硝煙の海 菊池 金雄 31
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編集者
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鹿児島~基隆~マニラ
ここから台湾の基隆(キールン)経由でマニラに向かった。基隆の暁部隊(陸軍の輸送船を一手に面倒をみる部隊)から、安全航海祈念の激励をうけた。
ここから南下、いよいよ敵の潜水艦が潜む魔のバシー海峡(台湾とフィリピンの間の海峡をいう)にさしかかり、見張員を増やし、緊迫した単独突破に挑戦しなければならなかった。
敵は、獲物が空の小型船のため見逃したものか、運よくサブタング水道に逃げ込むことができた。
ここまでくると後は、喫水の浅い小型船の特徴を生かして、島づたいにルソン島西岸を南下、九月下旬無事マニラに入港することができた。
さすがにここは最前線の兵站基地で、港内には大型輸送船が多数停泊。その中に同会社の天日丸もおり懐かしかった。
本船は暁部隊打合せと、燃料や真水・生鮮食料などを補給のため数日停泊することになり、乗組員たちは早速上陸した。 私は昨年高瑞丸で寄港したので二度目のマニラ上陸。なおアメリカナイズの名残があり、街には衣類や日用雑貨などが豊富に店頭に並び賑わっていた。
私は防暑用に涼し気な麻の半袖シャツや日用品を若干買い入れたはずである。
目的地変更(ミリ~マニラ)
ここの暁部隊から昭南島行きを中止して、「ボルネオのミリとマニラ間の油輸送」に変更の指令をうけ十月上旬ミリに向け出港した。
一旦、母国に別れを告げた乗組員たちは、どこに行こうが命のまま航(はし)るだけだった。
私は、一年前高瑞丸(こうずいまる)で波の静かなスルー海を度々航海していた。灯火管制下、満天の星座に浮かぶ南十字星を再び仰ぎ、ひたすらボルネオをめざした。