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被爆55年 忘れられないあの日 9 ―広島・長崎被爆者の詞画集―

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編集者

通常 被爆55年 忘れられないあの日 9 ―広島・長崎被爆者の詞画集―

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/10/26 7:59
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
瀕死(ひんし)の少女に上着を

     八月九日 長崎
          十八歳 動員学徒
 
 兵器工場から浦上まで逃げてきて動けなくなった少女が、日照(ひで)りの進路の真ん中に、仰向(あおむ)けに倒れていた。三つ編みの一方がほどけて衣類(いるい)は焼け、全裸(ぜんら)である。

 手も足も肉が剥(は)がれ、時折ヒックと指がつる。

 まだ呼吸はしていた。顔に傷はなかった。
          
 肌(はだ)がろう人形のように透(す)けて、半開きした眼が哀(あわ)れだった。

 上着を脱いで、そっと少女の体にかけた。










瓦礫(がれき)の中に妻と長男の顔が

     八月六日 広島
          二十六歳 軍人

 ドーンという大音響(だいおんきょう)と共に、一瞬(いっしゅん)気を失ったのか、気が付いたら崩壊(ほうかい)した兵舎(へいしゃ)の瓦礫(がれき)の中で、天井(てんじょう)の梁(はり)を背に受け、四つんばいの格好(かっこう)で、力一杯梁を持ち上げていた。

 助かりたい一心だった。
               
 すると、外の明かりが瓦礫(がれき)の隙間(すきま)から差し込み、中は煙が舞っている。どうせ助からないなら落ち着けと、死を覚悟した。
       
 その瞬間(しゅんかん)、平塚の空襲(くうしゅう)で焼け出された妻と長男の顔が目の前に現れた。
 
 「俺(おれ)は助からない。後の事は頼むぞ」と言ったら、すっと二人の顔が消えた。


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