硝煙の海 菊池 金雄 34
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編集者
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敵機の餌食
一夜、パラワン島の小湾に仮泊。翌十月二十五日の朝抜錨。朝食中に飛行機の爆音がした。当然味方機が飛来したものと思っていた。
ところが、いきなりバリバリと機銃掃射に見舞われた。変だと思って出てみたら、米軍の哨戒機(コンソリデーテットB24)一機が本船に襲いかかってきた。
当然本船警戒隊員が必死で応戦したため、敵機は高度から爆弾投下に移った。
ドカ、ドカーンという大爆裂音とともに、重い船体が一瞬浮き上がった。至近弾一発 でエンジン停止。船内はシーンとなり、二発目の至近弾で簡単に船体が亀裂---沈下開始。始めて爆弾の威力を肌で感ずる。
その瞬間---故郷の親のことなどが脳裏をかすめ---戦死の場到来と観念。 (事後親たちの言。そのころ夢見悪かった)
間もなく「総員退船!」の、船長命令。
各自持ち場を離れ、続々とデッキに集合。私は谷津通信士と暗号書の袋を担いで脱出しようとしたら、一方の通路は部材が散乱して通れなかった。二人はすぐ他の通路からデッキに出て、暗号書袋を海没させた。
甲板部員はすばやくボート(救命艇)を降下、船体の沈没前に総員離船。全員ボートに泳ぎつくことができた。
敵弾で海兵一名(大谷兵長)即死。内田セーラー(水夫)が被弾四発の重傷を負った。
船長が、このセーラーに「元気を出してボートまで泳げ!」とハッパをかけ、彼は辛うじてボートまで泳いだが、すぐ息が絶えた。
敵機は今度はボートに向かって機銃掃射に移った。
船長から「各自泳ぎながら散開せい!」の号令がとんだ。
われわれ非戦闘員は「戦争とはむごいもの」と実感。幸いこのときは犠牲者が出なかった。