長崎の被爆者の声(1) (4枚目のCDの11から20まで)
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長崎の被爆者の声(1) (4枚目のCD) (kousei, 2006/7/14 0:37)
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- 長崎の被爆者の声(1) (4枚目のCDの52から58まで) (kousei, 2006/7/14 10:28)
kousei
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その11 音声を聞く
今日はとても大事な会議をするんだから、みんな忌憚の無い自分自身の考えを披瀝してくれと云うて、そいで始めようとしたらね、そこへ佐世保の市長、小浦君っていうの、「ちょっと知事に至急話したい、お願いしたいことがあるから」
「いま会議を始めるばかりのところだけど、立ち話くらいなら入ってきてもいいよ」と、ゆったら、いきなり入ってきた時の小浦君の言葉が、
「広島はえらい事になりましたねぇ」という、「大変なことですね」と、こういうことをゆうたから、
「ちょっと待ってくれよ、それは誰に聞いたんだ?」とゆうたら、
「いや、鎮守府司令長官からじかに聞きました」
「そうか、それはとてもいいニュースだから、その問題について、今、会議をしよるんだからね、君の聞いた、鎮守府司令長官からじかに聞いたというその話を、先にね、みんなに聞かしてやってくれ。それは何より有り難いことだ」とゆった、その途端に電気が消えたんですよ。
その12 音声を聞く
午前11時2分
その13 音声を聞く
兵隊の声で「野母半島上空通過」という声と同時に、ぱっと炸裂したわけですが、ピカッとした、その丸い玉ですよ、その時は。
丸い玉みたいなのが、ばーっと長崎に押さえつけましたですね。ばっと押さえつけて、丁度海水浴に使う「浮き」でございますね、桃色のドーナッツといいますかねぇ、紅蓮の炎といいますか、そういうのがぼっと、ドーナツみたいなのがこう出来たんですが、その横幅がちょうど、香焼からみまして稲佐岳と同じような太さでございました。
(高度)8千というようなことを中隊長に報告すると同時に、下の方から、例のきのこ雲と申しますか、あれが真ん中にすーっと出てきたわけですが、それが間もなく、そのドーナツみたいな輪を通り越しまして、上の方にぐっとこう、盛り上がっていくわけでございますが、その高度が1万、1万2千、1万3千ということを私は中隊長に報告しましたが、もう以後は報告もする術がなく、後はずーっと形をくずしまして、上空へ上空へと行ったんですが・・・
その14 音声を聞く
ぱっとこうね、浦上の方の空をみたわけですよ。そしたらもう浦上一体がですね、地上から天に届くようなですね、それこそ真っ赤に燃える火柱が立ってたんですよ。
「わぁー、こりゃ、浦上はおおごと、浦上はこりゃ火の海ばい」って。それがですね、あの、その火柱がですね、ずっーときえるのと一緒にですね、上からなくなり、下からなくなりで、すーと消えて縮まってですね、火柱が無くなるのと一緒にですね、あのきのこ雲がずーっとあがったわけですよ。
ほいて、きのこ雲があがる時分にはですね、もう空の色がですね、きれいな茄子の色ですね、ああいう茄子の色に空の色が変わってですね、もう、一転してですね、カンカンに照っとったお昼の太陽がですね、もう肉眼でこう正視できるようになったんですよ。そしてね、もう、太陽だけがですね、もう、もう火のもろくのようにして燃えてるんですよ。ああ、こりゃ、もう、天と地がひっくり返ったと。
その15 音声を聞く
そいで、伏せしとった訳ですよ。ちょっと時間があったもんだから、何だろうかと思って、ちょっと顔を右にあげてみたんですよ。そうしたところが、長崎駅の方から中天に、材木ですね、材木とか瓦とか、何かしらんけど、石ころ、それがが要するに竜巻ですね、竜巻の格好でぐーんとこっち舞うてくるわけですよ、こっちに。勝山小学校の方に向かって。
これはとにかく、ただ事じゃないぞと思っている瞬間に、勝山小学校のガラス窓が、物凄い音をたてて壊れたわけですよね。それで大変だと思って、私としても無我夢中で伏せたところが、なま暖かい風が背中の方をさぁーと過ぎたわけです。そして同時に顔を上げたところが・・・
その16 音声を聞く
バーッとこう、目もくらむような閃光が大空一面に拡がってですね、花火みたいにですね、赤や紫、黄色という風な、目の眩むような色の火の玉がですね、雨あられとなって地上に降り注いできたんです。
その光線がですね、自分の顔に当った時にですね、物凄い、やけ火箸を当てられたような感じの、物凄い激痛を感じたんです。あっと思ってですね、顔に即座に手をやって、左手で押えたんですよ。
ところが、押えてこう撫でたらですね、ベロッと皮が上から下へ一枚剥けて下がったんですね。ほいでびっくりしてですね、慌てふためいて、そこから2メートルばかり離れた、横穴の防空壕に逃げ込んだんです。
逃げ込むときですね、背後から原爆の光線がですね、パッパッパッパ襲ってきたんです。その、背後からきたもんだから背中が全部その時また焼けてですね、それで防空壕に入り込んだんですけど、崖をくりぬいた防空壕でですね、前に遮蔽物がなかったもんだから、光線がもう次から次に侵入してきてですね、堪らんもんだから、側にあったワイシャツをですね、頭から被ってしゃがみこんだんです。
ところが、そのワイシャツを手で押えて、出てるところはもう、手と腕だけだったんですけどね、その腕や手がですね、今度はその光線で、波状的にパッパッパッパやってくるんですが、その光線というのは物凄い熱さでですね、それで、熱いもんだから、歯を食いしばって、身悶えしながら、うんうん唸って、歯を食いしばって頑張っていたんですよね。それがもう、無限の長い時間に考えられてですね・・。
その17 音声を聞く
私はね、太陽がね、落ちてきたんじゃないかと思ったね。その音の凄さと光の強さね。バーンという音なんで、ピカッとしてね。ピカドンという言葉がよく言われますけど、私にはね、最初から見ていたせいかね、もう、音と光が一緒のような気がしましたね。
黄色なんです、なんでもかんでも。煙が動いてるんですね。空気が動いているという感じなんですね。まず声が聞えるんですね。「やられた~、助けてくれ~」っていうんですね。ちょっとのぞいてみると手をだらっと下げちゃってね、裸の兵隊がさぁ、うろうろして、気違いみたいに叫んでるんです。
ものすごくこう、痛みだしてね、私はまたそのまま立ち上がったのを、そのままうずくまったんです。でも、考えてみるとね、燃えてるんです、靴が、シャツが。くすぶってるんです。やっぱり本能的にね、その煙を消して・・・
その18 音声を聞く
青色とピンク色ですかね、それから黄な、ああいうような火花が出ました。その後にドーンというおっきな音がしました。そしてそれから台風みたいなので、家をもね、叩き潰されたごとなりました。と、酸素工場の女の人がね、出てきてですね、「あんた、だれね?」というたら「うちはあんたに伝票書いた女です」って。「あーぁ、あんたはそげになったんね」。その時はですね、女の人はもう裸で、大火傷を負うちょりました。
で、部下をですね、「おーい、お前達は元気にあるか?」ちゅうて言うた時には、もうその時は全部、20名は死によりました。
女の人の、さぁ、逃げようちゅう手を握った時ですね、火傷を、女の人ですが、ずるっと剥けて血がだぁー流れました。ほて、火の中を逃げるとき、「助けてくれ~、助けてくれ~」ち、おらぶ人がおっても、そいでも、火の海やったからですね、家の下敷きになっとるけん、助けようにも助けられんかったです。
その時ですね、ちょうど原爆の落ちたその雲がですね、ちょうど上からですね、下を眺めると、ちょうど、もう鬼みたいになってクワーと下を眺めたごと、ああ、これが地獄の一丁目かなと私思いました。これが本当の地獄一丁目やなぁと。それからですね、人間の死体をですね、もう、何人も踏んで、滑ってですね、どっかこっかもう・・
その19 音声を聞く
ちょっとこう、後ろを振り返ったんですね。その瞬間、稲光のようなのが、ぱっとしたんですよ。そして背中に熱っ!と感じたんですね。熱っと感じたちょこっとの瞬間だったんですけど、凄い火傷。
気がついてですね、あのぅ、板をはぐってですね、外に出た時は、まだ誰もいなかったんですよ。まわりは全部、こうぺちゃんこになってしまっているでしょ。そして、私どこに来たんだろうかと思ったんですよ、ひとりだけ立ってるのが。まわりを見ても、どこもわからないんですよね。
ほいで、誰かがですね「助けてくれ~」いわれたんです。そいで自分に返って。もう、自分の着物がなんにもないんですよね。ズロースだけになってるんです。
その20 音声を聞く
「なんかねぇ、ありゃ?」、光線と爆風と一緒に入ってきたっちゃが、なんだろう? とにかく、まぁここは穴の中やから危険なことはないだろうと。ちょうど坂本町の外人墓地の下に横穴を掘っとったですからね。とにかく出てみようかと、やっと身体が抜け出るくらい掘って、こうして見たところが、外はあんた、死人だらけでしょ。みんな裸でですなぁ。
「おい、こりゃおおごとぞ、とにかく早く出ろ」っちゅうて出てですね、それで見たところ、触ると皮はべらっと、目を開けたまま、もう目を瞑る時間もないわけですね、息の切れるまでに。目を全部開けたままですよ。
その穴を出てからですね、死人を片手拝みですよ、千手・・じゃないけども、こらえて下さいって。涙がでるんですよね、伊藤さん、当時を思えば涙が出るんですよ。ほんとに死んだ人を踏まんとね、歩かれんやったんですよ。「こらえて下さいよ」って踏み越えてね、走ったです。
その間まだ息のある人はですね、もう女であるか男か様相がわからんわけですよ。燃えてしもうて、血を浴びてもう、その形相、「助けてくれ~」とおめきよるとをですね、そらどうもされんその時の情けなさですね、どうしきれるですよ? ほんと、情けなかったです。もう生き地獄ってあれのことでしょうね。