特攻インタビュー(第3回) ・その15
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編集者
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海軍航空特攻 江名武彦 氏
◆第2回目の出撃(2)
--------江名さんの飛行機がトラブルにみまわれたのは、しばらく飛行した後ですか?
江名‥ええ。ちょうど半ば近くまでいったところでエンジンが息をつき始め、操縦員が「エンジン不調、どうするか」と叫んだので、私は「もうしばらく飛ぼう」と言いました。後席の電信員が記録をとっていましたが、八十番(800kg爆弾)を抱いた機はどんどん高度が落ちてきました。このまま行ったら海没するので、800kg爆弾を投下しました。安全高度は100kg・100mなんです。800kgですから800mの高度が必要でしたが、エンジン不調で高度がとれないんで、やむなく700mで落としました。爆風で持ち上げられましたけど、機体の損傷は幸いありませんでした。それで180度変針しましてね、帰投するため北へ向かったわけです。そしてようやく黒島まで辿り着くことができたわけです。
--------最初から黒島を目指したんですか?
江名‥ちょうど飛行ルートでしたからね。180度変針すれば黒島へたどり着くことは判っていました。黒鳥の上空を飛んでますからね。東の方に振れば、トカラ列島があるんですけど、目で確認してませんでしょう。だから、黒島、硫黄島、竹島とありますから、どこまで飛べるかということで北へ向かったわけですけど、機は黒島の上空で力尽き海上に不時着しました。
--------不時着と言っても、そう筒単に上手くいくものではないのでしょうね。
江名‥私の操縦員が特乙一期生で、あまり飛行時間はないんですけど操縦は上手でした。4月28日、800kgの爆弾を抱えたまま知覧にスムーズに着陸しましたからね。今回も、黒島の沖合い1千mのところに尻から着水しました。機体は1分くらい浮いていて、その間に3人は脱出しました。時化の海上に上手く不時着したんです。彼の腕は凄いなと思いましたね。
--------3人とも無事に救助されたんですね?
江名‥ええ、そうです。その時はですね、不時着する時には脱出のため、風防を留めて開けとくんです。それを私が指示しましてね。固く風防をロックしとけということで着水したんですけど、やはり操縦員の方はですね、操縦に専念したから、それを甘くしてたんでしょうね。ペタツと風防が閉まっちゃったんです、着水のショックで。
電信員の方は電信機に顔をぶつけ、鼻血が出てるんですよね。顔が血だらけなんですよ。電信員は最後に電信を打たなきやなりませんし、暗号書を始末しなければいけませんでしょ。錘を付けて浮き上がらないようにする作業もありましたので、着水の時にまだ作業中だったんですね。電信機にぶつけまして血だらけなんです。
それで、操縦席が閉まっているので、私はすぐ操縦席の上に跨りまして、操縦員は中から一所懸命、風防を開けようとしてました。幸いちょっとした隙間が開き、上と下からこじ開けて15センチくらい開いたんですよね。かなり大きな男なんですけど、そこから出てきましたからね(笑)上手く脱出できまして、浮いている時間は1分足らずなんですよ。それで3人は飛行機の翼の上に立って、イチ・ニ・サンで飛び込みました。1分間でそれができましたんでね。まだ私達、若かったんでしょうねぇ(笑)。