Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月
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成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月 (あんみつ姫, 2008/10/26 11:27)
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Re: 成瀬孫仁日記(二) 昭和十六年六月~七月 (あんみつ姫, 2008/10/26 11:40)
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あんみつ姫
居住地: メロウ倶楽部
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六月十一日(水) 晴 暑
朝点呼にも出ず七時過ぎまで寝てしまう。
放課後、春日、鈴木達と柔道部先輩に送る慰問袋《注1》の品々を買いに「登喜和」「丸商」を廻る。
日誌帳に昭和十三年本日、支那軍が日本軍の進撃を阻むため、黄河堤防を破壊したとある。
六月十二日(木) 晴 暖
又もや昨夜蒲団を落とす。毎晩の事なり。此の頃暑いせいか。明日甲組のクラス会。会費一円集める。残り財布の内に全財産六十銭。
六月十三日(金) 晴 暑
戦斗帽紛失する。困ったね。暫くカンカン帽の厄介になるか。一銭残らず財布の底をはたいて菓子を買い、居た者数名、校庭で寝転んで食べる。底をはたいても金六十銭。
帰寮の途中、代用官舎の裏で寝転んでメツチェンを眺める。テニスをしていた可愛子チャンが逃げた。洋子さん、京子さん、房子さん、皆可愛い小学校五年生。
満人の姑娘に声を掛ける。
「うるさいな大学生、そんなのあるか」と日本語で叱られた。
散髪代もなくなったので寮で春日に散髪して貰う。春日は上手(ウマイ)よ。
併し蚊に刺されるのには閉口した。
六月十四日(土) 晴 暑
午後春日と散歩。池田屋に寄る。学校に帰る。校庭でクラス会あり。一人当りビール二本、忽ちなくなる。帰寮す。室会あり。皆大いに踊る。晩ストーム《注2》旺んなり。
六月十六日(日) 晴 暑
教練試験あり。
日ソ通商条約(日ソ通商貿易の基礎となる通商ならびに貿易及び支払協定)が成立する。日ソ貿易、日ソ交渉も軌道に乗るのか、我等の活動の新天地が開けてくるのか、ロシヤ学を目的として学んでいる学院生としては喜ぶべき事である。
深坂に「アツカマシイ」と言われる。何が何だか解らないが、理由は聞く必要がない。
六月十七日(火) 晴 暑
数日来無理をして来たので大変疲れている。経済の時間覚悟して眠る。頭がスーツとした。一年生がカンカン帽を貰う。皆はしゃいでいる。
伊津野、長い間のチフスも癒り退院する。目出度い。
三年生河野亮さん退学となる。頭の良い人を惜しいことだと坂崎さんが残念がっていた。
六月二十日(金) 雨晴曇 涼
朝から雨、昼前に晴れる。午後又雲が出る。試験は毎日続いているが、一喜一憂の気持ちが段々薄らいで行く。大人になって行っているのか。図太くなって行っているのか。ひょっとすると諦めているのかも知れない。
二十日間あまり預けていた冬の制服を質屋へ出しに行く。一円也を要す(1)。
中台先生が「シューバ」等毛皮類を日本人は扱い慣れてないから夏など使用してない時は質屋に預けるのが品質保全のために良いのだなどとおっしゃっていられたが、こちらは品質保全のためではない。
六月二十一日(土)晴 暖
試験終りぬ。帰寮、荷物の整理をして再び登校。柔道部のスキヤキ会あり。豚肉のスキヤキむごくってどうにもならない。満洲の豚の精力に圧倒された形である。
家庭教師に行く。九時前に終わり、春日との約束に従い街に出て、キタイスカヤ、スンガリーを訪ねる。約束の場所にいない。帰ってみると他に急用が出来たのか「成瀬すまん」と書置があった。
帰途、素晴らしい姑娘に会う。又、バスの中で可愛いお嬢さんのような、結婚しているらしい人に会う。恋をするなら前の様な姑娘、結婚するなら後の様な女(ヒト)。
帰ってみると室では離散会の最中。
(注)
(1)六月二十日 質屋へ冬の制服を質草に入れた事は覚えてない。
注1:戦地にある出征兵士などを慰め、その不便をなくするため、中に日用品などを入れて 送った袋
注2;戦前日本の旧制高等学校、や大学予科、旧制専門学校などの学生寮において 学生が集団で行なう蛮行のこと
朝点呼にも出ず七時過ぎまで寝てしまう。
放課後、春日、鈴木達と柔道部先輩に送る慰問袋《注1》の品々を買いに「登喜和」「丸商」を廻る。
日誌帳に昭和十三年本日、支那軍が日本軍の進撃を阻むため、黄河堤防を破壊したとある。
六月十二日(木) 晴 暖
又もや昨夜蒲団を落とす。毎晩の事なり。此の頃暑いせいか。明日甲組のクラス会。会費一円集める。残り財布の内に全財産六十銭。
六月十三日(金) 晴 暑
戦斗帽紛失する。困ったね。暫くカンカン帽の厄介になるか。一銭残らず財布の底をはたいて菓子を買い、居た者数名、校庭で寝転んで食べる。底をはたいても金六十銭。
帰寮の途中、代用官舎の裏で寝転んでメツチェンを眺める。テニスをしていた可愛子チャンが逃げた。洋子さん、京子さん、房子さん、皆可愛い小学校五年生。
満人の姑娘に声を掛ける。
「うるさいな大学生、そんなのあるか」と日本語で叱られた。
散髪代もなくなったので寮で春日に散髪して貰う。春日は上手(ウマイ)よ。
併し蚊に刺されるのには閉口した。
六月十四日(土) 晴 暑
午後春日と散歩。池田屋に寄る。学校に帰る。校庭でクラス会あり。一人当りビール二本、忽ちなくなる。帰寮す。室会あり。皆大いに踊る。晩ストーム《注2》旺んなり。
六月十六日(日) 晴 暑
教練試験あり。
日ソ通商条約(日ソ通商貿易の基礎となる通商ならびに貿易及び支払協定)が成立する。日ソ貿易、日ソ交渉も軌道に乗るのか、我等の活動の新天地が開けてくるのか、ロシヤ学を目的として学んでいる学院生としては喜ぶべき事である。
深坂に「アツカマシイ」と言われる。何が何だか解らないが、理由は聞く必要がない。
六月十七日(火) 晴 暑
数日来無理をして来たので大変疲れている。経済の時間覚悟して眠る。頭がスーツとした。一年生がカンカン帽を貰う。皆はしゃいでいる。
伊津野、長い間のチフスも癒り退院する。目出度い。
三年生河野亮さん退学となる。頭の良い人を惜しいことだと坂崎さんが残念がっていた。
六月二十日(金) 雨晴曇 涼
朝から雨、昼前に晴れる。午後又雲が出る。試験は毎日続いているが、一喜一憂の気持ちが段々薄らいで行く。大人になって行っているのか。図太くなって行っているのか。ひょっとすると諦めているのかも知れない。
二十日間あまり預けていた冬の制服を質屋へ出しに行く。一円也を要す(1)。
中台先生が「シューバ」等毛皮類を日本人は扱い慣れてないから夏など使用してない時は質屋に預けるのが品質保全のために良いのだなどとおっしゃっていられたが、こちらは品質保全のためではない。
六月二十一日(土)晴 暖
試験終りぬ。帰寮、荷物の整理をして再び登校。柔道部のスキヤキ会あり。豚肉のスキヤキむごくってどうにもならない。満洲の豚の精力に圧倒された形である。
家庭教師に行く。九時前に終わり、春日との約束に従い街に出て、キタイスカヤ、スンガリーを訪ねる。約束の場所にいない。帰ってみると他に急用が出来たのか「成瀬すまん」と書置があった。
帰途、素晴らしい姑娘に会う。又、バスの中で可愛いお嬢さんのような、結婚しているらしい人に会う。恋をするなら前の様な姑娘、結婚するなら後の様な女(ヒト)。
帰ってみると室では離散会の最中。
(注)
(1)六月二十日 質屋へ冬の制服を質草に入れた事は覚えてない。
注1:戦地にある出征兵士などを慰め、その不便をなくするため、中に日用品などを入れて 送った袋
注2;戦前日本の旧制高等学校、や大学予科、旧制専門学校などの学生寮において 学生が集団で行なう蛮行のこと
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