特攻インタビュー(第3回) ・その17
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編集者
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海軍航空特攻 江名武彦 氏
◆黒鳥での生活
--------黒鳥に不時着して、原隊に連絡しなければならないと思うのですが、そういう手段はあったのですか?
江名‥軍隊もいませんし、警察もいません。ラジオもありません。何にもないんですよ。そういう島でしたからね。島民は500名で食料も窮乏していました。
--------とりあえずそこに、じっとしているしかないと。
江名‥毎朝10時頃になりますと、米軍機の大編隊が何百機と黒鳥の上空を掠めましてね、九州地区を爆撃に行くんです。それで、4、5時間たちますと、その大編隊がまた返ってきて、黒島上空で編隊を組み直していくんです。
日本の特攻のルートも三つほどあり、トカラ列島の列島線を通っていく、これは一番デンジャラスなんですね。敵の遊撃機が待ち構えておりました。そこで東か西へコースを振るんですよね。陸軍の知覧・万世は、みんな黒島の上を通っているんです。海軍でも、串良と指宿海軍航空隊が黒鳥経由で沖縄に向かいました。
やっぱりナヴイゲータtがいないと、海上を通って行きますでしょ。陸軍の場合、だから誘導機がいましてね。それで連れて行くわけですけど。そうしますと比較的、敵の遊撃機にぶつかることが少ないであろうということで、そのコースを選んでるんですけど。まあ、向こうは電探が優れていますからね、どっちに飛んでも見つけられたと思うんですけどね。
--------そうすると、B-29が飛んできたり、特攻隊が通過したりと。
江名‥B-29は飛んできませんけど、グラマンとかシコルスキーの戦闘機ですね。それに艦爆、艦攻、それから重爆の大編隊が毎日のように来るわけです。その時、イタズラして黒島に機銃掃射していく戦聞機がありました。黒鳥の住民は、昼間は何もできませんでした。黒鳥も戦場だったんですよ。
--------黒島ではどんな生活だったんですか?
江名‥私達の前に、陸軍の柴田少尉という方が不時着していました。柴田さんは4月13日に不時着して火傷で瀕死の重傷を負っていたんです。柴田さんは先任ですからね。打ち合わせをして、とにかく島の防衛をしろと。俺は動けないから島の防衛は頼むと言われました。敵の飛行機が見えたら、必ず身を隠すとかですね。敵が上陸してきたらどうするかという問題を部落の長老を交えて打ち合わせしました。山にとにかく住民は隠れるということで。その場合に、先任の柴田少尉は、軍人と一般人と一緒にいた方が良いか、それを君、考えろと。一緒にいると、迷惑かけるんじゃないかということもあるわけなんです。だから、軍人と一般人は一緒にいない方が良いのではないかということになりました。
--------江名さんのペア、部下にはどんな指示を出していたのですか?
江名‥敵機が来た場合はね、とにかく避難するとか、身を隠せとか。部落が2つあるんです。そっちの部落に桜井兵曹と前田兵曹を行かせて防衛に当たらせました。空襲のない時は、2人は農作業を手伝いました。食料がないでしょ。だから芋を植えたり、それから山へ行ってカズラの根をとって、それを天ぷらにして食べてましたけどね。そういう食料増産のために手伝ったり、海に行って夜釣りして魚を釣ってきたり。昼間は釣れないんです。危ないから。そういった事を、部下達はやっていました。私はやらなかったです。柴田さんの看護もありましたしね。側にいると、彼も非常に気強いんでしょうね。それでまた彼は、いろいろ私に指示をしましてね、だから非常にそういう点では上手くいきましたし、島民の方にも喜ばれたと思います。