@





       
ENGLISH
運営団体
メロウ伝承館プロジェクトとは?
記録のメニュー
検索
その他のメニュー
ログイン

ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失

長崎の被爆者の声(1) (4枚目のCDの31から40まで)

投稿ツリー


このトピックの投稿一覧へ

kousei

通常 長崎の被爆者の声(1) (4枚目のCDの31から40まで)

msg#
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2006/7/14 10:23
kousei  管理人   投稿数: 2
 
その31 音声を聞く

 花の中に埋まって寝とったんですね、そのときが、夢が。そいでもう、気持ちよく寝とったのが、間もなくしてから、その「近藤くーん」というて、その声がかすかに聞こえたのが覚えていますね。そして、はらぁ誰かが私のそばに来ているね、ま、じっとしててくれればいいのに、というような、そんなふうな気持ちだったのですね。
 
 そして掘り出されるときはもう覚えていないんですね。天井の梁かなんかしらんに体がこう二つに折れたように曲がって下敷きになっとったらしいですね。それで助けられて、またそのときに「ドカーン」と大きな音がしたんですね、爆弾みたいな音が。そしてみんなはもう、足が達者だから全部もう地下の防空壕にはいってしまって、私一人だけ残ったんですよ、誰も入れてくれる人がいなくて。それであの、もうどうしようか、もう自分は助からん、もうこれで最後やろうていうて、もう一生懸命、もう泣くにも泣けんしですね、様子をまぁうかがっていたわけですね。

 で、もう周囲を見るともう真っ赤に染まって燃えていたんですね。それを見て、ほんとこれは助からん、もう最後、自分はもうこれで最後やろうという気持ちでもう、半分諦めてたんですね。そんなにして一所懸命「助けてくれ、助けてくださぁい」と呻きよるところに、あの布団をひっ被って、もう誰か、男の方だったんですね、被ってきてから私に被せてくれたんですね、そのとき・・・


その32 音声を聞く

 もうねぇ、何千人という群集がねぇ、うぉ~っとこう移動しているんですよ、工場の外に向かって。みんな鉛色ですよ。あの、鉛の粉をね、吹き付けたみたいに。そして眼だけが白黒している。

 それでね、みんなもう重傷ですよ、ね。もう胸のところ、背中、頭、首、10センチから20センチくらいね、引き裂かれているんですよ、ざくっと。それでね、「ハッハッハッ」言いながらね、ぼっとぼっとやってね、走るでもない歩くでもない、みんながそうですからね、工場の外に向かって出て行っているんですよ。


  
その33 音声を聞く

 もう、自分たち以外のところからわんさわんさ羊の群れみたいに、もう走って逃げるわけですよ。そいでワシもそれに合流して、ところが全部駅のほうに曲がる列は一人もおらん。全部反対の浦上の方にですね、先頭の曲るごと、どんどこどんどこ行くわけ。

 そしたらもう女の人が、真っ裸。その道に座って、もうなんもかんもないわけ、びっしゃげて《ひしゃげる=つぶれる》しもうて、民家ちゅうのは。ひょっと見たら、ひゃ~と泣きよるわけですね。見たら、おっぱいが千切れてですね、こうしとるわけですよ。

 そして、ウワッと思ったときにはもうどんどんもう行くわけです、並んでいくわけですから、もう、なんかの牛みたいに、何十、何百人並んで行くわけ、生き残った者全部が。

 ほして行ったらですね、ずーっと家のしゃげ《つぶれ》とりましょう、ほして、しゃがれた中からですね、「助けてぇ」という声が聞こえるわけですよ。走りよったら、誰が呻きよるか知らんけど女の人が呻きよることには間違いないんです、女の声ですから。だれ~もそれを留まってあげてくれる人は誰もおらんですね。私もそれどころじゃない、もう全部逃げるから全部逃げるわけですよ・・・


その34 音声を聞く

 中年の男性でしたけどね、転んでて、胸のところに、ちょうど心臓の近くですけれどね、大きなガラス片が刺さってて、それをその、自分でね、つまんで、・・こう震えていましたよね、「これ抜いてくれ、抜いてくれ、助けてくれ、助けてください」と言うわけでね。
 
 言うんですけれど、誰も振り向きもしないでしょ。で、そのガラスをね、あのぅ引き抜こうとしたんですけど、血糊がついてて、相手がガラスですから、すべるんですよ、手ではね。何回やっても駄目ですね。それで、まぁ、腰にぶら下げとった手拭いを抜いてね、そいで手拭いをあてがってやったけど、やっぱり血糊がついているあいだは駄目でね、すべって。

 そいで血糊のついてないほうを、こう、ねぇ、あのぅ、変えていって、ほいですべらないところで、ぐいぐいとこうね、ゆすって、そりゃぁ、まぁ、ものすごく痛がりましたよねぇ。ものすごい悲鳴を上げたです。それでも抜いてくれと言うんです。

 ほんでもう、そりゃぁ、まぁ、私も覚悟を決めましたよね。抜いたです。カクカクカクっとゆすって、ズボッと抜いたところが、ガボッと血が出て。多分ね、今考えてみると心臓を切ったんじゃないかと思うんですがねぇ。血がガボッと出ましたからねぇ。と同時に、気を失っちゃったんです。悪いことをしたなぁと思ってねぇ・・・


その35 音声を聞く

 そして抜け出たんですけど、もぅ方角がまったくわからないわけです。今まであった建物というのがまったく、あのぅ全滅しているでしょ。それといっしょに、あの、九大の生徒ですけどね、「どっか怪我していませんか?」と言うんですよ。その人は、その、私が怪我しているのを気遣ってくれてるわけじゃないんですよね。自分が怪我しているのを、どこか怪我していないか、見てくれという意味なんですよね。

 で見たら、表面、白いワイシャツを着てて、その、全く怪我してないんですよ。それで「いいえ」と言ったらですね、安心して、くるっと後がえって向こうに走っていったんですよ。それを見てびっくりしたんです。背中がないんですよ。もう、えぐりとられてですね。

 もう男と女もまったく区別がつかないしですね。もう血まみれの人間がそれこそ右往左往しているでしょ。それがこう、自分をみんなが、その追いかけて来ているというような、あの夢の中でこう追われるようなですね。

 ところが機銃掃射するんですよ。もうですね、五メートルも行けないんですね。そして、こう、あれ戦闘機ですかね。あの、眼が見えるんですよ。アメリカ兵独特のその眼が、窪んだ眼が見えるのか、サングラスかけているのがあんなに見えるのか、もう、せせら笑うようにですね、もうすぐ下まで下りてくるんですね。

 来たと思ったら、ぱっと、あの、次の防空壕まで、どうかして走って行こうとか思うんですけど、途中でやられてしまう。藁をもすがるで、そこら辺にあったのに、ぱっとつかんでいくのが、しがみつくわけですね。あとで気がついてみたら、死体にしがみついていていたり、ですね。

その36 音声を聞く

 「敵機だぁー」ちゅうことで、もう防空壕の入り口に、もう動ききらんもんだからしゃがみこんでしまったんですよ。しゃがみこんでしまったら、外に立っとる人たちんところ機銃掃射でね、もう、あの敵の、こう眼鏡のあれ《ゴーグル》をはめとるのがよく見えましたよ。こう乗り出して、機銃掃射でダ、ダダダダダーっと。

 後ろの飛行機からはね、なんか写真を撮っているような状態だったのね。「ぎゃぁ」ちゅうてやられる人もおるし、ほらもう、しゃがみこんで、もうこうして頭をおさえるぐらいが関の山で、どうすることもできない。そうして、「ここにおったら危ないから移動してください」ちゅうて。

 道端に電車がね、焦げてね、そして窓にぶら下がっている人を2人見ましたね。それから電車の上がり口のところに重なって死んでいたし、それから死体があちこちにあるから、連れて行ってくれとしゃがみこんでいる人、真っ裸でウロウロしている人も見ましたね。もうそれは血だらけになっている人とか、それはそれはもう、地獄の真ん中に立たされたちゅうような感じでね・・・


その37 音声を聞く

 三菱兵器を無我夢中でみんなの後ろから逃げ出したときは、ちょうど辺りは、なんか黄色いようなね、黒いような黄色いようなねぇ、世の中になっているんですよ。昼なのか夜なのかわからないようなですね、薄暗いような黄色いようなね、あのう、空がですね、あのぅ全体が、そう光がなくてですね、この世の、なんですか、あのぅ、ものとは思えないようなですね状態。

 でね、逃げていく人たちの姿というのは無残で、田んぼの中にですね、女の子がね、ばたんと倒れたんですよ。で、ちょうど私の前を行っていましてね、ニ、三歩行ってバタッと倒れたんですよ。どうするかなと思って駆け寄ったら、自分であの、また立ったんですよ。立ち上がって、そうですね、また何歩か行ったら、もうバタッと倒れたんですね。

 そいであの傍に行ってね、「しっかりしなさい」ってゆすったんですよ。「看護婦さん呼ぶからね」って言ったんですね。そしたら「お母さん」って言って、それから「南無大師遍照金剛」というお題目をニ回くらい聞いたように思います。


その38 音声を聞く

 「水が飲みたい、水が飲みたい」って言うんでね、もう汚い、泥水でしたけどね、その近くから、あの、かぼちゃニつに割れているのを拾ってきて、ね、中身をほじくりだして、そいで、ま、汚い泥水に十字を切ってね、で、その水を汲んでいって飲ませたりしたんですけどね。

 そいでま、私、あのぅクリスチャンですから、あのぅコンタツ《注:ロザリオのこと》を持っていたんですね。クリスチャンたち、じゃない人たちに貸して、それでみんな何人もでその一つのあれを持ちながら一所懸命祈ったりなんかしました。そうするうちに、あのぅシスター、あれですね、あのう童貞さんですけれど、ニ人来てくれたんです。

その39 音声を聞く

 そしたら男の四十台くらいの方でしたかねぇ、あのぅ、座って私たちに、こう拝むんですよ。で、どうしたんだろうと思ったら、「お願いです」って。「この家の下に家内と子供と、五人がね、下敷きになっているから、この屋根を持ち上げてくれませんか」って言うんですよ。で、みんなね、傷だらけでしょ、もう逃げていく者すべてがね。

 で、もういちおう私も握りました、屋根の端の方をね。握ったけど、みんなもう、体が血だらけだから、みんな怪我しているから、それに同情はできなかったのでしょうね。下敷きになっている屋根の上をどんどん逃げていくんですよねぇ。

 そいで私ももう、かわいそうで、かわいそうで、その男の方が手を合わせて、泣いて、「これを持ち上げてください、持ち上げてください」って言うんだけど、もう誰一人、逃げるのがせいいっぱいだったもんで、いつ自分たちがまた敵機が来てやられるかという不安で。

 私もね、もういちばん最後になって、一人になったんですよ。それでなんとか手伝おうと思って、こうしたけれど持ち上げられなかったから「ごめんなさい」と言って、私、先のほうに進んだんですけれど、それが未だに・・・


その40 音声を聞く

 今考えてみるとですね、爆心地のほうからゾロゾロ、ゾロゾロ人が逃げてくるんですよ。で、その逃げてくると言ったってね、駆けてくるんじゃないですよ。トボトボ、トボトボ歩いて来るんです。その歩いて来る様子はね、あのぅ、私は幽霊を見たことはないけど、あの幽霊というのは、ほら、よく前の両方の手をだらっとぶらさげてね、あの、うらめしやという感じで描かれているでしょ。あの幽霊みたいな格好しているんですよ、みんな。

 自分の腕の皮膚をだらっと指先にぶらさげてね。そして前の人に並んでトボトボ、トボトボと歩いてくるんです。私がね、「私の友だちがここの屋根の下敷きになってね、屋根が重くてね、一人の力では動かしきりませんから、どうか立ち止まって力を貸してください」と私はもう頭をペコペコ下げて頼んでみるんですけど、誰も止まってくれないんですよ。

 なんかもう放心状態というのかな、私がどんなに頼んでも止まってくれないんです。

  条件検索へ