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硝煙の海 菊池 金雄 32

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通常 硝煙の海 菊池 金雄 32

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/3/22 7:24
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298

 なんきんむし

 この戦標船(戦時標準型の船舶)は、在来船とくらべると、すべてがバラック工法で、ベット脇の壁板の隙間に住みついた南京虫の夜襲には、ほどほど参ってしまった。

 この虫は暗がりで襲う習癖から常に常に懐中電灯を手元に置き、頃合いをみてパット照らすと、す早くベット用の蚊帳の隅に逃げたところを手でつぶし、退治していた。

 この船の無線室は狭く、かつ二段ベットの居室併用で、嫌でも無線信号に邪魔され、満足な休息もできなかった。

 敵の潜水艦回避と、乗組員の疲労回復のため適所に仮泊することがあった。 マージャン愛好者はその寸暇に、隣室の士官食堂で卓を囲み、ガラガラ音が深夜におよぶこともあり、うるさかった。

 このように各室間の防音隔壁もずさんな、粗製乱造な船であった。



 忙中閑

 ミリに到着の前、北ボルネオのアピ(現コタキナバル)と、ブルネイ湾口のラブアン島に仮泊したことがあった。

 アピに上陸。軍の酒保でジャワコーヒーを試飲。おつまみは茹でた落花生だった。

 ここで、現地人そっくりの色黒の日本のオバチャンに出会った。外見からとても日本人には見えないので訝ったところ。立派な日本語で受け答えしたのでヤマトナデシコと確認された。

 一体彼女はどんな境遇で南国で生活しているのか聞きたかったが、残念ながらその暇がなかった。

 ラブアン島にも好奇心から船の伝馬船で磯辺に上陸してみた。海水はきれいで、アワビそっくりの小さな貝が無数にあった。 少し陸地に入ったら大きな動物の足跡があたので危険を感じ、引き返した。

 かくして十月半ば目的地のミリに到着した。油の積み込みは沖合に投錨、送油管で行った。

 船員や乗船警戒隊の海兵たちは適宜上陸。軍の酒保で疲れを癒したのであった。

 私はここで上陸しなかったので、町の様子は不詳。また、近くのブルネイに連合艦隊の基地があったことも全然知らなかった。

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