね、あんた書けゆうんでね、書けゆうもんだから私が書いてね。
やっぱり、一発でね、落ちた広島市は廃墟になって、市内に入ろうと思うたけれども入れないと。そいでもう、市外へ、市外へね、怪我人が津波のように出してきよると。
恐らく広島市は勿論全滅しとるような模様であろう、いうような意味を書いたわけですね、私は。
ほんま見た通りを書いたわけですがね、今でいう事件のあった雑感記事よりは、多少心構えがちごう(違う)とったでしょうね、私の場合。
本社の方へやっぱり報告しよういうね、気持ちも半分あるわけですね。それが一般記事として使えるとは、その当時じゃけん思うとらんですよね。
その当時のことじゃからボツになろうとなるまいと、恐らくなるじゃろうけれども、本社への報告、本当のことを知らせる、知らせたい、いう気持ちからね。ひどい、いわゆる幽霊のように人波が続いとるということを、正直に書いたですね。
その44 音声を聞く
男も女も真っ裸なんですよね。あの、まぁ8月の一番暑い時で、女性なんかほれ、薄いものしか着てない。
だから、あのピカッと光った瞬間に、それが焼けたのか溶けたのか、もう裸になっちゃってるわけですよね。
頭の髪の毛だって殆どないような状態。 だから、男か女かわかんない、ただ、裸のものをもう何千人見たんだか。
もうひとつは、あのぅ、目玉が飛び出しちゃって、目の中から赤いどろどろとしたものをぶら下げてんのか、流れ出てんのか、ちょうど口のあたりまでね、こう、下げた者、これもまた大した(人数)見たわけですよね。ところがみんなね、その、真っ裸のような状態の人たちがね、火ぶくれになり、歩くたびに、まぁ、いのかす《いのかす=動かす》たんびに皮がはがれて、はがれた皮がぶら下る、ぶら下った皮はどす黒くなって真っ黒。
そして中身の方は油でギタギタなような、赤いような、茶色のような、それこそ見るも無残な状態ですねぇ。
しかし、そういう人たちはやはり、まだ自分で歩けるわけですよね。 歩ける状態でもそれほどまでにひどい状態。だから・・・
その45 音声を聞く
まだ産まれて間もない赤ん坊を抱いて、こぅ、来るのを見たところが、その赤ん坊がもう全身もう、ひどい怪我をして真っ赤だったんです、血でね。
「あのアメリカの野郎め、ひどいことをしやがるな」思ってもう、ほんとその時になって初めてこぅ、怒りが燃え上がってきたんですよ。
それからまぁ、私たちの部隊の演習場をずっと入っていったらね、夥しい火傷をした人たちがいるんです。薬らしい薬はないんですよ。
なんかそのう、黒いような油みたいなものを背中に塗ったり、火傷したところにずーと塗ってたんだけどね。
そしたらもう、広島駅の方からね、俗に云うユーレイ、みな手をあげて、ぶるぶるぶる震えながら、焼けた服を着てね、ぞろぞろぞろぞろ来るんですよ。
その46 音声を聞く
誰がつれて来たかわからんけども、腹のでっかい人、大八車に乗ってあったんだ。お産したっていうんだよ。その身体でさ、母親がね、生まれたばかりの赤ん坊、片手に抱いてさ。
からだは動かせないような格好でもさ、抱いてた赤ん坊オギャオギャと泣いてたっけど、とっても見られなかったなぁ。
どっちも死んじゃったけどもさ、車の上で。
私ら疎開するのだったから、水筒さ水満タンにしてあったでしょ。 そして水筒下げたまんまさぁ、救助してたでしょ。
そしたら足押えられちゃったもんなぁ。「水くれ!」っていうわけだ。やったのさ、外してね。そしたらこんだ、その辺にいた、おんなじ負傷者がさ、寄ってくるんだよ、こう這いながらさ。
そしたら上級の兵隊が来て、後ろからぶん殴られたわけよ。 「負傷者に水与えたら死んでしまうから取り返せ」、という意味だったらしい。仕方ねぇから、肩へ足かけてもぎ取ったなぁ。
あの辺りから気がおかしくなっちゃた、すっかり。 人間というか、ただの動物みたいになっちゃったの。
その47 音声を聞く
逃げてくる人たちを見たら、全身火傷なんですよ。もう着物一枚も、シャツ、パンツもつけていない人たちもいるんです。
頭のてっぺんからつま先まで真っ黒になって、その人たちはそこへやっと逃げてきて、バタッと倒れたら、もうそのまま息絶えて。
そういう死人がバタバタバタバタ重なって、もう、だんだんだんだん山になっていくんです。
そのうちに、今度は、あのぅ、母親が半裸体で赤ん坊を抱いて走ってきた。そこへ、比治山の下まで来たらバタッと倒れて、母親はそれなりもう息絶えてしまった。
赤ん坊はまだ母親が死んだのは知らないで乳房探って泣く。 やぁ、、こんな小さい子どもも逃げてくる。
全身火傷の人たちは苦しいもんだから、ごろごろ転がってある。と皮むけて赤肌が出る、それに砂つちがつくでしょ。
いやいやいや、悲惨で悲惨で、はぁ、まず地獄というのはあれだと思ったですな。死ななければ地獄というのは見られないだろうけども・・。
その48 音声を聞く
黒く焼けた人たち、真っ黒い丸坊主になったのが、こう、皮ぶらさげてねぇ、手の皮が、ちょうど、ぶらぶらっとこう、身体に下がってる。それが列になって逃げたんじゃないですかね。
その逃げる途中、川が2つありましたがね、橋が一箇所燃えてたんです。怖がってみんな川へ入る。川へ入るもんだから、その、途中でみんな、歩けんようになるんですね、水の中に入った為に。だから川の中がもう埋まってましたね、川が、あの広い天満川が。
それから、あのぅ、道路の縁に水槽と防空壕が掘ってあったんですね。水槽の中へ、ちょっと水飲もうと思うんでしょうな、水槽・・立ったままでね、頭だけ突っ込んで死んでるんです。
行きよる人は、水に手をつけたり顔にかけよる。そうするとその水・・、そのままポッと首突っ込んでしまうと、そんなんが一つの水槽に数人おる。
道端に防空壕を掘ってたもんだから、防空壕の中に足取られてね、こけるんですね。いっぺんこけると、あれもう駄目になるの、もうね、動かんの。目だけ上げて、真っ黒いやら、皆いっぱいになっとる。こけるともう駄目。
その49 音声を聞く
電車は黒こげになってるしねぇ。そこでねぇ、あの、そうですね、ようやく座るくらいの子どもがね、真っ裸になりましてねぇ、線路の上に座ってるんですよ。
どうして真っ裸になって、どうしてねぇ、座っておったのか、それが今もって分らないんです。
電車は勿論赤茶けたような電車が、すぐ側にありましたけど、赤ちゃんだけねぇ、どうして生きとったんだろうかと。
今だったら、その赤ちゃんを助けて逃げますがね、あの当時の感覚ってのはそんなもんじゃないんです。原子爆弾が落ちた瞬間ね、親のことも兄弟のことも頭の中にゃ何にもないですよ、ええ。ただ、夢遊病者のように、考える思力なんてのは全然ない。
そりゃそうですね、人が沢山転がってる、転がってる側を平気で歩く、その感覚っていうのは、今の人には、とっても想像ができんでしょうなぁ。むしろ助かっていることが不思議なんですから。
その50 音声を聞く
で、ちょうどうちの左横の方に東洋製罐という大きな会社がございましてね、缶詰の。そこの東洋製罐の裏手から火が出てるわけです、炊事場からね。
で、とにかくそこが塞がれたら、もう逃げ場所がないんです。 逃げるにはそこの縦の一本道しかないわけなんです。そこの道を、もう一所懸命逃げましてね。
東洋製罐なんかの工場の中から、もうほんとに、「助けてくれや、熱い!」って、もう思い出すのも嫌ですね。そういう叫び声というのは、もうほんとに、地獄っていうんですか、何ていうんですかねぇ・・。
で、あの、三宅製針という針工場があったんです、東洋一といわれた大きな針の工場なんですけどね。
そこからも女工さんたちがね、ほんとに頭は、今でもジャガイモの新ジャガを見るのが嫌なんですが、みんな、ちりっちりに皮膚が焼け爛れましてましてね、髪の毛なんはもうほんとに みんな焼けて短くちりちりになって、真っ白の灰をかぶってますからね。
そういう人たちがみんなもう、お化けと同じに、両手を前に下げてね、それこそ行列ですよね。
中には火傷した方もいらっしゃいますし、ガラスの立った人たちもいましたけど、そういう人たちが、とにかく川へ逃げようというわけで