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Re: イレギュラー虜囚記(その2)

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あんみつ姫

通常 Re: イレギュラー虜囚記(その2)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/12/16 12:40
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
  琿春病院の改造

 三月一日、琿春病院を陸軍病院に改造のため技能兵五十人を出す。ソ側は尉官の女医が多い。院長は中佐でなかなかの紳士。
手術はユダヤ人の女医の大尉の担当。大変親切な女性だった。

スチーム工の佐藤上等兵が、手相拝見で婦人連中に大もてになった。彼は琿春重砲連隊の生き残り。連絡に出されているうちに終戦になり、部隊は砲もろとも自爆したとか。

三月になっても白頭山付近で日本軍の抵抗があるらしく、この日も約三十人の負傷兵が運ばれてきた。彼らは我々を見ても別段敵愾心を示すでもなく、中には笑顔を見せるのもいる。テレ臭いのかも知れぬ。

  冷凍豚と牛の首の大盤振舞

 三月も未近くになると、満洲にも春が来る。連日到着する冷凍豚が融け出して貨車は血だらけ。ソ側は処置に困ってニケ大隊に六十頭くれた。押収の白菜が駅に山積している。それ以来毎日三度三度豚と白菜の塩煮が主食となった。

田中主計は血の垂れている豚の山の中で仕事をしている。その頃は牛の冷凍も大量に到着していたので、ソ側は食い切れない牛の頭二十個と膝先数十本を寄こしたが、日本人は動物の煮こごり(ホロデツ)を食う習慣はない。

始末に困って、屋外に棚を作り、舌を出した牛首を並べておいたが、夜中厠へ行く者が嫌がるので足もー緒に穴に埋めた。日本兵はこんな旨いものを食わないのかとソ連兵に笑われた。

彼らは牛の両耳に金棒を突き通し、焚火の上でグルグル回しながら完全に毛を焼き切った後、大釜に放り込んで煮立てる。脳や目玉や髄のゼラチンが流れ出し、冷えて固まる。ロシヤ料理の高級品だが、料理が手荒過ぎる。

 三月中旬、大尉を長とするゲペウがラーゲリの隣に移って来た。

                        (つづく)

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あんみつ姫

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