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Re: イレギュラー虜囚記(その2)

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あんみつ姫

通常 Re: イレギュラー虜囚記(その2)

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2007/12/16 12:51
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
   ソ領へ向って移動開始

 四月二十四日、二〇九西本、二一一田中の両主計が五十人ずつの兵を連れトラックで先発。糧秣倉庫、宿舎設営に当たる。
後は全員で宿舎のトタン屋根、硝子、柱、床板などの取り外し。

翌二十五日は糧秣、資材、それに弱兵をスチユードベーカー十五台で送り出す。弱兵面をしてトラックに潜り込む奴を引張り出すのに大苦労。
この車手配も、クーロフががなり立てて交渉したが埒が開かず、興奮の余り発作を起してベッドに引っ繰り返ってしまったのをポグノフ少佐が例の落着いた調子で交渉を取りまとめた。

 糧珠は四十屯以上あり、輸送も容易ではない。ボ少佐の注意で、輸送中のゴマかしを防ぐため、積込数量と車輪番号をきちんと記録する。何とも厄介な軍隊だ。ソ軍運転兵は特にタチが悪い。一車輌分そっくり満人に売り渡すなど朝飯前の連中である。

 翌二十六日、両大隊主力出発。輜重馬車列を後尾に徒歩行軍。伊藤も出発、自分と阿部中尉は残留後発。
皆が出発するのを待ち兼ねたように邦人女性が集まって来て、厠の馬糞に混っているコーリャン粒を拾ってゆく。ロシア人の歩哨が面白がって追い回す。
隙を見て米俵一俵を投げてやったが、満人がワッと寄って取り上げてしまう。

 二十七日、快晴、残員全員とボグノフ、クーロフ夫妻らソ側十人がスチエードとニッサンに分乗して午後一時出発。出発前、洗面器にどぶろくを入れ、コップでガラガラすくってソ側と乾盃。

琿春の街、満洲も見納め。街の立木も芽を吹いて、春の日差しは捕虜にも公平に当たる。関東軍はどうなっているのか。我々が一番最後まで満洲に残っていたことになるのか。

 クーロフのニッサンが道を間違え実直ぐに走り去る。ボグ少佐がクーロフの馬鹿奴と舌打ちしてスチユードで追いかける。

 ノーバヤデレブニヤ《中ソ国境の町-》の検問所で時間を取られ、クラスキノの街が見えた頃、夕陽が入ってしまった。しかし、四月ともなればなかなか日は暮れない。鎖国のソビエトの懐に入って好奇心が湧く。
                          (つづく)

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あんみつ姫

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