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Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月

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あんみつ姫

通常 Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2008/10/26 11:52
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
関特演スタート
七月一日(火) 晴後雨 涼
 午前中、道路修築。午后雨天の為休息。作業で肩が痛い。久し振りに風呂に入ると背中がビリビリ痛かった。

 七月二日(水) 曇 涼
 朝から雨が降ることを期待したが、降らない。がっかりして「モッコ」を担ぐ。

 県公署の開拓課長、「キャラメル」、煙草持参で慰問に来る。堂々たる体格。話が面白い。皆を集めて、
 「簡単に言えば青年は誰でも異性に近づくことを望む。併し一層接近すると臆病になる。そして心にもない動作をする。最初、女性は男性より臆病であり、羞恥心が強い。併し後には之が反対になる。之より判ずれば女は男より一般的に図々しいのか?一度頼り傾けばどっと潮のように流れてしまうのか?反対に男が臆病で、自信がないのか?」
 こんなことを話して、とっとと帰ってしまった。満洲には豪傑がおるわ。

 七月三日(木) 曇後晴 暖
 午前、午後共作業あり。午前は雨の降るのを期待し、午後は何かの拍子で作業中止にならないかと期待する。そんな期待はする方がずるい。

 福永が腹をこはして休んでいる。心配だ。
 軍属が「ハイヤー」を福昌公司に乗り着けて来て威張っている。
 作業には身が入らない。

獨ソ戦は如何に。赤軍は獨逸國防軍の機械化部隊と空軍に散々叩かれながら果てしない後退を続けている。ソ聯にも勝たしたくないが、ドイツにも圧倒的には勝たしたくない。

 七月四日(金) 晴 涼
 今日こそ作業は晝から「没有(メイユウ)《注1》」と思っていたら一日中あった。皆ブウブウ言ひながら作業をする。

 七月五日(土) 晴 暖
 作業午前中のみ。第一期の作業本日終了。午後清らかな細流(セセラギ)に浴して涼しい気分に浸る。室内検査、教練あり。
 学監先生日く「教練をやって徹する所、禅の奥まで行かなければならない」と。人殺しの訓練が最後に到達する所が禅の奥義か?

 今日、お前は強情だといはれた。理由など知っても何もならないから聞かない。俺は素直で、すごく気の弱い人間なんだ。だから常に鎧を纏っているんだ。俺だって心も休も強くなりたい。それは自信を持つ事か。自信とは何なんだ。解った様で解らない。

 此處をお前達他国民は越えることは出来ないんだと厳として聳える国境の山の様になりたい。
 晋宋齋梁唐代間    高僧求法離長安
 去人成百歸無十    後者不知前者難
 道遠草天唯令凍    沙河遮日力疲殫
 後賢如未請斯旨    往々将経容易看

七月六日(日) 曇 涼
 起床六時。日曜日作業なし。各組対抗野球大会あり。一年生乙組優勝す。午後余興大会有り。珍芸続出快笑の内に終る。

 七月七日(月) 曇 涼
 第二期の作業始まる。晝飯は「カタパン」《注2》と「善哉(ゼンザイ)」。こんなものと思ったが、腹の内で膨れたのか満腹す。

 七月八日(火) 雨 涼
 朝から「ボソボソ」雨が降っているのに作業。午後第一六四部隊長来る。院長から激励の電報来る。体調は良いのに仕事をしたくない。作業は丁度中間日で、前半が今日終わり、明日から後半に入る。

 七月九日(水) 雨 涼
 午前中作業。午後休息。細雨がこんなにシトシトと降っている中で働けるか。一週間もすれば病気になるぞ。

注1:「メイユウ」で否定をあらわす
注2:硬いパン、ビスケットなのだが その硬さは尋常でない

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あんみつ姫

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