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被爆55年 忘れられないあの日 13 ―広島・長崎被爆者の詞画集―

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編集者

通常 被爆55年 忘れられないあの日 13 ―広島・長崎被爆者の詞画集―

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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2010/11/1 8:25
編集者  長老 居住地: メロウ倶楽部  投稿数: 4298
水を飲んでくれなかった

     八月六日 広島
         二十三歳 女子挺身隊(ていしんたい)

 どこの水槽(すいそう)にも人が群がっている。

 上半身は裸、指先には黒い糸のようになった皮膚(ひふ)が垂(た)れ下っている。

 小さな男の子が「水をちょうだい」と言って私に縋(すが)りついたが、すぐにばったりと倒れてしまった。 
 
 水のある所に連れて行こうと、その子を抱(かか)えて走ったが間に合わなかった。

 死んでしまって飲んでくれなかった。










幼児を抱き息絶えた母親
               
     八月六日 広島
         二十五歳 軍人

                                
 八月六日午前八時十五分、警戒警報(けいかいけいほう)解除の直後、B29が飛来(ひらい)、一大閃光(せんこう)と共に全市の大半は火の海と化した。

 私の所属していた部隊(ぶたい)庁舎(ちょうしゃ)が、目の前で積み木(つみき)の玩具(がんぐ)を押し潰すように倒れた。

 皆実町(みなみまち)の部隊から、千田町、舟入、十日市町を経由して横川橋に至る道すがら、むせ返る余熱の燻(くすぶ)る瓦礫(がれき)の中で、息絶えだえに水を求めて水栓(すいせん)に這(は)い寄る男たち。

 幼児を抱いたまま防火用水に入って息絶えた若い母親。
 
 馬車馬(ばしゃうま)も横倒しになって、ロをバクバクさせて喘(あえ)いでいた。

 まさに地獄(じごく)の様相(ようそう)であった。

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