Re: 新京脱出行
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- 新京脱出行 (あんみつ姫, 2007/11/29 16:32)
あんみつ姫
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新京脱出行(一) -2
満鉄《まんてつ=南満州鉄道株式会社(当時国策として日本が施設していた)》新京本社調査部に新京商業時代の恩師安達正栄先生が居られたので何とか働き口をお願いしたところ、新京駅構内運転所での通訳という仕事を見つけて下さった。通訳の中には20期の大西(現小林)栄さんもおられた。
ある夜勤のとき、奉天北方で列車の追突事故が起きた。追突した方は機関車にまで鈴なりの状態だったらしく大勢の死傷が出た。即刻、山口駅長以下関係者が運転所に集められた。声を荒げて喚き散らすソ連人駅長。
日本人側は寂として声なし。私の横に並んでいた駅員が二人 「偉そうに威張りやがって……」とささやいた途端、その横にいたソ連女性(小柄でなかなかの美人)が独言のようにしかも日本語で「あんな事言ってる、いいのか知ら」と。私は慌ててこの二人に注意した。こわい。どこに、どんな形で探りを入れているか、全く油断がならない。
数日後の朝、出勤して運転所へ行こうとしたら下番《かばん=勤務を終えた人》の人が来て、今運転所へ行ったら危ない。夜中に、駅長さんと大西さんが引張られたと言う。直ぐさま駅舎二階にある庶務課へ逃れた。ここには新京商業時代の級友近藤智冶君が勤めていたからだ。事情を話して夕方までかくまってもらい、貴賓室通路から脱出させて貰った。友の有難味をしみじみ味わった次第。
運転所勤務中、貴任感あふれるソ連人運転司令の言動を一つ。彼は軍人の位はわずか軍曹《ぐんそう=軍隊の階級で下士官の位置にあり少佐或は大尉よりも下の階級》。北上してくる列車の列車長はほとんどが少佐、大尉クラス。その誰もが自分の列車を優先させようと脅したり、すかしたり、あの手、この事を使ってこの軍曹に迫ってくる。
が、この軍曹、頑《がん=かたくなに》として順番を変えようとしない。自分は駅長からこの仕事を任されている。自分が最高の決定権者であり、あなた達の言い分は受け付けない、と突っ放して譲らない。
列車長達はしぶしぶ引き下がっていったが、日本人だったらどうだろうか。肩書、学閥、コネが物を言う日本人社会では、このような頑固なまでの信念の持ち主は、かえって偏屈者《へんくつもの=性質がねじけている》扱いされるのではないだろうか。
満鉄《まんてつ=南満州鉄道株式会社(当時国策として日本が施設していた)》新京本社調査部に新京商業時代の恩師安達正栄先生が居られたので何とか働き口をお願いしたところ、新京駅構内運転所での通訳という仕事を見つけて下さった。通訳の中には20期の大西(現小林)栄さんもおられた。
ある夜勤のとき、奉天北方で列車の追突事故が起きた。追突した方は機関車にまで鈴なりの状態だったらしく大勢の死傷が出た。即刻、山口駅長以下関係者が運転所に集められた。声を荒げて喚き散らすソ連人駅長。
日本人側は寂として声なし。私の横に並んでいた駅員が二人 「偉そうに威張りやがって……」とささやいた途端、その横にいたソ連女性(小柄でなかなかの美人)が独言のようにしかも日本語で「あんな事言ってる、いいのか知ら」と。私は慌ててこの二人に注意した。こわい。どこに、どんな形で探りを入れているか、全く油断がならない。
数日後の朝、出勤して運転所へ行こうとしたら下番《かばん=勤務を終えた人》の人が来て、今運転所へ行ったら危ない。夜中に、駅長さんと大西さんが引張られたと言う。直ぐさま駅舎二階にある庶務課へ逃れた。ここには新京商業時代の級友近藤智冶君が勤めていたからだ。事情を話して夕方までかくまってもらい、貴賓室通路から脱出させて貰った。友の有難味をしみじみ味わった次第。
運転所勤務中、貴任感あふれるソ連人運転司令の言動を一つ。彼は軍人の位はわずか軍曹《ぐんそう=軍隊の階級で下士官の位置にあり少佐或は大尉よりも下の階級》。北上してくる列車の列車長はほとんどが少佐、大尉クラス。その誰もが自分の列車を優先させようと脅したり、すかしたり、あの手、この事を使ってこの軍曹に迫ってくる。
が、この軍曹、頑《がん=かたくなに》として順番を変えようとしない。自分は駅長からこの仕事を任されている。自分が最高の決定権者であり、あなた達の言い分は受け付けない、と突っ放して譲らない。
列車長達はしぶしぶ引き下がっていったが、日本人だったらどうだろうか。肩書、学閥、コネが物を言う日本人社会では、このような頑固なまでの信念の持ち主は、かえって偏屈者《へんくつもの=性質がねじけている》扱いされるのではないだろうか。
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あんみつ姫