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輸送船勝鬨丸の最後5 高崎 廣

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通常 輸送船勝鬨丸の最後5 高崎 廣

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2011/8/13 8:15
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 乗組船員の話では制海空権とも殆どなく電波探知器もマニラで米軍のを拿捕して研究して作ったものがあるが性能が悪く余り遠くまでは届かない。どう考えても勝ち目はないとの絶望的な意見を聞かされる。

 台湾海峡に入った夜、中国に向かう米軍機の空襲を受け僚船に命中。台湾基隆港に入港するも直ちに出港する。砂糖の支給を受ける。遺骨は救命ボートと一緒で最上甲板に安置されている。雲が深くたれ込めて時折雨が落ちてくる。突然頭上に爆音がとどろき、隣の船に爆弾が命中燃え上がる。

 本船もねらわれて居るらしい。皆物陰にかくれる爆撃されればどうにもならない。遺骨を救命ボートの中に移す。声かけて基隆で積み込んだ砂糖の袋を何んとかボートの中に移そうとするも皆気が動転して居るのかウロウロして居る丈で雑嚢に何かを入れたり出したり、立ったり座ったり意味のない行動をして居る。

 そして「こんな場合に砂糖とは何んだ」と怒る「こんな場合だからこそ遺骨が助かれば貴重な砂糖も助かるのだから積み込むのを手伝え」と云い返す。どうやら敵機は行ってしまったらしい。

 九州の燈火が見えて来た。明日は内地に着くかと思うと眠られずウトウトとすると物凄い爆発音と共に海岸寄りに走って居た駆潜艇が火柱となりそれがさっと引くと後には何も残らない。内地の海岸が見えて居るのに何んとも残念な事だ。

 シンガポールを出港そしてマニラからの船団と合流二十二杯の大船団は僅かに二隻となり門司港に入る。白木の箱を胸に、岸壁に船がガツンと着くやっと帰って来たとの実感が湧く。

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