地震などの天災を語る 
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[No.158] キリン登場 投稿者:男爵  投稿日:2013/05/26(Sun) 21:19
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船橋 洋一・著
 カウントダウン・メルトダウン 下巻 (2012.12)

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もっと優れもののキリンが、まるで出番を待っていたかのように
いいタイミングで登場した。

17日の真夜中に公明党の遠山衆議院議員に、支援者から電話がかかってきた。
「ドイツのプツマイスター社の製造している生コン圧送車が、福島第一原発の使用済み核燃料プールの冷却に役に立ちそうです」
「この生コン圧送車は、チェルノブイリ原発事故後の石棺作業でも活躍したそうです。この車両には58メートルの長いアームが搭載されています。生コンの代わりにピンポイントで水を注入することができます。その車両が横浜港に1台あります」

これはいいと、遠山代議士は早速総理官邸に知らせる。

この知らせを受けた福山官房副長官は調べると
プツマイスター日本法人がベトナムに輸出するため、中古の車両が2台横浜港に荷揚げされていた。同社の鈴木社長がこの後ずっと対応する。

ドイツの本社に問い合わせ、ベトナム行きの車両を急遽日本に回してくれることになった。
アームは1台は52メートルまで、もう1台は58メートルまで伸びる。

この車を海江田はキリンと呼ぶことにした。
さあ、キリンの活躍がはじまるのだが、問題は誰が運転するかである。

消防庁に頼んだら断られた。
では、コンクリート圧送車だから土木事業者に頼んだらということになったが、やはり危険だからだめだろうということになった。

結局、こういう事態を引き起こしたのは東京電力だから東京電力がやれということになり
東電は協力会社(下請け)の東電工業に頼んだのであった。

19日昼頃、58メートルのほうの車両をプツマイスター日本法人の社員が運転して、20日午前6時に東電小名浜コールセンターに到着した。

鈴木社長らは郡山のホテルで、東電側から福島第一原発の敷地内の線量マップの説明を受ける。
「線量の上昇は止まっています。作業時間は10分以内。安全ですから」

20日の午後と21日午前に、小名浜コールセンターでプツマイスター日本法人の技術者が、現地でキリンを動かす技術者たちに操縦を教えた。
長いアームを建屋にぶつけて壊しでもしたら、すべてが水の泡である。神経を使った。

22日午後5時にキリンが現地に登場して、東電工業の二人が早くもコツをつかみ上手に操作した。
かくして放水が開始されたのである。

26日ドイツから来た技術者はこんなことを話した。
チェルノブイリ事故の時は、何十人ものソ連の死刑囚がドイツのシュツットガルトに送り込まれて来た。彼らは鉛板で覆われた運転席に座りビデオカメラで遠隔操作しながらコンクリートポンプ車を操作する訓練を受けた。その作戦に従事すれば全員釈放される約束だった。3カ月近く続いた石棺作戦は成功した。しかし、3年以内に被ばくのせいで彼ら全員が死んだ。

27日から新たにコンクリートポンプ車を3号機の冷却に導入した。
キリンを導入してから、定常的かつ安定的な注水ができるようになった。

この本には直接現場で活躍した東京消防庁ハイパーレスキュー隊や東電工業社員の他に、それに関係した色々なことが書かれてある。

たとえば東京消防庁ハイパーレスキュー隊は愛や義侠心だけで動いたのではない。
管総理が石原都知事に頭を下げて頼んだから、都知事から指令が出てそうなったことが書かれてある。

また事故現場でのがれきの山をこえながら建屋までたどりついて、扉をあけさせるのをアメリカのロボットにさせたのだが、もともと日本でそういうロボットが開発する計画があった。試作品もつくられたのだが、いつしかロボットは製作中止となった。
それは東京電力が原発はそういう事故が起こることはありえないからとロボット開発研究を打ち切ったからである。
(同様に、津波で非常用電源が止まった場合のことを考えて対策をとる研究も提案されたのだが、そういうことはありえないとして東電からストップされたという話をどこかで読んだことがある)

結局
 自衛隊のヘリ放水 → 東京消防庁ハイパーレスキュー隊の放水 → 東電工業のキリンによる放水
となるのだが、実は自衛隊の前に、機動隊の高圧放水車による放水があったのだが、これは放水量が少なくあまり効果がなかった。しかし、放射能被ばくの危険をおかしながら放水作業をしたことで、現場活動のノウハウを関係者に与えたことになり、以後の自衛隊のヘリ放水や東京消防庁ハイパーレスキュー隊の放水ということにつながったのである。


それにしても
この本は読みにくい。
時系列で書いていない。

東電や政府や各省庁や地方自体やその他の
違う視点でそれぞれ何度も
同じ対象について述べている。

だから繰り返しの記述もあれば
違う立場なので、他の言うことを否定したり修正したりする発言もある。

著者は色々多くの資料や証言を集めたので
それらを省略せず、いちいち書き留めたいのだろうけど
読む方はなかなか大変である。 疲れる。


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