硝煙の海 菊池 金雄 19
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編集者
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謀略作戦の実態
独立運動指導者を日本に亡命させる目的で、同年二月十五日、杉井満とアウン・サン(日本名;面田紋次)の両名が偽造船員手帳(事務長;杉井、事務員;面田)を携行。船員服を着用して川崎在泊中のビルマ米積取りの大同海運「春天丸」に乗り込みラングーンに向かった。
この偽装船員乗り込みの件は、南機関長が秘密裏に船会社と逓信省に根回ししていた。他方、船長には二人の任務を伏せていたが、春天丸がシンガポール通過の前日、任務の一端を明かし、ある程度の針路命令権を承認させ、同時に一等運転士と機関長にも協力を求めた。
春天丸はバイセンに寄港し、船員に税関ゲートに警官不在を偵察させ、杉井、本船機関長、アウン・サン、ほか二名の船員とともに、バナナ買出し風に装って税関ゲートを通過。四百メートルほど先の木陰で、杉井が腹に巻いて携行した「ロンジー」をオンサンに着用させ、偽歯と留比を手にして間道からバイセンの町に送り込み、ヘンサダ経由の汽車でアウン・サンをラングーンに潜入させた。
その後、春天丸は英官憲の人員点呼をうけたが、予め関係書類は一名減じていたので無事クリアしたので、同船はラングーンに回航し、ビルマ米積み込み荷役に従事した。
アウン・サンが引率する脱出者収容時刻を翌日の二十三時三十分から一時間の間と内定していたので、杉井は上甲板、一等運転士は船首、船長は船尾、その他船員も適所に配置して受け入れ態勢を整えていたが、かねて打ち合わせの艀伝いのルートから定刻までに姿を見せなかった・・・事後確認では、在船の警官四名の監視下では予定コース進入は困難のためアウン・サン一行は一時、船尾係留浮標上に待避。係留鎖をよじ登って、一同無事決死的潜入に成功したのであった。
かくして脱出第一号作戦の四名は三月二十三日、東京に帰着することができた。
引き続き、第二号作戦は木俣豊次とフラミヤイン(日本名;糸田貞一)により八名。第三号作戦は杉井満により三名。第四号作戦は水谷伊那雄により十一名の脱出に成功している。