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Re: 新京脱出行

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あんみつ姫

通常 Re: 新京脱出行

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2007/11/29 16:44
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
新京脱出行(二) -3

 そのうちに引き揚げ開始。われわれの梅ケ枝町地域は六十七か六十八団だったと思う。母の体力は回復には未だほど遠い。しかし、この機会を逃がすことは出来ない。持ち物は各自リュック一個に制限された。何としても母の分も運ばねばならない。

そこで工夫したのが、今でいう大型トランクのキャスターのようなもの。幅十センチ、長さ四十センチくらいの板ぎれ二枚を十文字に組み合わせて、それぞれ二個あて戸車を先端に打ちつけたものにリュックをのせ、紐で引っ張っていこうという次第。

南新京から無蓋貨車《むがいかしゃ=天井のないむき出しの貨車》に乗ったのだが、外廻りにロープを張り廻らし、その内側に人、荷物は真ん中に積んだ。こうしないと列車の停止中は勿論、徐行中でも手釣などを使って現地人に掠奪されるからだ。このように用心していても被害があったのだから、弱り目にタタリ目という外はない。

こうした光景は多くの方々の証言、書き物があるので読まれた方も多いと思う。どうにか金州《きんしゅう=遼東半島の先端のある町》着。ここで徹底した所持品検査が行われた。われわれの引き揚げ団は特に目をつけられていたらしい。いよいよ乗船港のコロ島《中国読み、フールタオ=遼東半島の先端、渤海湾の北にある港で島ではない(満州に散らばっていた日本人の引き揚げした港》着。ところがここで難題が生じた。

 「各団から独身男子を一名ずつ使役に出せ。給与は厚遇するが、期間は未定」とのこと。わが団では独身男子は私一人(独身者同士が日本上陸まで夫婦の形態をとっている者もいた)だ。が、病み上りの母を抱えている。どう切り抜けるか苦慮《くりょ=困り果てている》していると隣の団から救いの神が現れた。

「どうせ帰っても身寄りもない自分だ。君には大病を患ったお母さんが居る。代わってあげよう」と。正に地獄に仏とはこのことか。でもその後、その方がどうなったか、何時頃まで徴用されていたのか手掛かりも何もない。今こうして曲がりなりにも一応平和に暮らしておれるのも、その方のおかげと折に触れ今年(1989年)八十八歳になる母と話している。

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あんみつ姫

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