日ソ海空戦秘録 菊池金雄 8
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日ソ海空戦秘録 菊池金雄 (編集者, 2013/1/24 8:54)
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編集者
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あとがき
この秘録は、平成十四年に上梓した拙著「硝煙の海」と、事後インターネットなどで入手した情報の要約で、当時大同海運㈱には自社船の戦時記録は単なる一覧表だけのため、向日丸と関わった海防艦の艦名なども判らず、様々探索の結果、第八十二号艦と判明。しかも森武艦長が、かつて私が勤めた海上保安庁の要職歴の方とのことで、八方追跡してみましたが残念ながら平成四年に物故なされて対面が叶いませんでした。ところが同艦長の手記「葉隠れに生きる」を同艦生き残りの横見さんから拝借して、拙著の一部を補完することができたことは感謝に堪えません。
向日丸がなぜ再三雷撃されながら被弾しなかったのか疑問でしたが、那和少尉や本船甲板部員ならびに海防艦生存将兵の証言によると、敵機の魚雷は船底を素通りして陸岸で爆発したとのことで、これは積荷作業半ばで脱出したために、本船の喫水が浅かったのが幸いしたためと推察されます。
特記したいことは、粗製乱造戦標船のエンジントラブルには辟易たるものがあったことです。
舞鶴入港直前、新造の軽巡洋艦(酒匂)が左方岸辺に偽装して隠れていた現場を目撃していますが、命からがら帰還した商船側としては疑念少なからざるものがありました。
後年、親友に同艦乗員がいたので事情を聞き取ったところ、燃料不足で戦列を離れ、舞鶴湾佐波賀に接岸して、艦全体をネットで覆い、その上に山から成木を伐採してカムフラージしていて、幸い敵機に発見されなかったとのことでした。
また、向日丸を追い越した辰春丸触雷現場にも遭遇。辰春丸は在来の優秀船で速力が速やかったので触雷に遭ったものと考えられます。
若し向日丸が先なら・・・と思うと、最後まで強運の船であったことを記録にとどめたいと思います。
本手記の所々でふれていますが、当時、各港湾周辺は米軍投下機雷が散在していて、薄氷の海そのもので、舞鶴湾周辺でも、入港船は伊根沖で機雷掃海待ちを余儀なくしていました。
実は、事後、羅津で乗組員一名が本船に乗り遅れていたことが判明。私が向日丸在任中本人から聞き取った要旨は「避難民と一緒に陸路南鮮方向へ必死に徒歩で逃げ、一度元山でソ連軍に捕まったが、収容所裏門から首尾よく脱走して釜山経由で帰国できた。」とのことでした。
追記
①本稿に貴重な証言をいただいた次の船友が相次ぎ物故なされたことは痛恨に耐えず、謹んでご冥福を念じます。
元陸軍通信連絡将校 那和正夫陸軍少尉 平成十六年十二月十三日
元甲板員 野口留蔵 平成十九年二月二十日
元機関員 須永政司 平成二十年三月
元三席通信士 小野明 平成二十年十一月十五日
②この向日丸関係の戦記は上記文庫本の第六章に収録され、平成二十一年一月発売されます。
土井全二郎著「戦時船員たちの墓場」 出版社;光人社NF文庫
引用WEB「硝煙の海」URL http://www.geocities.jp/kaneojp/ (戦没船・脱出船戦記を含む)
参考資料WEB「朝鮮北東岸海域戦没商船一覧
http://www.geocities.jp/kaneojp/03/032410.html