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Re: イレギュラー虜囚記

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あんみつ姫

通常 Re: イレギュラー虜囚記

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - | 投稿日時 2007/12/5 11:46
あんみつ姫  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 485
さて翌日、哈爾浜を発ったのはいいが、一情中《第一情報中隊》の石田少尉は名だたる暴れ者の噂があり、二人ともぶっ飛ばされるのを覚悟した。
海林に近づいて列車の窓から見ると、プラットフォームに数人の将校の姿があり、駅前にオープンカーや乗用車が止まっている。

てっきり地区司令官が帰ってきたのか、えらい人の視察かと思って一番あとからゆっくり下車してブラブラ改札口に近づいて行くと、何とわれわれの出迎えで、田中大尉、石田、武藤の両少尉、運転手の兵隊達であった。
田中大尉から「新任の見習士官としては元気がない」と怒鳴られた。車を連ねて営門に入ったら、衛兵司令《営内の警備や取締りを任務とする将校》が二十期の田中睦男氏であった。
一情中に暗号解読担当の通訳生として中村博一がおり、われわれが週番士官で点呼をとっていると列の後ろの方でニヤニヤ笑っていたものだ。

 情報中隊は軍属中心の傍受班と解読班があり、将校は二ヶ中隊で六名、下士官が多く、兵隊はこれまた五~六名、合計八十名程度という変わった編成になっている。
海林には、電波発信地を探索する標定中隊が付随しており、これはまだしも通信隊としての体裁を保っていた。これを合わせて総計約一五〇名が、沿海州《注》に展開するソ連第9航空軍(9BA)の動向を四六時中探っていたのである。

七月に入ると、9BAの無線通信が極度に少なくなって、いわゆる無線封止の状態に入った。作戦準備開始と見られるので、新京本部から高級将校が多数海林に集合し、種々状況把握に努めたが、無線情報で敵の攻撃開始を判定することはまず不可能である。

八月に入って、いったん高級将校が新京に引き揚げた直後、九日払暁、ソ連軍の満州侵攻が始まる。
                  (つづく)

注 ロシア極東部のプリモスキー地方で日本海に臨む地方 ウラジオストク港がある

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あんみつ姫

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