特攻インタビュー(第1回) 後編 その10
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陸軍航空特攻 前村 弘氏(後編)その10
◆再び墜落事故に…(1)
--------キー67(四式重爆撃機飛龍)、(さくら弾機)と(と号機)の話なんですけども、4月17日の出撃は、この(さくら弾機)と(と号機)で、前村さんが乗られたのは(と号機)の方なのでしょうか?
前村‥(と号機)です。
--------(と号機)も通常機に比べて爆弾は多めに担いでいるわけですが、乗られる場所の目の前に、ごっつい6個の電信管が取り付けられています。配置場所はいつもと同じだったのでしょうか?
前村‥同じです。これは標準機とちっとも変わらなくて、本来は爆弾槽に800kg爆弾1発を積めるのですが、1発しか積めないのにもう1発はどこにあったのかと言いますと、胴体の中に800kg爆弾を入れて、離着陸のときに緩まないようワイヤーで縛り付けてあるんです。それで、破裂したら連動するような電気的な繋がりがあります。あとは機関砲などの武装が全然ないというくらいが標準機との違いです。燃料タンクも一つくらいは外してあったかもしれないですね。
--------前村さんは機のどのあたりに乗られたのでしょうか?
前村‥操縦席のちょっと前方下の、下に風防ガラスがあるだけの前もどこも見えない真っ暗な場所です。小さな窓があるのですが、いつも独りなものですから淋しいですよ (笑)。
--------各務ヶ原で、今度(さくら弾機)に乗るということで、受領に行かれたと…。
前村‥4月24~25日に、各務ヶ原へ(さくら弾機)を受領に行ったんですよ。沖縄から帰ってから1週間後に。それで、何かの都合で長野県の松本飛行場に行ってるんですよ。あそこに三菱重工の工場がありましたからね。松本の飛行場で何か部品を受け取ってから、その晩は信濃屋に泊まり、翌日電車か何かで各務ヶ原へ行った。そのときから岡田さんが無口になった。いつもより余計に寡黙な状態だったですね。
--------そのときは試験飛行ということで?
前村‥そうです。そのときに岡田さんも(さくら弾機)を操縦するのは受領して初めてでしょ……おそらく格納庫から受領して、エンジンでプロペラを回して地上を滑走するときに、飛行機の振動とか、重いから相当プロペラの回転を上げなければ進まないとか、操縦桿に伝わってくるものが異常で、通常の飛行機とは違うというのを感じ取ったんじゃないかと思うんですよ。
ふつう日本の軍用飛行機の場合、滑走路まで来ますと、一回停まって脚のブレーキをかけて、双発だから両方グアーつて一回ふかして、正常にまた戻してからスタートつていうのが出発の仕方だったんです。今の民間航空は、滑走路に来たらいきなり離陸します。
昔の軍隊の飛行機は、必ずここで1回止まって、それでブレーキかけてエンジンをふかすというのが通例だったんです。
地上滑走して滑走路の出発点まで来たときに、操縦桿を押さえ込むようにして俯いていた岡田機長が、急に顔を上げて「前村候補生、田中伍長は降りろ!」と命令調で言うもんだから、「試験飛行は初めてですから一緒に行きます」と答えました。そのときには我々の身体はもう完全に機内に乗っていたんです。でも「どうしても降りろ!」と厳しい口調が岡田機長から返って来ました。「はい、それでは爆弾照準眼鏡の点検、受領がありますから格納庫へ行きます」と答えて、私と田中伍長は機体から降りて格納庫へと向かいました。