特攻インタビュー(第9回)・その13
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特攻インタビュー(第9回) (編集者, 2013/6/24 8:01)
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編集者
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◆決起を誓い武器を隠す 2
海老澤‥戦争が終わって8月22日に訓練を止めた日に、伏龍の戦闘用具を全部、野比海岸に穴を掘って埋めたんです。その時、事故で岩手県の17歳の隊員が兵器と一緒に穴に落ちて、首の骨を折って亡くなったんです。同室の15人と一緒に、野比の焼き場に持って行って焼いて、ふと見たら、みんな足がカタカタ震えてるんですね。かわいそうだから、みんな返して、骨壷なんかないから、木箱に骨を入れて野比のお寺に行ったら、「伏龍隊の遺骨は浦賀に収めているから浦賀に行け」と言われてね。もう、午前2時くらいでしたが仕方なく木箱を背負って……骨壷じゃないから熱くて……木が焦げてるんですね。カチカチ山の狸みたいになりながら、一人で浦賀のお寺に行きました。
隊に戻ったのは4時くらいでしたね。その後の後始末は、海軍では主計科がやることになっているんです。私は兵科で主計科ではないですから、その後、どのように遺族に連絡したのかは分かりません。戦後、10年くらい経ってから、その遺骨を預けた寺に行ったんですよ。そしたら、「うちには戦没者の遺骨は一つもありません」と言われたので、安心して帰ってきました。亡くなった方の住所も知っていましたので、その家に手紙を出しましたが、「私は嫁ですが、お祖父さんも、お父さんも、兄弟も全部亡くなって、嫁に来た身分で、伏龍に出た息子さんの顔も知りませんからこれから一切、連絡しないで結構です」という返事が来ました。
-------私たちは戦争体験を後世に残す活動を行っているのですが、海老澤さんは長い海軍体験を通じて何か語り継ぎたいことはありませんか?
海老澤‥国を思う余り....明治時代の人は国を大きくしたいばっかりに、日清戦争とか日露戦争をやって……戦争をやって勝てば領土が増え、大きくなるわけですよね。戦争をやらなければ国は大きくならないんです。その反面、戦争は絶対嫌だという考えもあるし……。だから、領土問題を考えても戦争はいけない、だけど、戦争をしなければ国は大きくならない、という考えが頭の中に渦巻くんですよね。難しいんですよ。
でも、戦争って、今の人にとってはゲーム感覚なんじゃないですか。家庭を持っていない、親はいない、兄弟もそんなにいない、そういう人は「戦争ゴッコ」をしたくなるんじゃないですかね。日本全国で集めれば、そういう人が何千、何万といるような気がします。もし、徴兵制が復活したら、行かせて下さいという人が結構いるんじやないですか? 生活が行き詰まれば、徴兵制を望む雰囲気が出てくるんじゃないですかね……。当時、海軍に入る人は岩手県と宮崎県出身者が多かったんです。「困ったら海軍に行け。学費がタダだし、小遣いももらえる、着る物ももらえる」って。貧しいから、食べるにも困ったからですよね。海軍兵学校を落ちたら、「じゃあ、下士官でいいから海軍に行け」と言われたといいますよ。
まあ、戦争中は、我々は死ぬというのが当たり前だと思っていましたから。特攻隊で結婚して、妻も子供もいて、自分が死んだ後、どうするんだろうという考えもありませんでしたね。
死んだら死んだで、軍人恩給で、米や味噌くらい買えるだろうくらいの考えしかなかったですから……。
-------戦後70年近くまで過ぎて、今、あの時代は何だったんだろうと思うことはありますか?
海老澤‥よく生き延びて、ここまで来たなあと思いますよね。士官でもない、分隊長でもない、特攻隊司令でもない……単なる上等下士に過ぎない私が、天皇を守るため、特攻隊の集まる場所まで指定したんですからね。武器や用具まで準備した。天皇を守る一心に……。まあ、実際に特攻に出すこともなく、ここまで来て良かったと思いますけどね。