そもそもの始まりは、6チャンネルかどこかのテレビ番組で、チンクエテッレの特集をみて、ぞっこん惚れ込んだことがキッカケだった。それまではサルデーニャあたりに焦点を絞っていたが、これをみて急に気が変わった。あの番組を見たら、是が非でもあの、陽光輝くリグーリア州へ行ってみたくなったのだ。
今回の旅行では、あらかじめガイド(ブック)やインターネットで調べて、現地のホテルにアクセスしたが、なかなか思うに任せず、取れたのはニースのホテル・マセナ、デイヴァ・マリーナのホテル・クレリア、それにもう一軒という、あまり芳しくない成績だった。もともと出発日に制約があったし、選んだ場所がいずれも人気の高い場所だったせいもあるだろう。
アクセスの際、満員で断られたけれど、好感の持てたホテルが一つあった。それはモンテロッソ(チンクエテッレ村の一つ)のホテル・パスクアーレだ。メールに「丁度その頃は、当館は満杯ですが、他のホテルをご紹介しましょう」とあり、その後に、同じ村の同業者だけでなく、いくつもの町村のホテルの電話や、ファックスの番号を書いてくれたことだ(その数は11にも上る)。さらに文末に「それでもダメなら、モンテロッソヘ着かれた時にでも、ご一報賜れば、キャンセル分をお回しできるかもしれません。」と書き添えがあったのにもジンと来た。
寄り道でまくらがチョッと長くなったが、一行はフランス国鉄のニース駅で、ジェノヴァ経由ラ・スペッツィア行きの通し切符を買った。ラ・スペッツィアまで買ったのには訳がある。帰りの空港がまたニースになるので、一番遠くまで行っておいて、そこから段々に戻ってくるのが一番と判断したためだ。
今までの旅は、名所旧跡の見物が主だったが、こたびは海の景色を楽しむのが大目的。列車へ乗り込むが早いか、早速海の見える、眺めのいい窓を占領した。幸いあちらの電車は、いつもがら空きなので、席取りで苦労することはない。
このところ、天気のいいのが何より、どこまでも蒼い海、海岸に張り出すような町の佇まいは、心行くまで一行の目を楽しませてくれた。この季節、線路わきに咲く、紫のブーゲンヴィリアや黄色のジネストラは、とてもなつかしく、いつも五月だった今までのイタリア旅行の、あれこれを思い出させてくれた(つづく)