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特殊潜航艇「海龍」・第二章 その2

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通常 特殊潜航艇「海龍」・第二章 その2

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/4/8 7:34
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
 (4) ホルゲン《ホルモン減退(造語》――――――――――――――――――――――

 昭和19年10月から20年2月までの5カ月間で、モヤシのような身体の大学生を、短期間で将校らしい体格に仕立てようというのであるから、海軍体操《狭い艦内でも出来る体操》を始めとして、肉体を鍛練する教科が多かった。
 体を動かすから食欲は旺盛なのに、与えられるのは、ギリギリのカロリー計算をしているのではないかと思われるくらい少なかった。全国から集まった1200名の予備学生の話題は、もっぱら食い物であり、寝るときには、せめて夢にでも食べる夢をみたいと思って寝た。
 食事が少なかったのは、予備学生だけではなく、海軍兵学校《現役士官を養成する学校》の生徒も、海軍経理学校《主計科士官を養成する学校》の生徒も、腹が減ってしょうがなかった、という思い出の記録があるから、教育期間中はいずこも同じだったのだ。
 さて、食事の時に出てくるお茶だが、ほうじ茶の出がらしのような色のお茶が配られる。不味くはないが、お茶の香りなぞ全くない。これが曲者なのである。
 入隊して1カ月くらい経った頃であったか、外出が許可された。まず食い物探しである。満腹で帰隊する。
 問題は翌朝である。起床時に「男性現象」《注》を感じるのである。振り返れば入隊以来、一度も感じていなかった。最初の外出の翌日は、偶然だろうと思っていたが、その後の外出でも、翌朝同じ現象があった。
 戦後20年も経ってから、同期の仲間が集まったときに、この事が話題になり、「なんだ、貴様もか」と、原因は食事の時に飲まされたお茶が、ホルモン減退剤であったのであろう、という結論になった。
 軍隊ってよく考えているね。無駄なエネルギーは一滴も消費させないようにしているのだから。


 (5) ベートーベンと寄席芸人―――――――――――――――

 慰問団が来るという知らせがあった。前線でもないのに慰問団が来るのかといぶかったが、とにかく来るらしい。
 その日の朝、学生隊長から訓示があった。

 学生隊長 日比野寛三少佐


                  
「海豹士官行状記」(本人の著作)より

 「予備学生諸君は、ベートーベンを聴かせると、フムと深刻な顔をして聴いておるが、寄席芸人だと、なんだこんな俗っぽいものと、相手にしない傾向がある」
 「寄席芸人であろうと、彼等は一緒懸命に芸を磨き、今日は諸君に喜んでもらおうと、精一杯の芸を披露するのであるから、内容については諸君の期待するような高尚なものではないかもしれないが、彼らの努力、誠意に対しては、拍手を惜しんではならぬ」
 「その拍手が、かれらの一層の舞台となって返ってくるのである」

 海軍に入って、軍人が本職の人間から、まさかこういう話しを聞こうとは思わなかったが、当時の我々としては、ベートーベンの方が有り難かったのも事実であり、痛いところを突かれたと思った。
 格納庫のような所での慰問の演芸に、盛大な拍手を贈ったのはいうまでもない。そして、学生隊長の訓示は、将来われわれが、部下を持ったときの指導への教訓として受け取った。

 日比野少佐は「津村敏行」のペンネームで、戦争中から海軍を題材にした文章を発表している。彼の自伝とも言うべき「海豹(あざらし)士官行状記」によれば、子供の時からやんちゃ坊主で、海軍兵学校時代も退学処分に相当する事件を起こしている。こういうのを学生隊長に任命するのだから海軍は面白い。





 









  注 性的興奮や自意識に関係なく 勃起する状態



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