特攻インタビュー(第1回) 後編 その12
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陸軍航空特攻 前村 弘氏(後編)その12
◆再び墜落事故に…(3)
--------機体のバランスをとるのが難しかった?
前村‥多分、そうです。バランスだと思います。何しろ爆弾が全部で2、900kgですからね。通常こういう(と号機)でも800kg爆弾2発で1、600kgですから、通常の標準機は800kg爆弾1発しか積めませんでした。重心が上にある状態で、爆弾を2、900kgも積んでるんですから、さぞかし操縦は難しかったろうと思いますよ。
--------もともと設計上から考えても、無理があったのでしょうか?
前村‥ええ、無理があったと思いますよ。それで、ここは (写真を見て)ベニヤ板でしょ、これもベニヤ板、これもベニヤ板……それで、操縦席に座ると、後方から覆い被さるような爆弾の置き方。直径が2mくらいの……しかも赤く塗ってあるような飛行機用の爆弾ですけれど。もちろんその爆弾を置くためには、燃料タンクを外さなきゃ置けないんですよ。だから、燃料タンクも満タンじゃなく、通常の飛行機の半分しか燃料積んでないわけですからね、普通の飛行機よりバランスが悪いんだと思います。そういう面では酷い飛行機でしたよ。もちろん機関砲も積んでないし武装無しですよ、全然。
--------(さくら弾)は、こういう爆弾だという説明は、事前にあったのでしょうか?
前村‥いえ、もう噂だけですよ。正式な説明は受けたことないですね。とにかく、これが軍艦に体当たりしたら前方3km、後方2km火の海になるというぐらいの噂や説明しか聞いたことありませんでしたね。だけど聞いてみると、ヒトラーから貰ったテルミット爆弾だとか液体爆薬だとかいう噂程度しか耳に入ってなかったですね。ヒトラーが日本にくれたことになっているみたいです。
--------この忌まわしい事故について、どう思われましたでしょうか?
前村‥思い出す度に考えるのは、岡田さんは機長として特攻出撃したものの、戦果を上げられなかったことに責任を感じ、悩んでいたんじゃないかということです。事故の予感もあって、試験飛行に直接関係のない航法や通信だった私たちを、とっさに降ろしたんじゃないかとね。もしそうなら、私と田中伍長は岡田機長に救われたことになります。今でもそう信じて疑いません。そう考えると、あの沖縄特攻のときにグラマンに体当たりしようと岡田機長が言ったとき、私は反対しなければ良かったのではと、今でも後悔することがあるんです。