画像サイズ: 535×523 (96kB) | ベルリン無法者
シューネフェルトからポツダムにむかう列車のなかでめずらしい事件に出会った。サロンカーの座席に腰掛けていると青年団のような20人ぐらいの一隊がどやどやと乗り込んできて先に乗って座っている乗客になにか言った。そうするとドイツ人の乗客は通路に出て行った。彼らは手に手に酒びんを持っており、すでにかなりきこしめしている。 一人ぽつんと彼らのあいだに座っている私に気がつくと、リーダー格の男が私の前にきて「ハローグッドアフタヌーン、ナントカカントカ」と多分 かれが知っている数少ない英語の単語とともに私は立ち退きを要求してきた。他の乗客を全員退い出して自分たちの専用車にしてじっくりお酒を飲もうという魂胆らしい。君子危うきに近寄らず、私も出てきた。 通路にいた女子学生らしい子が私が追い出されてくるのを見て目に涙をうかべながら退役軍人のような がっしりした身体つきの小柄な老人に必死の表情でなにか訴えている。 おそらく外国人にまであんなことをして恥ずかしいとでもいっていたのであろう。老人は車内にはいっていくと若者たちを睨みつけながら強い口調でなにかいっている。その甲斐あってかわれわれ迎えにくることこそしなかったが静かにはなった。車掌さんは検札にきたけれど見てみぬふりをしていた。 ここもひとつの国であってみれば、ヤクザもいれば、正義漢もいる、みてみぬふりをする人もいるーーーどこもおなじだなと思った。
―――――――――――――――――――――――――――――― この件について当時、東ドイツに長く住んでいた、友人のY氏は下記のように説明してくれた。 ―――ベルリン無法者の件、酒の勢いでなだれ込んできた「青年団らしい20人ほどの若者たち」というのが(青シャツ着てましたか?)まさに メーデーから解放記念日まで隊列行進や警備・整理などのために首都に動員されていた自由ドイツ青年同盟の若い衆たちでしょう。中国の紅衛兵ほどではなくても日が日だけに車掌もあまり触りたくないのだろうと思います。 |