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Re: イレギュラー虜囚記(その3)

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あんみつ姫

通常 Re: イレギュラー虜囚記(その3)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2007/12/16 13:36
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
   レムバーザの火事

 山森事件後、修理廠には鈴木伍長を長とする五人が通うことになり、各人優秀な自動車兵で、故障の発見、修理、その手早さはロシヤ人の到底及ぶところに非ず、初年兵教育を担当するまでになった。

 ある朝、点呼中にソ軍のジープがラーゲリに現れ、鈴木伍長を連れ去った。二十分くらいで送られて帰ってきたが、師団演習に出発しようとしたら師団長のジープが動かない。

モタモタしていたら師団長がラーゲリのスズキを呼べと命じたとか。故障は配線関係ですぐ直ったので、師団長が将校連を集めてスズキを見習えというように怒鳴りつけたとか。
何故師団長がスズキの名を知っていたのかは不明。多分レムバーザで聞いていたのだろう。

 このレムバーザで九月下旬の真昼間、黒煙を吹き上げた火事が起きた。ラーゲリからも煙がよく見える。小川の向うの下士官教育隊から兵隊が飛び出して行った。
夕方帰ってきたレムバーザ組に聞くと、火が出た途端、ソ連兵は柵を乗り越えて一人残らず山の方へ逃げ出した。

残ったのは五人の日本兵だけ。車輌を押し出すやら水をかけるやら一生懸命。大分落着いてからコプ大尉らが引返して来たそうで、鈴木らの怒ること。
それ以来レムバーザは日本兵に頭が上がらなくなって、作業の往復にも歩哨がお供をし、ラーゲリで我々が帰ってよしと言わない限り歩哨は直立している。

 レムバーザの隣りに街の発電小屋があり、満洲から押収した新潟鉄工のジーゼルエンジンの解体補修をジーゼル専門工の古江兵長がやっていた。発電機は中川電機製。
これは東支鉄道売却の現物供与で、ソ側はその優秀さに驚いていた。日本製なのに何故英語の表示をしているのかと不思議がっている。

 古江は大型ジーゼルの調整、補修の工具が無く、ときどき隣のレムバーザに忍び込んでいたが、今回の火事騒ぎで納得出来るだけの工具を取揃えたと自慢していた。日本人の技能者や職人は自分の仕事となると捕虜の身を忘れるらしい。
この発電設備も翌年一月無事立ち直り、スイッチオンには師団長が来た。
                            (つづく)

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あんみつ姫

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