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Re: 終戦と引き揚げ、、北朝鮮編、、野崎 博氏の手記

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団子

通常 Re: 終戦と引き揚げ、、北朝鮮編、、野崎 博氏の手記

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2005/8/8 17:23
団子  半人前   投稿数: 22
(三)
8月の終わり現地召集された兵隊が召集解除になり帰ってきた。ソ連軍は日本兵の名簿数より実数が不足している、即時補充するよう要求した。やむを得ず再召集をかけた。正直に出頭した人は兵隊としてシベリヤに送られた。その為母子家庭が増え、男手の無い家庭は苦難が増えた。

警察官《=日本人の》は武装解除され逮捕、派出所に保安隊《=占領軍の》が入った。ぐでんぐでんに酔った日本のオジサンが、日本刀を持ってわめきながら派出所にはいり、保安隊に取り押さえられ殴られるのを見た。間抜けなオッサンだ。

8月28日、私のところから6Kはなれた火薬工場の方角で銃声がして、明け方まで断続的に聞こえた。朝になり、武装した日本人が火薬工場を襲撃して銃撃戦になったと噂《うわさ》が流れた。この時期、工場が少数で破壊する事は意味がない。それにしても銃声は少ない。デッチあげで日本人を弾圧するつもりだ。と言う意見が大人たちの間に流れ警戒する声が多かった。

その心配は当たった。朝鮮側の発表によると「日本人は火薬工場を爆破しょうとして侵入し、警備員を射殺交戦し、犯人は独身寮に逃げ込んだ」、保安隊、建国青年隊《=占領軍の》は盛んに発砲して独身寮の男子社員を逮捕《たいほ》しひどい拷問《ごうもん》にかけた。結果は明らかだった。朝鮮側の主張通り工場幹部の計画に従って独身社員が実行に当たる事になっていたと白状させられた。《=拷問によるでっち上げ事件》

ついで工場近くを家宅捜索した結果、拳銃《けんじゅう》が2丁出てきた。拳銃は《社員が》日本兵から貰《もら》ったものだった。工場幹部と拳銃所持の男は逮捕検挙されてソ連軍に渡された。取り調べた後、釈放された。有罪ならシべりヤ送りになる。計画も準備も無かったのである。

この事件は朝鮮側によって劇化され好評をはくした。敗戦によって工場を奪われた工場幹部が癪《しやく》にさわって工場を破壊する陰謀を企《くわだ》てた。一人の目覚めた朝鮮青年の献身的行為により未然に防がれ、犯人は保安隊に逮捕されたという筋だった。劇化されて後世の人が事実だと信じ込むのが怖い。

金 史良、昭和14年上半期芥川賞候補になった作家が、敗戦後平壌に帰国して「動員作家の手記」を書いている。人民政府の仕事で感鏡道をルポした作品である。
(略)日本人どもは、わが産業建設の心臓である興南工場を爆破しようと銃を取って押し寄せてきた。興南の労働者は血を流してこれを防いだ。(略)、、、(金史良全集)

歴史的事実として一人歩きするなら、不幸である。北朝鮮の公式記録はそうなっているのだ。
      、、、、、、、、、、、、、、、、つづく、、、 

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