特攻インタビュー(第3回) ・その11
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編集者
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海軍航空特攻 江名武彦 氏
◆特攻基地・串良へ
--------4月20日にいよいよ串良に移動されますね。当然、飛行機で移動されたわけですが、特にトラブルもなく無事に串良に着かれたのですか?
江名‥ええ、そうです。朝、百里原を離陸しましてね。6機でまず編隊を組んで。まあ、100時間も乗ってないような操縦員、偵察員が乗っている訳でしょ。6機編隊を組んでそこでバンクを振って百里原基地を出ませんと、我々の練度が笑われますんでね。編隊だけはとにかく組もうということで編隊訓練もだいぶしましたので、うまく編隊を組めました。見送りの人の帽振れの中、バンクを振って串良基地に向かったわけです。
--------串良までは、飛行機でどれくらい時間がかかったんですか?
江名‥途中、名古屋航空隊に寄りまして、そこで四国・九州に空襲があるかどうか状況を確かめ、燃料を補給して、それから串良基地へたどり着きました。着いた時は夕方になっておりました。途中、東京の上空を通ったら、上から焼け野原が見えました。これは大変な事だと思いましたね。そうしましたら、今度は横浜でしょ。それから名古屋、大阪、神戸と、みんなその上空から見ますと焼け野原なんですね。いよいよ日本は追い詰められたなという思いに駆られましたよね。
それで伊豆の山を越え、駿河湾の所に出たわけですけど、その日は雲が垂れ込めておりました。飛行機がガブるっていうんですか、揺れるんですね。伊豆半島を越えて雲上を飛んでいたら右手に富士山が見えたんです。富士山は大井海軍航空隊の時、訓練で毎日眺めておりました。その富士山を見て、厳かな気持ちで国のために殉ずる覚悟をしました。私の戦友で特攻隊で亡くなった、百里原から出た戦友が作った歌があるんです。当時、我々、学生は万葉集とか古今集とかいろいろ読んでいましたから、和歌を詠む者が多かったです。
亡くなった戦友は、"伊豆の群山(むらやま)越え往けば、神かも山かも富士が迫れり″と詠みました。霊峰・富士山は、この国を守るには自分が犠牲になる事も止むを得ないという気持ちにさせました。名古屋へ着きまして、四国・九州の方面に今、空襲がないから大丈夫だということを確認して、それから串良に飛びましたけど、私はそれまで2時間以上飛んだことないんですよ。ほとんどの人もそうなんですよね。それが丸一日飛んだわけでしょ。それも編隊を組んでますからね。私は疲労困憊しましたね。串良基地は毎日の空襲で穴だらけで、第一線の殺気立った飛行場に降り立ったわけです。だから、いよいよ戦場に来たという思いがしましたね。