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Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月

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あんみつ姫

通常 Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2008/10/26 11:40
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
昭和十六年六月 琿春へ勤労奉仕

 六月一日(日) 曇後雨 暖
 朝から曇り空、遂に昼前に雨になる。
 昼食後十三号室で「汁粉」会の余りがあるから食べに来いと呼び に来た。「汁粉(シルコ)」でなくて「善哉(ゼンザイ)」。餅でなくて小麦粉の團子。丼二杯。満腹。

 腹ごなしに二時頃から「登亭和」百貨店へ衛生展を見に行く。女性の身体を詳しく説明した図が澤山あった。恥ずかしい。

 六月二日(月) 晴 暖
 朝からどうにも眠くて仕方がない。
 朝礼にて院長曰く「院長になってもう一年になる。其の間皆に対して叱責一つしなかった。先日帽子をかむれと言ったのに未だかむってない者がいる。残念な事だ。院長の命令に服さない者は民族の先頭に立つ事が出来ない」と。

 国民道徳の時間に院長曰く「日本民族は北方に伸びる可きである。之を忘れると民族は自滅する。我等学院生は満州国の国境外で活動するのだ。国境を北に越え、西に越えて日本民族の先覚者たれ」と。

 六月三日(火) 曇後雨 涼し
 昨夜、夜ふかししたので朝の点呼に出ず。
 放課後身体検査あり。結膜炎だと。馬鹿にしている。併し之も病気の内。肺病は免かれた。胸部疾患の者相当いたが、あまり気にかけている様子は見えない。

 掲示板に提示あり。「外務省書記生に採用希望の者は申し出よ」と。この件に付き室で相当議論あり。今更外務省に入る位なら内地の高等学校、東京帝大へでも行った方が早道ではないか。

 嘉永六年本日ペルリ浦賀に来る。大正九年本日我軍尼港《注1》占領とある。外務省の件と関係があるのか。

 六月四日(水) 雨曇 暖
 朝から雨降り、道は大いに泥濘《ぬかる》む。
 休操の時間に身体検査あり。身長一米五七。胸囲八十八。体重五十七キロ。視力十二。学校に納める金。プリント代一円。共済会費一円。アルバム代一円五十銭。柔道部費三円。寮費五十銭。

 六月五日(木) 雨 暖
 本日から軍隊宿泊。朝から準備、細雨の中を泥濘を踏んで孔子廟の近くにある歩兵聯隊《注2》へ向かう。昼食後、機関銃を用いる教練。教官として少尉が二人張り切っている。

後、部隊内の風紀衛兵所《注3
、聯隊砲、速射砲等を見学。

夜は夜間演習。細雨の中を散々這廻される。幹侯の歩哨《注4
の動作を見学。吾々が見ているためか近付くと照れ臭さそうに見えた。

 六月六日(金) 晴 暖而寒
 朝五時三十分起床。兵隊と一緒に朝の点呼。体操。
 午前中、分隊の陣地攻撃、午後、大砲、機関銃の最終弾に膚接しての突撃演習。夜は小哨《注5》の動作。急に温度が下り寒い。
 早く寮に帰りたい。

 六月七日(土) 晴 暖
 部隊宿舎最終日。朝から各個戦斗教練、聯隊の作業場で行う。露崎が頭から濠の中に転り込んで目を廻す。昼食は代用食。大豆飯と支邦素麺。結構美味しい。当たり前だ。腹は充分すぎる位空になっている。

 午後練兵場で小隊の攻撃演習、匍匐《ほふく=注6》前進、ちょつと引鉄《ひきがね》を長く引いていると転機注7》三十発。弾丸はもうない。
 学校へ帰り、入浴、三日間の垢を落として帰寮。

 六月八日(日) 晴 暑
 学校へ行く。空教室で春日、深坂と試験勉強。三人で煎餅、生菓子を充分に食べる。午後一緒に「光」 へ行く休み。「池田」 へ行く。
三年生は試験が終っている。
 昨夜二年生は多数の者が酔って帰り荒れまはっていた。

 六月九日(月) 晴 暑
 朝から。一日中暑かった。夜、遅くまで皆勉強している。今日は旧暦の五月十五日、満月!!夜半の月は煌々として照らし、地上は霜が降った様に白い。

 西暦一六七二年本日、ロシアの偉大なる開明皇帝ピヨートルが生まれた。

 六月十日(火) 晴 暖
 試験終わる。会話散々。日本語も満足でないのに何でロシヤ語が喋れるか。
 精進落しに街へ出る。

注1:黒竜江河口から20キロの地点にある(ニコライエフスク)
注2:一般的にはどこの国でも歩兵大隊を基間に幹に司令部,火力支援、雑務を行なう中隊を組み合わせて編成されている
注3:弾薬庫の出入り監視に当る兵隊
注4:歩哨、警戒、監視の任に当る兵士
注5:軍隊がある場所に留まる時、警戒を任務とする部隊のひとつ
注6;腹ばいになって 進む
注7:転換の機会、此処では連続して

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あんみつ姫

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