我が軍隊的自叙伝 緒方 惟隆 24
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終戦復員の章 2
唐津の街に灯が戻り、朝鮮人部落のドンチャン騒ぎの嬌声が梢々下火になった頃、復員下令となった。
九月十六日。「軍令陸甲第一一六号二依り復員下令」
九月二十三日。「復員完結。同月同日。召集解除」
この頃から体に変調を覚えるようになった。立っいるのがしんどいのである。軍隊の食事がひどく高梁飯ばかりだったので、ロクに栄養が取れなかったせいであろう。栄養失調から黄疸になっていた。復員は別府から船で、瀬戸内海を尾道に上陸し、汽車で山科まで(京都に下車すると進駐軍にひっぱられるという噂があったので)帰ったがその間は寝っぱなしで山科の姉の嫁ぎ先へ転がり込むなり寝込んでしまった。一ヶ月程養生をしてようやく頭が上がるようになって、持ち帰ったものを調べると、梱包しておいた軍刀が見当たらない。次兄に買って貰った愛着のある軍刀だったので、山科駅に降りた時車内に置き忘れたのかも知れないと思って、国鉄の遺失物係に頼んで、方々探して貰ったが、遂に判らずじまいであった。
残念極まりない。
昭和五十年前後あたりから、深草の旧騎兵聯隊の戦友会(騎兵二十連合会)に出席するようになり、又最終の船舶部隊の戦友会(唐睦会)を組織したりして、会合には出来る限り出席している。又京都護国神社等で挙行される戦没者慰霊祭には必ず出席し、現在の平和が彼等戦没者の犠牲によって齎されたことに思いを致し、感謝の気持ちを新たにしている。
愚妻も、こと戦友会に関する限り、積極的に協力して呉れているので、有り難く感謝してその厚意に甘えている。
「我が軍隊的自叙伝」を終わるにあたって、武運つたなく戦陣に斃れられた先輩、同輩、後輩の各氏の霊に謹んで哀悼の意を表するものである。
広石一郎海軍少佐。湯川勇少佐。野田稔少佐。福山正通海軍少佐。広瀬敏博大尉。川口五郎中尉。横山義一少尉。
沢井常和曹長。山本定勝伍長。山室勝美伍長。津田武雄伍長。青地直彦伍長。河村道也伍長。遠塚誠治伍長。
乙坂峰龍伍長。鳥居善七伍長。中野喜代蔵伍長。永井隆一伍長。
山本旅館の親戚のおばさん。富士見荘の御夫婦。
ー完ー