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Re: あの戦争の御話(6) (変蝙林(1917-))

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変蝠林

通常 Re: あの戦争の御話(6) (変蝙林(1917-))

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2004/2/22 0:52
変蝠林  半人前 居住地: 横浜市 オオクラヤマ  投稿数: 22
 渓谷《けいこく》から山道に掛かると樹木は段々少なくなり黄土の丘陵が単調に遠く続く。鉄兜《てつかぶと》は背嚢《はいのう=背負いかばん》の後にが一般だが重いので頭上に載せる。三八銃《旧日本陸軍の小銃》も結構な重さだ。漸く丘の背を越えたかと思うと前方に又同じ様な丘が次々に現れ切りがない。夕刻山中の部落に着くと住民は逃げて誰も居ない。部落と言っても家は無い。

 黄土の崖《がけ》を彫《ほ》り抜いた穴蔵と思えば良い。然《し》かし考えれば至極《しごく=極めて》合理的である。温突《おんどる=暖房装置》も設備されてる。何回目かの討伐行で大失敗がある。氷点に近い夜の事。馬を一匹屠《と》して《=殺して》各隊が勝手に切り取って来る。暗闇の中に有った大鍋で煮た。不味《まず》くて食えた物でない。温突に寝たら疲れで熟睡。翌朝目覚めたら高熱だ。
                                    
 背中は数十度、胸部は氷点に近いのだから急性肺炎は当然である。出発っ!。ガンガンの頭で隊列に付いての行軍は正に夢中。サトコツ サトコツと娘の名を唱《とな》えての一歩一歩は今思い出しても良くぞであった。麓《ふもと》の部落に辿《たど》り着き一晩寝たら治った。あの経験が今活きてる。軍隊って不思議な世界ではある。

 珍なる話が今一つ有る。或る討伐行で偵察《ていさつ》に出たら向こうの山稜《さんりょう=山と岡》に人影が! 将校が撃《う》てと言う。嫌々乍ら《いやいやながら》一応狙《ねら》って一発。軍隊経験者はご存じだが実弾射撃の後の銃口掃除は実に面倒だ。弾丸はあらぬ方へ。殺さずに済んでホッ。そして之《これ》が従軍中の只《ただ》一発。こんな兵隊は大戦中で私一人切りだろうと思う。
                                    
 山西の山歩き中に一寸《ちょっと》した戦闘も有ったが蒼《あお》く深い空のみが懐かしく記憶に。
                                    
                           変蝠林(1917-)。

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変蝠林

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