特攻インタビュー(第1回) 前編 その5
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陸軍航空特攻 前村 弘氏(前編)その5
◆航法について(1)
--------でも、先ほどもお話があったように、当時陸軍に航法なんていうものはないし、聞いても「?」という感じでしたか?
前村‥ええ、初めて航法って聞きましたね。だけどね、その前に20人か30人ずつくらい、曹長さんや軍曹・伍長の下士官の教育を受けた人がいたんですよ。その人たちが、我々の内務班長ということでやったけど、この人たちは航法を教えてくれるわけじゃないんです。航法を教えてくれるのは、士官学校の56期くらいの人が、それこそ白城子でみっちり訓練を受けた寺島中尉という主任教官が、非常に熱心に航法を教えてくれましたね。
--------特幹1期生としての航法士、同期生は何人くらいいらっしゃったのですか?
前村‥150人です。150人が、ほとんど一緒に訓練を受けましてね。4カ月間……だから8月に宇都宮に入って、昭和19年12月の末には卒業、航法って言うんで……その間には、宇都宮から仙台まで行って出張訓練をやってみたり、太平洋側の金華山のところまで訓練で飛んだりしてましたね。
--------航法士の勉強っていうのは、最初は教科書開いて座学から始まるのでしょうか?
前村‥そうですね。航法っていうのは、水測航法っていうのと無線航法と天測航法と、3つか4つ航法があるんですね。そのうちの推測航法と天測航法を、私たちは勉強しています。無線航法は、全然、無線機は扱っていませんね。
--------例えば天測航法っていうのは、どういうものなのでしょうか?
前村‥天測っていうのは、このくらいの機械で六分儀とか八分儀っていう望遠鏡みたいなやつがありましてね。昼間は太陽を使いますが、夜間は星を使います。まず星の名前を覚えないといけません。その星の名前とは、1等星、いわゆる恒星です。恒星はほとんど動かない位置にあるから基準になります。よく星の名前を夜中に覚えたものです。今だに15や20の星の名前を覚えています。星にはシリウス、シエダ、ポルックス、カストル、ポラリスなどがありました。
それらの天体を六分儀で捕まえて何時何分何秒とメモをとってね、もう一つ、これとは対照的にポラリス (北極星)を捕まえて、それと恒星がおちあったところが自分の位置です。それを計算して、ちょっとややこしい…。
天測の場合には天測図とか天測略歴とかっていう厚い立派な本を両方、重いのを持っていかないとなかなか出ないんですよね。だから、一生懸命飛行機の上で何時何分何秒って書いたり、天測図には、この星は何月何日何時何分には、こういうような経路で移動していると書かれた表がありましてね、それらの本を持って乗ったもんですよ。
--------そういう星っていうのは飛行機の窓から覗きながら見るのでしょうか?
前村‥そうですね、飛行機の窓から。
--------重爆だと、上にも天窓がありますね。
前村‥ええ。飛行機ってやつは絶えず様々な条件で上下左右に動くから、操縦士が機体をしっかり安定させるために操縦桿を握っています。操縦士に「これから測定開始、保針!」って伝えて……保針っていうのは、針を動かさないように固定してくれと頼むわけです……それに操縦士が「了解」と応えてやっと測定を始めます。そのような連携を取りながらの作業です。だから、保針をいつまでも続けさせると操縦士は疲れてしまいましてね、あまり長時間は駄目らしいです。