Re: イレギュラー虜囚記
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イレギュラー虜囚記(その1) (あんみつ姫, 2007/12/5 11:36)
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あんみつ姫
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海林を経て横道河子へ一路撤退
8月16日 曇
午前五時起床。干メンポウ《干麺包》をかじりながら乗車。廻れ右して来た道を引返す。途端に、ソ連軍に追いつかれるような気になり全員急げや急げ。幸い曇天のため敵機現れず。混乱の中で武藤少尉の車に出合い燃料を分ける。
チリヂリになって追ってくる兵隊は、帯剣の鞘だけの者、ハダシ、軍帽なし、上衣なし、トロンとした眼で物も言わぬなど軍紀も何もない典型的な敗残兵。(註-東満国境の状況は伊津野が詳しい)
正午、やっと海林に帰着。兵舎は完全に焼け落ちている。残置した米俵、弾薬、燃料を積込む。燃料庫のガソリン未だ天を焦がして炎上中。
間もなく本日第一回の空襲。超低空、拉古方面が特にやられている。拉古の第一線に吸収されれば敵機の射程内に入るので急ぎ出発す。隊長のオープンカーはまるでドライブに行くように見える。
行軍一時間余、朝鮮人部落付近で小休止。軽戦車、弾薬車等無限軌道車は、路肩といわず畠といわずお構いなしに他部隊のトラックを引っかけながら一目散に退却。
出発直前、敵機、機関砲弾がブッブッと飛来する。常に車両と反対側に退避するよう注意を与える。輜重隊の兵一名負傷。右腕関節にポッンと赤い穴。我が隊の衛生兵が手当。
機銃も案外命中することありと悟り、偽装強化と退避動作の敏捷に努める。約一粁後方は徹底した攻撃に曝されている。撤退縦列の最後尾第一線の移動につれ、敵機の銃爆撃中心点も移動す。
どうやら横道河子付近の山に接近。谷を縫う道路に達したら撤退車両の長蛇の列で前進不能。部隊間に他部隊の車両が割り込むため相互の連絡に苦心す。前進、停止、ノロノロ運転が限りなく続く。
雨模様となり敵襲中断が幸い。兵隊服を着て鉄帽を被った看護婦のトラックが10両近く通る。案外朗らかで元気。弾薬車に分乗して牡丹江に逆行する一ヶ小隊、地雷敷設に行く歩兵等々。
遂に横道河子手前五粁の山間道路で日没。雨となる。路側に車を並べ夜営《夜間野外での宿営》。夜通し撤退車両の響き、徒歩兵、輜重車などが通り過ぎて行く。車上に一ヶ分隊、下に一ヶ分隊、追突されれば圧死か左の谷底に転落かと思いつつぐっすり寝込む。
(つづく)
8月16日 曇
午前五時起床。干メンポウ《干麺包》をかじりながら乗車。廻れ右して来た道を引返す。途端に、ソ連軍に追いつかれるような気になり全員急げや急げ。幸い曇天のため敵機現れず。混乱の中で武藤少尉の車に出合い燃料を分ける。
チリヂリになって追ってくる兵隊は、帯剣の鞘だけの者、ハダシ、軍帽なし、上衣なし、トロンとした眼で物も言わぬなど軍紀も何もない典型的な敗残兵。(註-東満国境の状況は伊津野が詳しい)
正午、やっと海林に帰着。兵舎は完全に焼け落ちている。残置した米俵、弾薬、燃料を積込む。燃料庫のガソリン未だ天を焦がして炎上中。
間もなく本日第一回の空襲。超低空、拉古方面が特にやられている。拉古の第一線に吸収されれば敵機の射程内に入るので急ぎ出発す。隊長のオープンカーはまるでドライブに行くように見える。
行軍一時間余、朝鮮人部落付近で小休止。軽戦車、弾薬車等無限軌道車は、路肩といわず畠といわずお構いなしに他部隊のトラックを引っかけながら一目散に退却。
出発直前、敵機、機関砲弾がブッブッと飛来する。常に車両と反対側に退避するよう注意を与える。輜重隊の兵一名負傷。右腕関節にポッンと赤い穴。我が隊の衛生兵が手当。
機銃も案外命中することありと悟り、偽装強化と退避動作の敏捷に努める。約一粁後方は徹底した攻撃に曝されている。撤退縦列の最後尾第一線の移動につれ、敵機の銃爆撃中心点も移動す。
どうやら横道河子付近の山に接近。谷を縫う道路に達したら撤退車両の長蛇の列で前進不能。部隊間に他部隊の車両が割り込むため相互の連絡に苦心す。前進、停止、ノロノロ運転が限りなく続く。
雨模様となり敵襲中断が幸い。兵隊服を着て鉄帽を被った看護婦のトラックが10両近く通る。案外朗らかで元気。弾薬車に分乗して牡丹江に逆行する一ヶ小隊、地雷敷設に行く歩兵等々。
遂に横道河子手前五粁の山間道路で日没。雨となる。路側に車を並べ夜営《夜間野外での宿営》。夜通し撤退車両の響き、徒歩兵、輜重車などが通り過ぎて行く。車上に一ヶ分隊、下に一ヶ分隊、追突されれば圧死か左の谷底に転落かと思いつつぐっすり寝込む。
(つづく)
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あんみつ姫