特攻インタビュー(第5回)・その6
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陸軍水上特攻 皆本義博氏
◆ 昭和天皇への報告(1)
--------「マルレ」は海軍の「震洋」と違い、特攻兵器として開発されたわけではないので、体当たりはしないのが前提だったと聞きますが?
皆本‥海軍は、最初からぶつけるということでやっておりましたね。陸海軍の水上特攻の成果を見ますとね、陸軍は数が多かったせいか、特にフィリピンの戦場なんか、陸軍の方が成果は大きかったと思います。
それで、いよいよ「マルレ」の整備が終わりましたから、大本営陸軍部は天皇陛下に報告申し上げなくちゃいかん、ということで、我々が艇に乗りまして。それに、船舶司令部で高速艇にカメラを乗せて(笑)。我々はミスがないように緊張して、さきほど言ったように操縦しました。それで、陛下にお見せしたら陛下からご質問がありました。「乗っている将校・下士官は生きて帰れるか?」と。どうお答えするか苦慮したようですが「はい!何とか生存の可能性あります!」ということで逃げておりますね。やっぱり、陛下は非常に温かいお気持ちでやられていると思いました。
ちょっと話は変わりますが、私、平成17年9月14日から2日間、アメリカのテキサス州フレデリックスハーグで行われた「太平洋戦争・沖縄シンポジウム」に参加しました。日本代表としてパネリストの23名の中に入り、飛行機賃や宿泊料は全部アメリカ側が負担してくれました。フレデリックスハーグはニミッツ元帥生誕の地です。そのシンポジウムで非常に感銘したのが、アメリカの退役海軍大佐が話した二つのことでした。一つは、日本の航空特攻は素晴らしい人が乗って勇猛果敢に戦った。しかし、それを統括した最高統帥の方には必ずしも同意できない点があるということでした。いろいろ聞きますと、あの頃のアメリカ海軍の艦載機は、第一線に出ている日本の戦闘機より出力が大きいんです。エンジンの馬力が強力だから速度が出る。日本は速度がちょっとのろい、中には特攻なんかで、やや古い飛行機に爆装して出撃させますね。もともと出力が弱くて、旋回性能はほとんどない。敵の艦上戦闘機に遭遇すると退避できないから、特攻隊員はとにかく勇猛果敢に征かれた。海軍大佐が私に言いましたことが、非常に印象に残っています。
もう一つは、彼はフィリピン戦や沖縄戦に参加していたようですが、航空特攻が来ても苦にしなかったと言うんです。まあ、そうでしょうね。あれだけの対空火器を持っているし、艦載機が飛べば、そりやもう全然能力が違います。ただ、私の手を握って言ったのは、「水中・水上特攻というのは成果があまり明らかになっていないが、精神的な効果が偉大なものだったよ」と。「私(退役海軍大佐) が巡洋艦艦長をやった時に、水中・水上特攻が来た時にはナーバスになって、任務に耐えない兵隊がかなり出た」ということを言われました。これ、ありのままを 『特別攻撃隊全史』(特攻隊戦没者慰霊平和祈念協会編)という本に入れております。ちょっと脇にそれました。